取材

「ジテツウ」の味方、都会のビルの中にある室内型駐輪場「ヴェロスタ」を見てきました


自転車ブームの広がりの中で、毎日の通勤を自転車に置き換える「ジテツウ(自転車通勤)」にシフトする人が増えています。しかしその一方で、いざジテツウを実行に移そうとしてもオフィス街には自転車を停める場所が不足していたり、せっかく買った愛車を会社に持ち込めず、かといって屋外に置いておくのは忍びないということでジテツウを断念している人も多いはず。そんな悩みを解消すべく、都会のビルの中でスポーツバイクに特化した会員制の駐輪場サービスを提供する「ヴェロスタ」がオープンしているとのことだったので、どんな様子で利用できるのか内部を見てくることにしました。

会員制月極駐輪場(大阪・堺筋本町)スポーツ自転車に特化「ヴェロスタ」
http://velo-st.com/

◆スポーツ自転車に特化した室内型駐輪場「ヴェロスタ」とは
ヴェロスタは、大阪市内でサービスを提供している会員制の室内型駐輪場で、2015年11月末時点では大阪市内に4店舗と京都市内に1店舗がオープンしており、12月にはさらに大阪市内に1店舗がオープンする予定となっています。


お店のサイトに掲載されているヴェロスタのメリットはこんな感じ。ビル内なので雨風にさらされることがなく、会員しか入室できないシステムになっているため、盗難や転倒のリスクも低くなっています。また、自分専用の駐輪スペースを確保できるため、停められる場所を探し求めてさまよう苦痛からも解放されるというわけです。


ヴェロスタは2014年6月、大阪市中央区の地下鉄堺筋本町駅にほど近いところに1店舗めとなる「ヴェロスタ 堺筋本町店」がオープン。25台の収容台数は満杯でキャンセル待ちが出る状況になっているため、ほぼ1年後の2015年8月には地下鉄本町駅近くに2店舗めとなる「ヴェロスタ 本町店」がオープンしています。

さらに、2015年10月には「ヴェロスタ 京都四条烏丸店」と「ヴェロスタ 西天満店」が、11月には「ヴェロスタ 北浜道修町店」がオープンし、12月初旬には「ヴェロスタ 西本町店」がオープンする予定になっているとのこと。いずれも関西地区ばかりの出店となっていますが、今後は関東方面などへの展開も当然検討されているとのことです。

◆まずは「ヴェロスタ 堺筋本町店」を見てきた
予備知識が頭に入ったところで、ヴェロスタの中の人に実際の様子を見せてもらいました。まず訪れたのは、2014年にオープンした初の店舗、堺筋本町店です。大通りから一本入った通りに面するビルの1階にあります。


入り口近くにある「velo-st.com」と書かれた看板が目印です。


ヴェロスタへの入室には、申し込み後に渡されるICカードが必要になります。この仕組みを取り入れることで、セキュリティの向上と入室情報の管理を行っているとのこと。


中に入ってみるとこんな感じでした。ビルの一室を駐輪スペースに改装しており、「駐輪場」という名前からイメージする風景とは違うものとなっていました。駐輪スペースは25台分が用意されていますが、すでに満車の状態とのこと。


向こう側の壁にあるドアから自転車を持って入り、利用者一人ずつに割り当てられた専用の自転車ラックに駐輪するようになっています。自転車ラックの周囲には利用者の小物や着替えが置かれており、ここで簡単に着替えをして会社へと向かうことができます。


簡易的なものですが、カーテンで仕切るタイプの着替えスペースも完備。なお、サービス利用者には女性も含まれているのですが、女性がこのスペースで着替えるのはやはり気が引けるもの。そういった場合の着替えには……


ビルのオーナーさんが直々に飾り付けたゴージャスなおトイレットを使うことが可能です。


室内に目を戻します。部屋の中には木製のラックが組まれ、そこにスチール製の黒い自転車スタンドが据え付けられていました。


スタンドをアップで見るとこんな感じ。この自転車スタンドそのものは市販のものが使われているので、耐久性や保管性能に心配はなさそう。


自転車を乗せる時は、このように片方のペダル・クランクをラックのストッパーに引っかけることで、自転車をガッチリと固定します。さらに、自転車乗りとしては半ば常識ともいえる「チェーンロック」でスタンドに結びつけてしまう利用者がほとんど。実際の利用者が停めているバイクなので勝手に触ることはできませんでしたが、ちょっとやそっとの事では外れてしまうことはなさそうな雰囲気でした。


詳しいスタンドへの停め方は、ヴェロスタの公式YouTubeチャンネルでも確認することが可能です。

【縦型駐輪スタンドの利用方法】堺筋本町にオープンしたスポーツ自転車特化の会員制駐輪場「ヴェロスタ」 - YouTube


◆次に「ヴェロスタ 本町店」を見てきた
堺筋本町店の次に、2店舗めとなる「ヴェロスタ 本町店」を見てきました。本町店は先ほどの堺筋本町店から歩いて5分ほどの場所にあり、ファミリーマートの入っているビルの4階に入っています。こちらの店舗は金属製のサインボードにお店の案内が貼り出されています。


ビルの入り口を入り……


こんな風に自転車を立て、エレベーターに乗り込みます。ちなみに、自転車を持っているのはヴェロスタの創業者で代表をつとめる大崎弘子さん。


本町店の面白いところは、「駐輪場がビルの4階にあるということ」だとか。たしかに駐輪場と言えば空き地スペースを使うか、駅前にある二階建て程度の施設がほとんどですが、ビルの部屋をそのまま駐輪場に作り替えるというのはほとんど前例がない試み。ビルの空き室対策としてもなかなか興味深い利用方法といえます。

ICカード式のドアを開けると中はこんな感じ。堺筋本町店とは違ったタイプの木製ラックが組まれており、ジャングルジムの中に紛れ込んだような雰囲気。駐車スペースは57台分と大幅に増やされており、2015年11月末の取材時にはすでに22名の利用があるので残りスペースは35台分となっています。


本町店では、堺筋本町店のような金属製のスタンドが用いられておらず、代わりに木製ラックにはこんな金具が取り付けられており……


このように、前輪を引っかけて固定するようになっています。


後輪が来るあたりには、このような半透明のタイヤ受けが設置されていました。


本町店では、スペース内にトイレとドアのついた着替えスペースが備わっています。


着替えスペースの中はこんな感じ。ドアがあることで、より安心して着替えることができそうです。


ここで気になった人も多いはず、「シャワーはないの?」というギモンですが、この件に関して大崎代表がざっくばらんに説明してくれました。シャワーを設置することももちろん今後の課題には挙がっているわけですが、しかし「本当にシャワーは必要なのだろうか?」という考え方があるのも一方では事実。現に、すでにジテツウをしている人の大部分が夏でもシャワーのない環境となっているので、シャワーが必須ではないことは立証されていると言っても過言ではありません。シャワーを設置することは可能ですが、そうすることによる利用料のアップは避けられないので、「安いままでいいからシャワーなし」を取るのか、「高くなってもいいからシャワーが欲しい」という意見が優勢になるのか、それは実際の利用者の声にゆだねたいということでした。

現に、今後オープンする予定の店舗では,シャワーを試験的に導入することも案として挙がっているとのこと。「夏でも水とタオルがあればいいよ」という人もいるので、今後は利用者の声に応じて柔軟に対応していく、という説明がありました。

店内には、仏式・米式の空気入れがあるほか、大きめの送風機もあるので、汗をかいても風で一気に涼んでしまえば良さそうです。


◆「ヴェロスタ」が生まれた経緯
このように、シンプルに利用者の声に応じてサービスを提供するというヴェロスタですが、その誕生にはなんと、クラウドファンディングでの出資募集も大きく関わっています。クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で実施されたキャンペーンを成功理に終わらせています。

やっぱり自転車通勤したい!スポーツ自転車専用の会員制駐輪場を増やそう - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)


キャンペーンの際に作成されている以下のムービーでも、ヴェロスタの発祥が詳しく解説されています。

Velo-st 紹介動画 ヴェロスタとは? - YouTube


代表の大崎氏がかつて自転車通勤をはじめた頃、よく「自転車どこに停めてるの?」という質問をよく受けたとのこと。それはつまり、都市部での自転車を取り巻く駐輪環境が良くないことの裏返しであり、事実、ヴェロスタができた本町周辺では1000台程度の駐輪スペースしか用意されておらず、しかもそれらは一時利用のみとなっており、自分専用のスペースを確保できる場所は皆無だったとのこと。


駐輪場に停められなかった自転車は道路脇やビルの横にあるスペースに置かれることになり、雨風にさらされたり破損や盗難のリスクにもさらされることになります。そんな問題を「自転車通勤したい人でビルの1室をシェアする」という方法で解決しようというコンセプトのもとで作られた「月極の会員制駐輪場」こそが、ヴェロスタだったと言うわけです。

ちなみに、ヴェロスタ代表の大崎氏は大阪でも珍しいコワーキングスペース「Osakan Space」(オオサカンスペース)を運営する人物でもあります。さまざまな業種から集まった人の輪の中から、ヴェロスタのような新しいサービスが生まれる環境があるというわけです。

大阪のコワーキングスペース : Osakan Space (オオサカンスペース) : 本町駅すぐ御堂筋沿い | 御堂筋線本町駅番出口から30秒のCoworking space(コワーキングスペース)です。


ヴェロスタは前述の通り5店舗がオープン済みで、2015年12月には6店舗めがオープン予定。月々の利用料は6000円~6500円となっています。また、フランチャイズ方式での店舗運営も募集中とのことで、定期的に運営セミナーが開催されているとのこと。ジテツウを始めたいと願っていた人はもとより、サービスを提供する側にまわりたい人も一緒になって作り上げていける環境が整えられているようです。

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in 取材,   乗り物, Posted by darkhorse_log

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