サイエンス

プラシーボ効果は思っているよりも弱い

by Patrik Nygren

薬としての成分は入っていない「見た目だけの薬」である偽薬(プラシーボ)でも、薬であると信じ込むことによって状態が改善することを「プラシーボ効果」といい、かなり広く知られていますが、その効果は、考えられているものよりも弱いようです。

Placebo effects are weak: regression to the mean is the main reason ineffective treatments appear to work
http://www.dcscience.net/2015/12/11/placebo-effects-are-weak-regression-to-the-mean-is-the-main-reason-ineffective-treatments-appear-to-work/


「プラシーボ効果」に関しては、ハーバード大学の麻酔学教授だったヘンリー・ビーチャーが1955年に発表した「強力なプラシーボ(The Powerful Placebo)」が知られています。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの薬学者デイビッド・コルクハウン氏によると、このほかに合わせて15の研究で、偽薬を与えたときに平均して35%の改善が見られています。

しかし、「その数字は本当にプラシーボ効果によって得られたものと、『どんな方法でも良くなるもの』とが混じっているのではないか」というのが、コルクハウン氏の主張です。


コルクハウン氏によると、実験や調査ではプラシーボ効果と見られるものは実際にはわずかしか存在していないにもかかわらず、結果として、プラシーボ効果ではなかったものまでプラシーボ効果に含まれているケースがみられるとのこと。

「どんな方法でも良くなるもの」というのは、統計学者のフランシス・ゴルトンが1886年に言及しているもので、「平均への回帰」と呼ばれます。例えば、体調が最悪の時に病院へ行き、翌日体調が改善すれば「病院のおかげ」と考えますが、実際には病院へ行かなくても良くなっていただろう、ということです。

この「平均への回帰」は医学に限らず、他でも起きていることだとコルクハウン氏。速度超過による自動車事故が相次ぐことで速度監視カメラが大量に設置されたとして、その翌年の事故発生率が落ちるのは「カメラを大量に設置したおかげ」ではなく、「前年に事故が相次いだために発生率が高まっているせい」です。もし、事故発生がカメラのおかげで減ったと言いたいのであれば、ランダムに選んだ複数箇所で、カメラの有無によって事故発生率がどう変わったかを調べる必要があります。このとき、「前年を基準としてどう変化したか」だけを追っていると、だまされてしまうことになります。

ちなみに、2015年10月にNatureに掲載された論文によると、鎮痛剤においては偽薬であるにも関わらず新薬を投与したとき並の効果が出ることがあるとのこと。このプラシーボ効果は、ヨーロッパやアジアでは再現せず、アメリカでのみ見られる傾向だそうです。

Strong placebo response thwarts painkiller trials : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/strong-placebo-response-thwarts-painkiller-trials-1.18511

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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