デザイン

「北欧デザイン(スカンディナヴィアデザイン)」はいかにして全世界に広がっていったのか?


北欧のスカンディナヴィア諸国およびフィンランドにおけるデザインの総称は「北欧デザイン(スカンディナヴィアデザイン)」と呼ばれ、家具や雑貨などでは1つのジャンルとして確立されています。日本を含めた世界中で人気を集めるスカンディナヴィアデザインは一体どのようにして北欧から世界へと広がっていったのか、その遷移にIT関連メディアのCurbedが迫っています。

Scandi Crush Saga - Curbed
http://www.curbed.com/2016/3/23/11286010/scandinavian-design-arne-jacobsen-alvar-aalto-muuto-artek

スカンディナヴィアデザインという言葉が誕生したのは1951年のロンドン。ロンドンにあるHeal'sという歴史ある家具店で開催された、北欧の家具を集めた展示会が「Scandinavian Design for Living」という名前でした。それからというもの、スカンディナヴィアデザインは機能的・自然派・シンプルと形容されるようになり、ヨーロッパからアメリカ、そして世界へと広まっていきます。


ノルウェーやフィンランドといった複数の国で育ったデザインを1つに集約しスカンディナヴィアデザインとして世界にPRしていくという試みは、第二次世界大戦後から始まったものです。1940年代にはヘルシンキやオスロ、ストックホルム、コペンハーゲンといった北欧各国の都市で、スカンディナヴィアデザインに関する協議が行われ、「デザインという側面において、北欧諸国は1つのまとまりとして認定されるべきだ」というスカンディナヴィアデザインの方向性が決められました。

その後、国内外で北欧のデザイン言語を強化するキャンペーンが実施され、20世紀半ばまでにはアメリカでスカンディナヴィアデザインの認知度が高まり、デンマークのアルネ・ヤコブセンハンス・J・ウェグナーの家具が大きな人気を得ました。さらに、大きな後押しとなったのが1954年から1957年にかけてアメリカとカナダの各地で催された「Design in Scandinavia」という展示会です。この展覧会を開催したことで、スカンディナヴィアデザインは北米の家具市場で北欧デザインというジャンルを確立し、誰しもが知っているレベルの認知度にまで上り詰めたそうです。

なぜスカンディナヴィアデザインがアメリカやカナダで一気に人気を得たのかというと、北欧の家や家族を大事にする文化や民主主義の主張をデザインに込めたこと、伝統的な職人芸を特徴とすることなどが、戦後に高まった大量消費文化にピッタリ合致したからだとみられています。

1950年から60年代後半にかけてスカンディナヴィアデザインは世界的な人気を得ますが、これ以前にも北欧のデザインが市場を席巻したことがあります。アルヴァ・アールトブルーノ・マットソンといったデザイナーは、自身の作品が1938年からニューヨーク近代美術館で展示されており、1930年代には北米で大きな話題になっていました。1950年代から始まったスカンディナヴィアデザインの一大ブームは、実はアールトやマットソンといったパイオニアたちの実績があってからこそ起こったというわけです。

By rocor

50年代から始まったスカンディナヴィアデザインのブームは1960年後期に終わりを迎え、1970年から1980年代はなりを潜めていました。しかし、1990年代になって社会的な興味がゴージャスなものから、質素で持続可能なものに移り始め、スカンディナヴィアデザインに再び注目が集まることになります。普遍的なデザインに特徴があるジャスパー・モリソンや新しい北欧のデザインスタイルを追求したトーマス・サンデルが台頭し、さらに移動展覧会や北欧デザインを学術の観点から分析する研究などによりスカンディナヴィアデザインは今までのデザインから進歩を遂げ、新しい時代を迎えることになりました。

その後、スカンディナヴィアデザインは普遍的な人気を集めるのですが、2007年から2008年にかけて再び人気に火をつける出来事が発生。それは、2007年のサブプライムローンや2008年のリーマンショックに始まる世界的な金融危機です。オスロ大学のデザイン史学部のケティル・ファラン教授は「アメリカのような大きな国が経済的な問題を抱えたとき、世界の注目は北欧に集まりました。なぜなら、北欧諸国が金融危機から大きな影響を受けなかったからです」と説明。「福祉国家」や「自主性の重要視」といった北欧のイメージに加え、「6時間労働制」や「ベーシックインカム」などへの取り組みがメディアで取り上げられ、これがスカンディナヴィアデザインへの人気に一役買っているとのこと。ファラン教授は「スカンディナヴィアデザインは北欧社会を反映する鏡と考えられる傾向がある」と分析しています。

2016年現在では1999年創立のnormann COPENHAGENや2006年創立のMuuto、2008年創立のby Lassenといった新しいブランドがスカンディナヴィアデザインとして人気を集めています。Muutoはフィンランド語で「新しい表現」と言う意味で、創業者のバイアージ氏は「ネーミングには、我々のような新しい世代のスカンディナヴィアデザインを通して、1950年代や1960年代のようなムーブメントを再び起こせるように願いを込めているんです」と話しています。また、by Lassenのデザイナーであるラッセン氏は「過去のデザイナーたちのリバイバル作品に人気が集まるのが最近の傾向です」と言及。


ファラン教授によれば、最近の北欧デザイナーはブームが訪れた1950、60年代のスカンディナヴィアデザインを踏襲する傾向があるとのこと。2016年現在に一線で活躍している北欧デザイナーは、2000年前後にキャリアをスタートさせた人が多く、1950、60年代のスカンディナヴィアデザインをレトロなものと捉え、そこに新しい世代のエッセンスを与えるのが主流になっているようです。ただし、活躍中のデザイナーよりも若い学生世代の中には、レトロデザインを追いかける風潮を好まないデザイナーの卵がいるのも事実で、こういった学生がデザイナーになるとスカンディナヴィアデザインに新しい風がふきこまれ、今までとは違うスタイルが生まれる可能性もあります。

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in デザイン, Posted by darkhorse_log

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