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睡眠不足だけで命を落とすことはあるのか?


残っている仕事をこなしたり、深夜のテレビを見たり、ゲームに夢中になったりしていて、気がつくと夜更かししてしまい、睡眠時間が減ってしまうという経験がある人も多いはず。「十分に寝なければ健康に悪い」とよくいわれていますが、睡眠不足で命を落としてしまうことがあるのかについて、科学系ニュースメディアのZME Scienceが説明しています。

Can you die from lack of sleep?
https://www.zmescience.com/science/can-you-die-from-lack-of-sleep-534/


1963年12月、学校の自由研究で「できるだけ長く起きて、睡眠不足の脳内で何が起こっているか」をテーマにした2人の少年が、連続で何時間起きられるかを検証しました。当時17歳のランディ・ガードナーさんは11日と25分もの間、一睡もすることなく過ごすことに成功し、連続不眠時間の世界最長記録を樹立しました。


当時の新聞記者がガードナーさんにどうやってこの偉業を成し遂げたのかを質問したところ、ガードナーさんは「ただ物事を考え続けていただけです」と回答を返しました。しかし、記録達成から50年以上経ってから、ガードナーさんは「睡眠不足によって認知障害の初期症状のような状態が起こり、物事を何も思い出せなくなりました」と証言しています。

なお、このガードナーさんの記録は50年以上破られていませんが、さまざまな世界記録を集めるギネス世界記録の認定委員会は「健康に危険が及ぶ」という理由で、連続不眠時間の世界記録への挑戦の申請を受け付けないと発表しました。


また、2012年には、UEFA EURO 2012で開催されるサッカーの試合すべてを観戦しようとして、ガードナーさんの記録に並ぶ11日間を一切寝ずに過ごした26歳の中国人男性が亡くなるという事件が起こりました。

ただし、この中国人男性の事例は睡眠不足そのものが死因とはいえません。イギリスの新聞紙であるThe Telegraphによると、地元の医師は「男性は持病もなく健康だったが、起きている間にお酒を飲んだりタバコを吸ったりしたことが健康に大きな悪影響を及ぼした」と診断したそうです。実際、長時間起き続けるためにタバコやアルコールを摂取したり、カフェインや覚せい剤などを服用するケースが多く、これらの薬を多量に摂取することが死因につながっている可能性が高いといえます。

睡眠不足そのものが原因となって命を落とすかどうかは科学的に証明されていません。1980年代にはシカゴ大学で、水を張ったトレイの上にネズミを置き、トレイを常時回転させるという実験が行われました。実験に使われたネズミは水と回転によって寝ることができず、1カ月ですべて死んでしまったとのこと。しかし、睡眠不足が直接的にネズミの死因になったかどうかは解明されずじまいでした。

ただし、睡眠不足が健康に大きな悪影響を及ぼすことはこれまでの研究でも示されています。例えば、カリフォルニア大学バークレー校の神経科学者であるマシュー・ウォーカー氏は、1時間の睡眠不足ですら健康に悪影響をもたらすと主張しており、サマータイムによって1時間の睡眠時間が失われることで、心臓発作を起こすリスクが24%増加するという研究結果を発表しています。

また、ウォーカー氏が2018年に発表した研究では、人は睡眠不足になると他の人とのコミュニケーションに支障が生じ、孤独感を覚え、不安障害に似た症状を示すことがわかったとのこと。この健康リスクは1日に15本ものタバコを吸うのと同じくらい致命的であり、健康的な社会関係を持つ人よりも死亡リスクは50%も高まると、ウォーカー氏は報告しています。


睡眠不足が健康に悪い理由として、1日徹夜すると血圧を上昇させるストレスホルモンレベルが上昇することがわかっています。さらに、ブドウ糖をエネルギーに変える能力が低下し、免疫機能や体温の維持機能も低下してしまうとのこと。そのため、脳にも大きな負担がかかり、認知能力、特に短期記憶や注意力、マルチタスクの実行機能が損なわれる可能性が著しく高くなります。

アメリカの非営利団体であるNational Sleep Foundationによれば、成人は1日7~9時間、子どもは1日10~11時間寝るのが望ましいとのこと。2020年に発表された研究では、1日6時間睡眠を続けていると、脳のパフォーマンスが徹夜した場合と同程度に落ちてしまうことがわかっています。

6時間睡眠を続けている人は自分で気づかないうちに徹夜した人並みに認識能力が落ちている - GIGAZINE

by Rob

ZME Scienceは「睡眠不足だけですぐに命を落とすことはないかもしれませんが、睡眠不足によって大いに苦しめられることになるでしょう」と結論づけています。なお、2017年に発表された研究によれば、1日30分の昼寝をするだけで、タンパク質やホルモンのレベルを正常に戻すことができるそうです。

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in Posted by log1i_yk

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