世界に12人しか存在しない、インクを使うペンで描く技術を極めた「マスター・ペンマン」とは?

多くのことがデジタルで行われるようになった時代に、文章を書いたり絵を描いたりということをアナログな素手で行う人も少なくなってきました。しかし、「デジタルでは表現できないことがある」として、手で描くことにこだわっているアーティストたちが存在します。世界でたった12人しかいない「マスター・ペンマン」のジェイク・ウェイドマンさんもその1人で、カリグラフィーの手法を用いてすさまじい作品を生み出しています。マスター・ペンマンとは一体どういうものなのか、そして彼らの目指すものは何なのか、ムービーが公開されています。
Master Penman Society | IAMPETH site
http://www.iampeth.com/master-penman-society
マスター・ペンマンが作り出す作品と、プロフェッショナルな生き様は以下のムービーから確認可能です。
Master Penman Jake Weidmann | HUMAN - YouTube

「僕がまだ若い時、自分はアーティストにならなければいけないし、僕の手から生まれるものは全て美しくなくてはいけないのだと思っていました」と語るのは……

史上最年少の「マスター・ペンマン」であるジェイク・ウェイドマンさん。マスター・ペンマンとは、卓越した英習字の技術を持つ人にだけ与えられるIAMPETHの称号です。

ウェイドマンさんは、高校で誰もがノートPCをタイピングしている時にもデスクに紙を広げてペンで文字や絵を一心不乱に描いていました。

実際に作業する時は、以下のような特殊な道具を使用する様子。

ぐるぐると芯を削り……

作業開始。


マスター・ペンマンの称号をさずけるのはIAMPETH(The International Association of Master Penmen, Engrossers and Teachers of Handwriting/肉筆の教育者とエングロッサー、マスター・ペンマンの国際協会)というNPO。現在IAMPETHの監督者であるマイケル・スールさんは「ジェイクは現存するペンマンの中でも最も高い技術を持つ一人」だと語ります。

ウェイドマンさんの作品はこんな感じ。



「ジェイクは昔からアーティスト気質でした。とても細かい絵を描くのに夢中で、昼食を取るのもいつも最後でした」と語るのは母親のジャネットさん。

これがウェイドマンさんが子どもの頃に使っていた単語帳。美しい筆記体がズラリと並んでいます。

現在は多くのことがコンピューターで行われるようになり、文字を書いたり絵を描いたりという作業もデジタル化しています。デジタル化に伴い激減したペンマンの黄金期は南北戦争の時代で、英習字の技術を取得することは成功へのカギだったため、多くの人がペンマンになるため専門の学校に通いました。そして学校の卒業生のうち、特に優れた技術を持った人が「マスター・ペンマン」と呼ばれたのです。

マスター・ペンマンは現在、世界で12人しかいません。ウェイドマンさんは12人のうちの1人であり、ここ30年で最も若いマスター・ペンマンです。

ウェイドマンさんはさまざまなアートの手法を練習しましたが、最も作品に用いているのはカリグラフィーの手法。

カリグラフィーの手法を用いることで、絵や文字に強いメッセージを持たせることができるとのこと。

完璧主義者のウェイドマンさんが大きな作品を作るには数カ月、長いときは1年もの時間がかかるそうです。

「『簡単そうに見える』と言われることもありますが、それは僕が朝4時半に起きて奴隷のように作業しているのを見ていないからです」とウェイドマンさん。

「人は結果しか見ないから、結果を作り出すまでの葛藤を知らないんです。多分、僕の妻以外は」


写真に写っているのが妻のハンナさん。ハンナさんは結婚前からウェイドマンさんの仕事やプロフェッショナルな姿勢を見てきており、理解して支えているそうです。

「練習するのと同じくらい勉強せよ」ということで、身の回りから美しさを学ぶことも大切。スールさんによると、ウェイドマンさんはアメリカの歴史上の人物の軌跡をたどる旅に出ることも多いそうです。

英習字の第一人者であるプラット・ロジャー・スペンサーは自然の美しさからインスピレーションを得ていたということで、コロラドの岩山に座り、スケッチを始めるウェイドマンさん。


続いてスールさんとウェイドマンさんが向かったのは駅。

駅の中の部屋の1つに……

ウェイドマンさんの作品が飾られていました。

今ではコンピューターやデバイスがさまざまなことを記憶しており、人は自分自身で学んだり記憶したりということをやめてしまいました。しかし、「一文字一文字をつなげて単語を作り出し、単語から文章を作り出すことで、情報が脳にしっかりと染みこむ」、というのがウェイドマンさんの主張。

私たち人間は機械ではありません。

コンピューターには表現できない、手書きの文字だけが持つ感動や人を動かす力というものが存在するはず。もしアメリカ独立宣言がメールのような形で作られていたら、私たちに与える感動が薄れていた可能性もあります。

デジタルの時代にアナログにこだわり続けるウェイドマンさんの願いは、「人々が『手で描くこと』と恋に落ちること」とのことです。



なお、ウェイドマンさんの作品は以下のウェブサイトから見ることができます。
Jake Weidmann - Artist and Master Penman
http://www.jakeweidmann.com/

カリグラフィーの一例は以下のような感じ。美しい線で描かれた「Magic of Writing」は100ドル(約1万2000円)で販売されています。

文字で立体的なドクロを表現した「Script and Skull」は50ドル(約6000円)。

信じられないほど細かい「The Sojourner's Rose(50ドル/約6000円)」はコンパスと船がモチーフ。

ネイティブアメリカンを描いた「Steward(150ドル/約1万8100円)」などもあります。

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