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世界的フリスビーメーカーが世界的コーヒーマシンを作ることになった経緯とは?

By Rik Panganiban

一杯ずつコーヒーをハンドドリップで淹れる「ブルーボトルコーヒー」が日本でも開店するなど、おいしいコーヒーを求める声は昔から変わらず存在しているもの。そんな中でもわずか1分でおいしいコーヒーができあがると評判の「エアロプレス」というコーヒーメーカーがあるのですが、実はこの商品を開発したメーカーのエアロビー(Aerobie)社は、世界で最も遠くまで飛ぶフリスビー「エアロビー」のメーカーでもあるという異色の存在となっています。

First Alan Adler Invented the Aerobie. Now He’s Created the Perfect Cup of Coffee — Backchannel — Medium
https://medium.com/backchannel/first-alan-adler-invented-the-aerobie-now-he-s-created-the-perfect-cup-of-coffee-c5e94ccc538e

1984年創業のエアロビー社は、カリフォルニア州パロ・アルトに拠点を構えるスポーツ玩具メーカー。創業者のアラン・アドラー氏は、1980年代すでに販売されていた「フリスビー」を改良したドーナツ型フライングディスク「エアロビー」を開発して同社を立ち上げました。


空力効率を突き詰めたという「エアロビー」は従来のフリスビーとは比べものにならない飛距離を誇り、特に「エアロビー・プロ」と呼ばれる本格モデルは飛行距離なんと1333フィート(402.298メートル)という世界記録を樹立したフライングディスクとして認定されています。


そんなエアロビーが飛ぶ様子を収めたYouTubeムービーがこちら。約400メートルという記録には届いていないようですが、丘の上からスローしてカメラがその姿を見失うほど遠くまで飛んだ様子が収められています。

Aerobie Record Throw 2001 - YouTube


そんなエアロビーを開発したアドラー氏は、全く異なるジャンルのコーヒーマシン「エアロプレス」を開発。大々的な宣伝などは行わず、コーヒー専門家などの口コミを通じて徐々に人々の話題を呼ぶことで、発売から約10年で1000万台ともいうエアロプレスを販売してきました。


そんなエアロプレスの開発の経緯を、アドラー氏はMediumのインタビューでいろいろと語っています。

◆開発に至った経緯
アドラー氏がエアロプレスの開発を行うきっかけになったのは、同社の営業責任者の奥さんと交わした会話の内容とのこと。普段からペーパードリップでコーヒーを淹れるものの、どうしてもうまくできずに水っぽいコーヒーになってしまうことに悩んでいたという夫人の話を耳にしたアドラー氏は、その悩みを解決することを決意。まずは一般的なドリップ方式でいろいろと研究を行うところから開発をスタートさせました。

それまでほとんどコーヒーに関する知識がなかったというアドラー氏ですが、唯一知っていたことは「沸騰するより低い温度で淹れたコーヒーには甘みが出る」ということ。まずはさまざまな温度でコーヒーを淹れまくり、ついに華氏175度(摂氏約79度)で淹れたコーヒーが最もおいしいということを突き止めました。

By Timothy Marsee

さらにアドラー氏は、ドリップが完了するまでにおよそ5分もの時間がかかることに目を向けます。低い温度で淹れる方がコーヒーがおいしくなるというのなら、その時間が短い方がいいのも同じことだと考えたアドラー氏は、ドリッパーの上から豆に圧力を加えることで時間を短縮することを試みたそうですが、これはあまり効果がなかったとのこと。

何とかして密閉された容器に豆を入れて、圧力を加えてコーヒーを抽出する時間を短くしなければならないと考えたアドラー氏は自らさまざまな形状を考案しては試作品を作ってコーヒーを淹れ続け、ついに通常のドリップコーヒーよりも苦みが抑えられておいしいコーヒーを淹れることに成功したそうです。

「うまく行くまでに何回ぐらいチャレンジしましたか?」という問に対してアドラー氏は「40回」と回答。最も初期のものは、まるで自転車のタイヤに空気を入れるポンプのような物で、すぐうまくいくと分かったものの、実際の形にするまでにはさまざまな試行錯誤が繰り返されたとのこと。豆をお湯にさらす方法一つにしてもさまざまなトライが行われ、最終的にやっと現在のようなエアロプレスに豆とお湯を注ぎ、ゆっくりとかき混ぜる方法に落ち着いたそうです。


開発が一段落して、製造の段階に入ったエアロビー社は数十万ドル(数千万円)ともいう予算を金型などの設備に投資。しかし、それまでスポーツ玩具を専門に扱ってきた同社にとって、食品雑貨部門の市場開拓は当初厳しいものがあったそうです。

◆開発者としてのアドラー氏
1938年生まれのアドラー氏は、小さい頃から身の回りのもので何かを作ったりすることが好きだったとのこと。父親が不器用だったことを見かねたのか、アドラー氏の母親は主婦向けのDIY講座のようなところで家の修理を学び、簡単な電気工事なら自分で行っていたそうで、アドラー氏もそんな母親から数々のテクニックを学んだとのこと。いろいろな修理がお手の物になったアドラー氏は近所の人から修理を頼まれることで小遣い稼ぎをしていたそうです。

1960年には最初の特許を取得して企業への売り込みを行っていたアドラー氏ですが、なかなかうまくはいきません。そんな中、バネでできたおもちゃのスリンキーに似たSlapsieというおもちゃを開発したところ、おもちゃメーカーのWham-Oとの契約に成功し、初めて製品が商品化されることになりました。(しかし、販売はそれほど伸びなかったとのこと)


そんな開発者・アドラー氏は、ずっとフリスビーの構造に疑問を持っていたとのこと。空気を切り裂いて飛ぶべきフライングディスクであるにもかかわらず、本体の厚みが大きすぎることに問題を感じていたアドラー氏は、可能な限り薄い本体を持つフライングディスクの開発に着手。その結果、飛距離を大きく伸ばすことに成功するも、今度は直進安定性の悪さが新たな問題として立ちはだかってきました。これを解決するためにアドラー氏はリング形状のフライングディスクを開発。後に商品名「Skyro」として発売された製品は、当時の飛距離で新記録を樹立することに成功しました。

しかしアドラー氏は、Skyroの性能がある特定のスピードの時しか発揮されないことを問題としていました。Skyroの特許権を再び自らのものとしたアドラー氏は、リムにフィンをつけることで空力特性を劇的に向上させることに成功。現在のエアロビーの形がこのときに完成するに至りました。


◆コーヒーマシン「エアロプレス」
そんなアドラー氏が開発したコーヒーマシンのエアロプレスは、日本円でわずか5000円前後という価格でありながら、何十倍という価格の本格的なマシンよりおいしいコーヒーを淹れることができるという評価を不動のものとしています。エアロプレスの宣伝はほとんど行わないというエアロビー社ですが、マシンは口コミで次第に支持を広げます。特に、コーヒー関連のライターに実機を使ってもらい、記事を書いてもらうことで評判が評判を呼び、優れたマシンとしての評判が定着するようになりました。

同社ではエアロプレスで淹れるコーヒーの味を競う「エアロプレス・チャンピオンシップ」という大会を開催しており、ここではさまざまな淹れ方が考案されてきました。過去には、いちど淹れたコーヒーを再びエアロプレスに戻して淹れ直すという「エアロプレス・ハック」ともいうべき手法が主流を占めた時期もあったとのことですが、近年では基本に忠実に沿った手法がメインストリームになっているといいます。


そんなアドラー氏も、最近のコーヒー業界への関心を忘れてはいないようで、アメリカでも人気を呼んでいる「ブルーボトルコーヒー」のことにも言及。従来型のドリップ方式を採るブルーボトルコーヒーのおいしさの理由について「おそらく豆のせいだね。彼らはいい豆を作っている」としながらも、やはり抽出にかける時間の短いエアロプレスの方が優れていることを強調しています。


そんなアドラー氏が現在開発に関わっているのは、なんとエクササイズ器具とのこと。これまでになく楽しくエクササイズができる器具の開発を進めているというアドラー氏、今度はどんな製品を世に出してくるのか思わず関心を持ってしまいそうです。

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in デザイン,   メモ, Posted by logx_tm