取材

ドッペルギャンガーの折りたたみ自転車でインドを走ることはできたのか


100カ国以上を訪れた自転車世界一周でしたがインドを旅してないのは心残りでした。もうひと頑張りと再び海外に飛び出して、ようやくその機会が訪れます。広大なインドの大地を力いっぱい走りました。飛行機移動が多くなることから、ドッペルギャンガーの折りたたみ自転車を新しい相棒に選んだのですが、意外と走ってくれています。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。交通マナーが悪かったり、安宿で宿泊拒否に遭ったりと、何かと面倒な国でしたが、旅自体はスムーズに進みました。悪いニュースばかり飛び込んでくる割には、普通の人たちはいたって親切。今回は、折りたたみ自転車で駆け抜けたインドの旅をまとめてみました。

◆インドの自転車旅
3月20日に、インド最大の都市ムンバイの空港に降り立ちました。


ムンバイの中心にあるチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅は、ヨーロッパかと錯覚してしまうようなゴシック様式の建物。


始まりの場所にはぴったりだったインド門


ムンバイからは、ハイウェイが開通していて、快適に走ることができました。場所によっては、片側2車線にサービス道路がついてたりします。


ムンバイを出てしばらくは、暑さが厳しくて参りました。風が吹くと、アスファルトによって熱されたムワッとした空気が、全身を包み込むように襲いかかります。バラナシまで近づくと、幾分か暑さは緩んだのですが、インドを走るなら、もう少し早い時期の方がいいでしょう。乾季だったので雨は降りませんでした。


この暑さで倒れないように、チャンスがあれば、服を濡らしていました。こうすると気化熱が体温を下げてくれるので、少しの時間ですが生き返ったように涼しくなります。


幾つものスパイスが混ざり合った、本場のカレーは忘れられられません。スプーンでをすくって口に入れると、言葉にならない衝撃が全身を駆け巡ります。ただ、カレーばかり続くと飽きてしまうのが難点。そんな時は、しばらくカレーから遠ざかります。また時間が経って、あの味が忘れられなくて、再びカレーを食べると「なんだこれは!!」と目が飛び出るほどに感動。コントのように一人繰り返していました。


ちょっと可愛らしく映った食堂のおっさん。


巡礼するインド人でごった返していたヒンドゥー教の寺院。


男の子たちは、チャリダーマンのかっこいい自転車に興味津々のようです。


インドの幸せな日常を切り取ったような一枚。


インドールという町を過ぎるとハイウェイがなくなり、走りづらいガタガタ道へ。


お手伝いをしていた二人。


ムンバイから、約1200kmを走って、タージ・マハルのあるアグラに到着。


開門と同時に訪れました。人が少ないので写真は取りやすいのですが、夜が明けたばかりだと白の建物もくすんで見えます。だから、日が上るまで時間を潰していました。


青い空がでてからこそ、タージ・マハルの白さは際立ちます。左右対称に造られた芸術作品のような建物は、どれだけ見ても飽きることのない、不思議な魅力が詰まっていました。この建物は、ムガル帝国の皇帝が最愛の妻のために築いたお墓ということです。


アグラの次に目指したバラナシまでも、ハイウェイが完成していたので走りやすかったです。


この道は、東の大都市コルカタまで繋がっているよう。


庭先で遊んでいた子どもたちを捕まえて。


インド人じゃないから、サングラスが怖かったから、小さな子どもを泣かせてしまいました。「悪い人じゃないよ」と、愛想振りまいても、笑ってくれません。嫌われちゃった。でも、それを見ている周りの大人たちからは、にこやかな笑顔でいっぱい。アフリカでもあったけれど、こうした地元の人たちとの触れ合いが、旅の思い出を積み重ねてくれます。


通学途中。


そして、ヒンドゥー教の聖地であるバラナシに到着。外国人観光客もさることながら、巡礼のために訪れるインド人の姿も多かったです。


地元の子供たちは、ガンジス河で泳いでいました。


バラナシからは、北上してネパールへ。


眩しいほどの水と緑には癒やされました。


一帯は険しい山ばかりだというのに、峠を越えた先は平坦な土地が広がっていてました。首都カトマンズは、標高1300mもある盆地の中に位置しています。


ネパールから戻ってきたラクソウルという町で、南アジアの自転車旅は終了。タイヤがすり減ってパンクが多発していたのと、バングラデシュを訪れる時間を確保したかったので、電車を使っちゃいました。旅を始めた頃なら、自走にこだわるところですが、旅も終わる頃なので、次へ次へと進まないといけません。インドを脱出するチケットも、先に取っていました。全然調べていなかったのですが、運がいいことにコルカタまで直通の電車が走っています。

踏切。


ラクソウルの駅。


自転車は貨物車に預けて、その他の荷物をまとめて乗り込みます。


エアコンではなく扇風機が動く「スリーパー」というクラスのチケットを購入。一人一台ベッドを確保できるので、夜行でしたがぐっすりと眠ることができました。自転車だと一週間はかかる行程でしたが、電車だと一日でコルカタまで到達。これだけ移動したにも関わらず、費用は1000円も掛かっていません。


コルカタに到着して、宿へ向かったのですが、ここでもパンクしてしまって、地元民に囲まれながら、修理していました。


バックパッカーでしたが、6泊7日でバングラデシュにも足を伸ばします。


町を歩いていると、たくさんの人に声をかけられる国でした。


コルカタからはクアラルンプール経由でボルネオ島のブルネイへのフライト。


自転車もズタ袋を利用してのパッキングです。


チェックインに向かうと、預入荷物を「ラッピングしてください」と言われたので、素直に指示に従います。200ルピー(約400円)で、ピッチリと巻いてくれました。たいてい節約のために、自前のサランラップで巻くのですが、この時はお金を払っただけあって、分厚いしっかりとしたラッピングフィルムでした。


完成。


エジプトからモルディブに入ってスタートした南アジアの旅ですが、スリランカ、インド、ネパール、バングラデシュと何とかスケジュール通りに周ることができました。文化や風習も共通している地域なので、一気に旅ができて良かったです。

◆折りたたみ自転車
走行中突然フレームが折れた」というニュースが流れてから、周りから「大丈夫ですか?」「気をつけてください!」と心配される私のドッペルギャンガーですが、今のところは問題なく走っています。購入する前から、フレーム破断の事例は知っていましたので、使っている人が多い分だけ、しっかりと造られているはずでしょうから、人気の車種である「202 blackmax」という選択。在庫がなかったので、色違いの「200-WH whiteback」を購入しましたが、2万円台の折り畳み自転車にしては、よくやってくれていると思っています。フレーム以外、ほぼパーツを交換しましたけけれど……。

もう少し旅を続けると決めた際に、自転車は手放せませんでした。ただ、飛行機での移動が多くなることから、これまでのマウンテンバイクだと、超過料金を請求されることが怖くて、折り畳み自転車の購入を決意。5万円と決めた予算ですが、その額で手に入る折りたたみ自転車は使われているパーツもイマイチで、長距離を走るには心もとない。「だったら」と安いフレームを手にして、自分で組み上げることにしました。カスタマイズは「ドッペルギャンガーの折り畳み自転車を改造して世界一周の相棒にしてみた」という記事でまとめています。

このようにインドを走っていたのですが、メーカーの推奨しない使い方でしょうから、安全には細心の注意を払います。


ずっと背負っていたデイパックでしたが、工夫してみるとハンドルバッグに取付け成功。暑さで背中がグッしゃり、重さで肩がズッシリ、走行中は何も背負わないほうが快適です。


ハンドルにはGPSを取り付けています。現在地と地図を照らし合わせると迷いませんし、標高や目的地までの距離も出るので、今では欠かすことのできないアイテムの一つです。


ハンドルポジションを増やしたかったので、エンドバーを取付けました。インド人のマウンテンバイクには、必ずと言っていいほど装着されている一品。80ルピー(約160円)というお手頃な値段になっています。


フロントギアは1枚で32T、リアスプロケットは9速、ホイールは20インチという私の自転車は、平地で時速15kmが目安でした。時速20kmを越えると、ペダルが軽くなりすぎて、負荷もかからず速度が上がりません。数日間スピードが出ないときがあったのですが、点検してみるとリアディレーラーの変速が上手くいってませんでした。ペダルの一回転で、ホイールもけっこう回るので、奇妙な乗り心地となる自転車です。前後ハブにボトムブラケットと駆動系はシマノのパーツに交換したので、抵抗も少なく軽やかな走りとなっています。

フル荷物だと、このような感じに。


軽量さを優先させて手に入れたパニアバッグですが、安いだけあって耐久性に難あり。破けてしまったら、針と糸で縫わないといけません。


・パンク修理
シュワルベのマラソンなら大丈夫と過信していました。パンク防止層が入ってないタイヤに、荷物満載の自転車は相性が悪かったです。自分でも思い出したくないほどに、パンクしていました。2日続けてパンクしなければラッキー、ひどい時だと1日に2回もパンク修理しています。カリブ海や中東を走っていた頃は、まだましだったのですが、スリランカで悪化しだして、インドあたりで頻発するような事態に。

画びょうを踏み抜く。


一気に空気が抜けたパンクのときは、タイヤを外す前に空気を入れて水をかけてみましょう。プスプスと音がして穴の場所が簡単に分かるので、タイヤを全て外す必要がなく、パンク修理もスムーズです。


あまりのパンクの多さに、廃チューブを加工して、タイヤとチューブの間に挟んでいました。数日くらいはマシな気もしましたが、それ以降はあんまり変わらず。


・補給物資
こんな進むに進まない状況でしたので、日本からコルカタにEMSで荷物を送ってもらいました。心配したものの、わずか6日で到着。これまでも、何度も実家に手配してもらっているので、これを最後にしないとですね。


4000km前後しか使っていませんが、タイヤのトレッドも大分すり減りました。ケーシングも破けてしまって、チューブがお餅のようにはみ出してパンク。応急処置として、道端に落ちているタイヤ片をタイヤとチューブに挟んだものの、張り裂けはしないだろうかと恐る恐る走っていました。


100均に置いてあるパンク修理のパッチも送っています。インドで手に入れたパッチは、貼り付けて直ったようにみえますが、走行中にいきなり剥がれて、空気が漏れてしまって、使いこなすことができませんでした。


パンク修理が多かったことから、新しいゴムのりも手に入れたのですが、日本では珍しい特大サイズ。


こんなパンクばかりの毎日だったので、フライトの前に新しいタイヤに履き替えました。同じシュワルベなのですが、「マラソンプラス」と呼ばれる、トレッドとケーシングとの間にパンク防止層のある新品タイヤに取り替えます。


ついでにチェーンも交換して、気持ち新しくなった自転車。


一時帰国の際に低予算で手に入れたビンディングシューズを使っていたのですが……


スリランカで片方、インドの始めにもう片方と、クリートを固定する溝が壊れてしまい、シューズをペダルに固定できないまま走っていました。踏み面の小さなペダルだったので、効率が悪かったです。こちらも、新しいシューズを送ってもらいました。新しいシューズは、メーカー重視でシマノという選択。


この新しいタイヤのおかげで、約1000km走ったボルネオ島は、一回もパンクすることがありませんでした。新しいビンディングシューズも快適で、踏み込む力を的確にペダルに伝え、ぐいぐいとスピードを上げて進んでくれます。

旅立つ前は掴めなかったのですが、20インチの折りたたみ自転車でも、海外を走ることができています。インドとネパールは、約2500kmを走りました。これから、オーストラリアを基点に、ニュージーランド、トンガ、フィジーといった太平洋の島国を少し周る予定です。ここで折りたたみ自転車の旅もひと区切り。何事もなく走ることができたらと思っています。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
)

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in 取材, Posted by logc_nt

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