睡眠不足で取り調べを受けると間違った自白につながりやすいことが判明
by Karlis Dambrans
睡眠不足が続くと、集中力や記憶力が低下したり、幻覚が見えたり、最悪の場合は死に至ることもあるなどの悪影響が明らかになっていましたが、同様に睡眠不足の状態で警察などの取り調べを受けると、間違った自白をしてしまいやすいことが新たに判明しました。
Sleep deprivation and false confessions
http://www.pnas.org/content/early/2016/02/04/1521518113
Study finds that sleep deprivation leads to false confessions | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/02/study-finds-that-sleep-deprivation-leads-to-false-confessions/
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)による睡眠についての調査結果をはじめとして、さまざまな研究から「睡眠不足が意思決定などに悪影響を与える」ということが明らかになっています。また、警察の事情聴取で自白が間違っていたと判明したケースは、ほとんどが12時間以上連続で行われた事情聴取の際に記録されている、という証拠もあるとのこと。
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サンフランシスコ大学とノースウェスタン大学では、睡眠不足と間違った自白の関係を調べるため、睡眠不足の状態で意思決定を行う実験を実施。被験者88人を集めて、PCを使った2種類のタスクに7日間連続で挑戦してもらい、被験者には「タスク実行中に絶対にキーボードのEscキーを押さないようにしてください。さもなければ実験の重要なデータが失われてしまいます」と念を押していたとのこと。Escキーはキーボードの隅にあり、誤って押してしまう確率が低いことから選ばれたそうです。タスクを終えた後、被験者たちは8時間眠る「グループA」と、一晩中起きる「グループB」に分けられました。
翌日、被験者たちが帰宅する前に、「あなたは昨日の実験中にEscキーを押しました。自身のミスを認めるならば書面に署名してください」と実験の主催者が被験者たちに伝えたそうです。睡眠を十分に取ったグループAの被験者では、ミスを認めたのは約18%でしたが、グループBではなんと50%の被験者がミスを認めたとのこと。さらに、ミスを認めなかった被験者に対してもう一度同じことを伝えて反応を観察したところ、グループAの38%、グループBの18%の被験者がミスを認めて、合計するとグループAは56%、グループBでは68%の被験者が間違った自白を行ったとのこと。
実験結果から、研究グループでは「日常生活上でも、睡眠が不足がちになると意思決定を間違ってしまう確率が高まる」と推測しています。そのため、「警察の事情聴取は全ての様子を録画して、自白の正当性を証明できるようにするべきだ」と研究チームは主張しています。また、自白を認める書面に容疑者が署名する際にも、容疑者が十分な睡眠を取っているかどうかを測定することが重要だと述べています。
by dennis crowley
ミスを認めた被験者の割合が両グループで50%を超えた理由について、研究グループは「今回の実験では、ミスを認めることで何らかのペナルティーが科せられたわけではないので、被験者は素直にミスを認めてウソの自白をしたのではないか」と、実験内容の欠点についてコメントしています。また、間違った自白は個人の性格差にも左右されることがあり、実験では「衝動的な意思決定を行いやすい人は、間違った自白を行う確率が高い」ということも明らかになっています。
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