Facebookのアプリを政府がブロックしてアクセス不能に
By joelle L
Facebookは途上国を中心とするインターネットが利用できない地域に無料でインターネットインフラを提供するため「Internet.org」を組織して、さまざまな活動に取り組んでいます。Internet.orgが提供する、無料でモバイルネットワークを提供してスマートフォンアプリを利用できるサービス「Free Basics」もその一つですが、インドでFree Basicsサービスが禁止されました。理由は、「インターネットの中立性を損なうから」というものです。
Regulation_Data_Service.pdf
(PDF)http://www.trai.gov.in/WriteReadData/WhatsNew/Documents/Regulation_Data_Service.pdf
Mark Zuckerberg - Everyone in the world should have access to the internet.
https://www.facebook.com/zuck/posts/10102641883915251
India blocks Zuckerberg's free net app - BBC News
http://www.bbc.com/news/technology-35522899
World’s biggest democracy stands up for net neutrality – World Wide Web Foundation
http://webfoundation.org/2016/02/worlds-biggest-democracy-bans-zero-rating/
Facebookが主導するInternet.orgは、インターネット環境の整わない地域に対して、現地の通信事業者と提携して「Free Basics」サービスとしてモバイル回線を提供しています。Free Basicsでは、スマートフォンやタブレット端末で利用できるFree Basicsアプリでインターネットに接続できる仕組みで、Free Basicsアプリには、天気予報、ニュース、医療情報、WikipediaなどのコンテンツとともにFacebookとFacebook Messengerが含まれています。つまり、Free Basicsでは、利用者は無料でインターネットにアクセスでき、Facebookはモバイル回線の提供と引き替えにFacebookユーザーを増やせるという、双方にとってメリットのあるウィンウィンの関係になっています。
30カ国以上の途上国でFree Basicsサービスを展開するFacebookは、巨大市場のインドで現地の通信業者のRelianceと提携してFree Basicsサービスをスタートさせました。しかし、インドの電気通信を規制するTelecom Regulatory Authority of India(TRAI)は2015年12月、サービス提供の一時中止をFacebookに要請していました。これは、Free Basicsは利用者が閲覧できるページを指定コンテンツに制限している点で、インターネットの基本的な原則である「ネットワーク中立性」を害するからという理由に基づいていました。
インターネットは世界中のあらゆる端末同士が接続することで成り立っており、接続できるコンテンツを制限するべきではないというネットワーク中立性の精神にFree Basicsは違反しているため望ましくない、というのがTRAIの見解です。このFree Basics要請に対してFacebookは、Free Basicsによってインターネットを利用できない人にインターネットの世界を提供できるとしてTRAIに反発、TRAIに対してFree Basics禁止の方針に反対するメール送付の呼びかけをする「Save Free Basics in India」キャンペーンを展開していました。
しかし、2016年2月8日にTRAIはFree Basicsの禁止を決定し、インドでのFree Basicsサービス提供が禁じられました。TRAIの決定に対してFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、「私たちは今回の決定に失望しています。しかし、世界中にまだあるインターネットに接続できない人たちにインターネットを提供する取り組みを今後も続けることを約束します」と述べています。一方で、ティム・バーナーズ・リーによって設立されたWorld Wide Web Foundationは、「我々は2階層のインターネットを作るべきではありません」と述べ、TRAIのFree Basics規制の決定を歓迎しています。
「インターネットの世界をアクセスできる場所とアクセスできない場所の2つに分けるべきではない」という主張に正当性があるのは明らかですが、他方でそもそもインターネットが利用できない地域ではインターネットの一部であってもアクセスできる自由を与える意義は大きいという主張にも理はありそうです。「インターネットへアクセスする自由」をどのように守っていくのかについて、TRAIによるFree Basics禁止はさまざまな問題提起をしそうです。
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