「もっと飲みたい」というアルコール中毒の欲望を抑えることが可能になる研究結果が発表される
By Imagens Evangélicas
アルコール依存症の治療方法としては一般的に断酒してリハビリテーションを行う入院治療しかないのが現状ですが、新しい治療方法になり得る可能性を秘めた研究結果がアメリカの国立研究所により発表されました
Translational Psychiatry - 11[beta]-hydroxysteroid dehydrogenase inhibition as a new potential therapeutic target for alcohol abuse
http://www.nature.com/tp/journal/v6/n3/full/tp201613a.html
A common drug for ulcers could prevent alcohol abuse | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/03/a-common-drug-for-ulcers-could-prevent-alcohol-abuse/
ザ・スクリップス・リサーチ・インスティテュート、アメリカ国立アルコール乱用・依存症研究所、アメリカ国立薬物乱用研究所の研究員らによる合同研究チームは、長年アルコール依存症の分子レベルのメカニズムについて調査を行ってきました。チームは今回、副腎皮質ホルモンの一種であり、免疫システムを補助する役割を持つ糖質コルチコイドという物質に焦点を当てました。過去の研究から、アルコールを頻繁に飲む人の体は糖質コルチコイドの調節を適切に行えないことがわかっており、糖質コルチコイドの分泌を抑えることで、「アルコールを摂取した後にもっとアルコールを摂取したくなる」という欲求を減らせることが判明しています。
By David Goehring
合同研究チームは、糖質コルチコイドを調節できるようにする薬物をリサーチしていたところ、リコリスという天草から抽出されるカルベノキソロンに、糖質コルチコイドの効果を高める酵素の活性化を抑える作用があることを発見。簡単に言うと、カルベノキソロンを摂取することで、糖質コルチコイドの分泌を抑えてアルコールへの欲求を減らすことができるというわけです。
By Daveblog
合同研究チームがアルコール依存のマウスと健康なマウスを使ってカルベノキソロンを与える実験を行ったところ、両方のマウスでアルコールの摂取量が減少しました。
実験を行った神経科学者のピエトロ・サンナ博士は「マウスの反応は常に人間と同じとは限らないので、次は人間を対象にした実験を行います」と話しています。ただし、カルベノキソロンは人体への使用がすでに承認されている物質なので安全性は証明済み。判明していないのは、アルコールの乱用を抑える効果があるかどうかです。もし、人間でもマウスの実験と同じ効果が認められれば、アルコール依存症に新しい治療法が登場する可能性があります。
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