空気の力で豆のうまさを最大限に引き出すというコーヒーマシン「AeroPress」を使ってコーヒーを淹れてみました
独自の仕組みを持つコーヒーメーカー「AeroPress(エアロプレス)」は、高価なマシンを使わなくても本格的なコーヒーを抽出できるという評判が口コミで広がったことで、世界中で1000万台以上という販売実績を持つ製品です。AeroPressを開発した「AEROBIE(エアロビー)」社がコーヒーとは無関係の世界的フリスビーメーカーだったことは以前にもGIGAZINEで記事を掲載済みですが、実際にAeroPressがどんなコーヒーを淹れられるようになっているのか、実際の製品を購入して試してみました。
AeroPress® | AEROBIE® High Performance Sport Toys
http://aerobie.com/products/aeropress.htm
エアロプレスコーヒーメーカー : 商品情報 : 小川珈琲
http://www.oc-ogawa.co.jp/products/tools/aeropress/
AeroPressのパッケージはこんな感じ。断面が六角柱という厚紙製のパッケージになっており、パッケージにはお金をかけてない様子が手に取るように伝わってきます。
周囲をぐるりと見渡してみると、コーヒー専門家などによる推奨のコメントが英語で書かれていました。
パッケージの下部には「1~3杯のコーヒー、そしてエスプレッソの抽出が可能なコーヒーメーカー」という意味の文言。
パッケージ上面のフタ部分には、「コーヒー豆とお湯を入れて10秒待ち、優しく押し下げる」という簡単な作り方が書かれていました。これは、実際に買った人のためと言うよりも、店頭でパッケージを見て買おうかどうか迷った人のために書かれているものかも。
パッケージの中身は、AeroPressとスタンド、フィルターをセットする底ブタなどのコーヒーを淹れるための本体と、豆を入れやすくするための「ろうと」や、専用の豆計量スプーン、かき混ぜ用のパドルなどが入っています。
AeroPressの中心的な部品はこの2つ。左の「チャンバー」と呼ばれる筒に豆とお湯を入れ、その上から右の「プランジャー」を挿し込んでグッと押し込むことでコーヒーが抽出されます。
チャンバーの底はこのようにぽっかりと穴が開いていますが……
キャップにフィルターを乗せてセットするようになっています。AeroPressは専用の円形フィルターを使うようになっています。
プランジャーの底には、大きなゴム製のパッキンがついています。
こんな感じでチャンバーにプランジャーをセット。ようは巨大な注射器のような構造になっており、空気の圧力を利用して豆とお湯に圧力をかけ、より良くコーヒーの成分を抽出するという仕組みになっているわけです。
◆実際にAeroPressでコーヒーを淹れてみた
仕組みがわかったところで、実際にコーヒーを淹れてみます。まずはコーヒー豆とチャンバー、フィルター用キャップと白い紙フィルターを用意。紙フィルターは製品に同梱されているので、すぐ使い始めることができます。
キャップにフィルターをセットして……
チャンバーの底にクイッとねじ込んで装着完了。
フィルターをセットしたら豆を投入します。ここで同梱されていた「ろうと」を使います。
専用の計量スプーンで豆の量をはかってチャンバーに投入。目安はエスプレッソコーヒー2杯につき、スプーン2杯の豆の量です。
豆を投入したら、容器を軽く叩いて豆が平らになるようにしておきます。
次に、コーヒーを受ける容器の上にAeroPressをセット。上から力を加えるので、紙コップなどの容器は使えません。
準備が整ったら、お湯を注ぎます。お湯の温度はセ氏80度ぐらいがベスト。熱すぎてもぬるすぎてもおいしいコーヒーは抽出できません。コーヒーを受ける容器は、あらかじめお湯を入れて温めておくとさらにグッド。
チャンバーの上からお湯をゆっくり注ぎます。コーヒー専用のポットがあればベストですが、写真のような湯沸かしポットでも優しく注いであげればOK。なお、おいしいコーヒーを淹れるためには水道水は避けたほうがベター。ミネラル分の少ない軟水を使うのが間違いの少ないセオリーどおりの方法ですが、硬水による味の個性を味わうのも楽しみの1つです。
お湯の量は、チャンバーの横に記載された数字を目安に調整します。スプーン2杯の豆を入れた場合だと「②」の上あたりまでお湯を注げばOK。
優しくお湯を注ぐと、豆からきめ細かな泡が立ち始めました。ひと目見ると、エスプレッソの表面に見られる「クレマ」のように見えますが、実際には似て非なるものなので要注意。
規定量のお湯を注いだら、かくはん用のパドルでゆっくりと10回ほどかき混ぜ、お湯の中で豆をおどらせます。かき混ぜたら10秒~30秒ほど放置して蒸らすのがポイントで、人によっては1分以上も蒸らすこともあるとのこと。
蒸らしが完了したら、プランジャーをチャンバーにセットして……
上からゆっくりと圧力を加えてコーヒーを抽出します。一気にプランジャーを押し下げるのではなく、10秒以上の時間をかけて抽出するのがポイント。
プランジャーが完全に押し下がり、豆の表面まで届いたら抽出は完了。
淹れたてのコーヒーをさっそく味わってみます。
「漆黒」という表現が似つかわしいほど濃い色合いを持つコーヒーは、見た目の予想どおりに濃厚なコーヒーの味わいを感じることができます。ギュッと圧力をかけて抽出しただけあって、風味はまさにエスプレッソと同じレベル。普段から飲み慣れているコーヒー豆を使っても、「こんな味が出るんだ」と驚かされるほど濃厚でしっかりしたコーヒーの風味を味わうことができます。
ただ、人によっては濃厚すぎるという感想を持つかもしれません。そんな場合は、あとからお湯を足して味を調整すればOK。抽出後にお湯を注ぐことで、豆から余分な成分が出すぎてしまうのを避けているようです。
次に、普段から使っているドリッパーを使って淹れたコーヒーと飲み比べてみました。抽出の際にはお湯の量を可能な限り合わせ、条件をそろえるようにしてあります。
実際に飲み比べてみると、ドリップ式で淹れたコーヒーは飲み慣れた味ではあるものの、AeroPressによるコーヒーと比べると少し味がボンヤリしたように感じられました。よく言えばフワッとした味わいといえるのかもしれませんが、どこかで何かの成分がなくなってしまったように感じるのは、AeroPressのコーヒーを飲んだから感じたことなのかもしれません。
一方のAeroPressは、ドリップ式よりも味がキリッとした印象。味のヌケがよくなって、透明感を感じさせる味わいに変化したように感じました。この辺はもちろん個人差があって評価が分かれるものですが、両者で思った以上に味がハッキリと分かれたのが非常に印象的でした。
コーヒーのような嗜好品の場合、味に対する評価は人それぞれとなるために絶対的な正解というものはもちろんありません。AeroPressは「コーヒーのよいところを最大限に出す」ことを狙って開発されたとのことなのですが、実際にコーヒーを淹れてみると自分の予想以上に味が変化したことが非常に面白く感じられ、ここにAeroPressの真価があるように感じました。コーヒーの味を追求する人はもちろん、コーヒーをもっといろいろ知りたい人にとっては興味深い勉強道具となりそうです。
◆おまけ1
このように、コーヒーの実力を活かすために開発されたというAeroPressですが、さらにその可能性を追求するためのイベント「World AeroPress Championship」が開催されており、世界中からさまざまなアイデアが持ち寄られています。以下のサイトでは大会の結果や、優勝者の淹れ方などを見ることができるので、よりおいしいコーヒーのために参考にしてみても良さそう。
World AeroPress Championship
そんな大会で注目を集めているのが、抽出の際にAeroPressを上下逆さまにするという方法。プランジャーを下に置き、上からチャンバーをセットして豆とお湯を入れるという方法で、こうすることで豆の蒸らしをさらに重点的に行うことができるようになるようです。
もちろん最後には本体をひっくり返した状態でプレスしてコーヒーを抽出。確かにこの方法で抽出すると、豆の風味が増したようにも感じられました。味の変化としては微妙なレベルではありますが、このような積み重ねが最終的においしいコーヒーにつながるのかもしれません。
◆おまけ2
独特の構造を持つAeroPressは、抽出後の豆の処理を簡単に行うことができます。このように、豆を受けるためのゴミ袋を置いておき、フィルターキャップを外します。
その状態でプランジャーをグッと押し込むと……
「スポン!」と豆がチャンバーから押し出され、キレイにゴミ袋に落ちました。
抽出が終わった豆は、このように水分をほとんど含んでいない状態となっています。これも、空気の圧力でお湯とコーヒーの成分を出し切った結果になっているようです。
ことおいしいコーヒーを淹れることに関しては隙のないAeroPressですが、あえて欠点を挙げるとすれば、洗い物の数が増えるということになりそう。ドリップ式のようにフィルターをポイッと捨てて水でジャーッと流すだけというわけにはいかないのですが、これもより良いコーヒーを求めるためと割り切るしかなさそうです。
AeroPressは全国の量販店などで手に入れることができるほか、Amazonで購入することも可能です。記事作成時点のAmazonでの価格は3888円となっていました。
Amazon.co.jp: エアロプレス コーヒーメーカー: ホーム&キッチン
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