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働かなくても生きていける「ベーシックインカム」の大規模な実験を「Yコンビネータ」が計画中

by Alex Bramwell

「優れたアイデアほど始めはばかげているように思える」という言葉を残すベンチャーキャピタル「Yコンビネータ」2代目社長のサム・アルトマン氏が「ベーシックインカムの研究に投資したい」という内容の記事をブログに投稿しています。ベーシックインカムとは「政府が無償で金銭を給付することで、人々はよりクリエイティブな人生を送れる」という構想。Yコンビネータは5年にわたる大規模なベーシックインカムの実験を計画しているようです。

Basic Income - Y Combinator Posthaven
https://blog.ycombinator.com/basic-income

ベーシックインカムとは、政府が全ての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的に支給するという構想のこと。18世紀の思想家であるトマス・ペインによって主張されていましたが、1960~1970年の欧米で議論が活発化し、「現代の多くの問題を解決できる可能性を秘めているのでは」と注目されています。

ベーシックインカムに対しては、「人々が働く意義を失う」「働く人が減少して国の経済が大きなダメージを受ける」など批判も多くありますが、「無意味な労働が減り、人々が生産的な行動を取れるようになるのでは」ということで、近年は大規模な実験も行われています。

例えば1974年~1979年のカナダで約1000世帯の家庭が金銭を受け取った「Mincome」という実験では、就労時間の減少は男性1%、既婚女性が3%、未婚女性が5%にとどまっており、一方で、労働者は家庭ですごす時間が増え、給付家庭の子どもの学力はアップしたそうです。また、人々が病院に行く頻度は減り、保健医療施設におけるメンタルヘルス関連の苦情件数が減ったことも明らかになっています。

政権の交代によってMincomeは途中で打ち切りになったため、実験の最終的な結論は出ていません。そこで、さらなる調査を行うため、オランダでは2016年1月から生活保護を受け取っている人に対して金銭を無償で給付するという大規模な実験を開始。

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また、スイスでも「月額2500スイスフラン(約30万円)を無償で国民に給付するべきかどうか」の国民投票が2016年夏に行われる予定です。

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上記のように世界中で実験が行われているベーシックインカムですが、歴史や文化の背景が異なれば結果に差が出るもの。アルトマン氏は「ベーシックインカムというシステムがアメリカでどう機能するのかを知りたい」ということで、今回の計画に踏み切ったようです。

Amazonが人間の代わりに働けるロボット開発に力を入れているように、テクノロジーの進化によって、産業社会で発達した仕事のいくつかが消えていっており、アルトマン氏は今後もこの傾向が続くであろうと見ています。つまり、現在は人々が「食べるために働く」という状態ですが、これからは働くことの意義自体が変化していくということ。「今から50年後の人々は、飢えることを恐れていた我々をみておかしく思うはず」とアルトマン氏は語っています。

「働く必要がなくなった結果、人々は1日中オンラインゲームに時間を割くようになるのか、それともクリエイティブな行動を取るようになるのか」「飢えることにおびえる必要がなくなった時、人は内面的に満たされ、社会のために行動を起こすようになるのか」という疑問を解決するためにも、大規模なベーシックインカムの実験は避けられません。

また、アルトマン氏は「よい暮らしを送るためのコストが減ることは、世界にはびこる貧困をなくすための一歩である」とも語っており、ベーシックインカムという形でなくとも、平等を実現するにはこの種の保障が必須と考えています。

by Michael Raphan

Yコンビネータはこれから5年間にわたって、アメリカ国民の一部にベーシックインカムを適用させるプロジェクトを実行する予定で、プロジェクトに参加する常勤の研究者を募集中。なお、求められている人員は経験よりもポテンシャル重視で、2月15日までならここから応募できます

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