海外版ファミコンで実際には使われなかった拡張スロットに接続するBluetoothデバイスが登場
発売から39年の時を経て、海外版ファミリーコンピュータ「Nintendo Entertainment System(NES)」に存在する拡張スロットを使用する機器「NES HUB」が登場しましたました。NES HUBをNES底面にある拡張スロットに装着することで、無線コントローラーをBluetoothで接続可能になり、さらにNESでは不可能だった拡張音源を使ったBGM再生が可能になります。
RetroTime NES HUB Bluetooth for NES
https://8bitmods.com/retrotime-nes-hub-bluetooth-for-nes/
The NES Expansion Port Is Finally Emerging From The Darkness. Why Now?
https://tedium.co/2024/12/02/nintendo-expansion-port-history/
Nintendo NEVER Used This Expansion Port, So Modders Did - YouTube
日本向けに販売されたファミコンには、本体の前方に拡張スロットがありました。
ここにはサードパーティー製のコントローラーなどを接続することが可能でした。
一方で、海外向けに販売されたNESは専用のポートに置き換わっています。
拡張スロットはNESの底面に押し込まれました。
さらに、通常のモデルではプラスチックに覆われてしまっており、工具がなければ開くこともできません。
この拡張スロットを利用するハードウェアとして初めて本格的に作られたのが、2024年10月に発売された「NES HUB」です。
拡張スロットの規格に合うよう設計されていて、接続することでBluetoothによるコントローラーの紐付けを行うことなどが可能。また、ディスクシステム用タイトルの拡張音源にアクセスできるという特徴もあります。
NESは音源信号入力が底面の拡張スロットのみになっており、カセット端子にはないため、ディスクシステム用タイトルやカセット内蔵の拡張音源がある作品は、NES版だと内蔵音源でしかBGMが再生されないという課題がありました。NES HUBを拡張スロットへ接続することで、NESでは不可能だった拡張音源によるBGM再生が可能になることも利点の1つです。
取り付けてみるとこんな感じです。
NES HUBは59.97ドル(約9200円)にて販売中。Tediumによると、NES HUBに触発されたのか、NESでファミコンディスクシステムを動作させる拡張スロット用アダプターが続いて登場したとのことです。
なぜ1985年に発売されたゲーム機の拡張スロットが2024年になって使われるようになったのかという疑問について、Tediumは「使う必要があまりなかったから」だと指摘しています。
拡張スロットが使われなかったのは、NESの機能の多くにカートリッジスロットなど他のポートからアクセスできたためで、例えばワイヤレスのコントローラーが欲しければコントローラーポートを使えばよく、CPUと画像処理ユニットなど高度な機能を使いたければカートリッジスロットを使えばよかったから。また、カートリッジスロットは基板に比べてサイズが大きかったため、改造ツールを設計するのであればカートリッジスロットに合わせたものにする方がなにかと都合がよかったのです。実際、拡張スロットを使ったツールがいくつか考案されましたが、どれも実現には至らず消えていったとのことです。
NES自体の改造は盛んに行われ、カートリッジスロットを介してチートを実行する周辺機器「ゲームジニー」や、コントローラーポートを介したフロアマットガタコントローラー「Power Pad」などが登場していましたが、いずれも素であらわになっているポートを使うものばかりでした。また、日本向けのファミコンには外付けディスクドライブやBASIC対応キーボード、カラオケマイクなどさまざまなツールが公式に実装されています。
2024年になってようやく改造ツールが登場し始めたことについて、Tediumは「PCBWayのように、簡単にPCBを自作できる環境が整ったから」と考察しています。つまり、拡張スロットを使って何かを実行する商品を作るための道のりが以前より簡単になったからだというわけです。加えて、コミュニティの間で知識が固められてきたことの影響も大きいとしています。
なお、実際には使用されなかった拡張スロットの例は「スーパーファミコン」などNES以外にもあります。例えば、異なる任天堂ゲーム機間でのマルチプレイを可能にすることを意図して実装されたものの、公式ツールがでないまま販売が終了したバーチャルボーイ、日本国外向けに販売された機器に対応するはずだったNINTENDO64、片方はインターネット接続機能をサポートするために使われたものの、もう片方は何にも使われなかったゲームキューブのシリアルポートなどだとTediumは指摘しています。
Tediumは「少なくともゲームキューブ以前は、追加ハードウェアを実装する準備をしておきながら、アメリカ市場には出荷しないという傾向がありました。これが、任天堂のゲーム機戦略の半ば公然の秘密です」と述べました。
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