取材

「いすが壊れるか、己が壊れるか」事務用いすでの耐久レース「いす-1GP岡山大会」を見てきました


毎年3月末に京都府京田辺市キララ商店街で開催されている事務用いすによる2時間耐久レース「いす-1GP(グランプリ)」。昨年からは他の地方でも開催されるようになり、日本事務いすレース協会も発足するなど、いす-1GPが日本各地に広がりをみせています。今回、中国地方で初となる岡山大会が開催されるということで、レースの様子などをまとめてみました。

いす-1GP岡山大会
https://www.facebook.com/events/934594903237889/


開催地は、岡山県倉敷市にある水島常盤町商店街です。


水島臨海工業地帯のそばにある商店街で、近くの鷲羽山に登ると工場地域を一望できます。


工場の夜景を撮影するポイントとしても有名な場所です。


最寄り駅の常盤駅に到着。


歩いて3分程で商店街です。すでに歩行者天国になっており大会の準備が行われています。


参加チームは事前に応募しており、当日は受付で最終エントリーの手続きを行います。


続々と参加チームが集まってきました。


1チームは3名となります。こちらは開催地近くにある倉敷芸術科学大学から仲研究室の「なかけん」、いすは「大学に置いてあった備品」とのことで、壊すと弁償というリスクを抱えての参加です。


コクヨ山陽四国販売株式会社も参戦、入念な打ち合わせが行われています。いすもレース用と思わせるような特殊な背もたれのものを用意していました。


三菱自動車水島ラグビー部からも複数チームで参加、鍛えられた体でいかにも強そうです。


いすは事務用いすであることが規則で決められています。中古の540円のいすでも参加可能です。


いすの改造は禁止されていますが、装飾は許可されています。い草の芳香成分「イグサリュパミン」は「血液をさらさらにし、血行をよくする効果がある」とのことで、い草をいすに敷いての参加です。


開会式が始まりました。参加者全員が集まって元気よくあいさつからスタート。


1番にエントリーしたチームの代表者による選手宣誓。


ルール説明を真剣に聞く参加者たち。


コースは商店街の道路を往復する形で用意されており、1周は約185mとなります。


本戦のいす-1GPへの参加は40チームまでとのことで、まずは予選として03(ゼロサン)と呼ばれる、30mダッシュでの競争が行われました。


ゴール地点に猛スピードで選手が突っ込んできます。平均的な記録は9秒(平均時速12km)ですが、最速タイムは6.68秒(平均時速16.1km)でした。


予選が終了。すぐに集計が行われ、いす-1GPに参加できる上位40チームが発表されていきます。


39位・40位・41位のベストタイムが同タイムとなり、実行委員が協議中。予選は2回の計測が行われており、ベストタイムが同タイムの場合はもう一方のタイムで比較するルールとなっています。


名前を呼ばれ、いす-1への出場を決めた参加者たちは、歓声を上げて喜んでいました。


惜しくも予選で敗退し、いす-1GPへの出場を果たせなかった31チームは、サポートレースであるいす-2GP(1時間耐久レース)に参加できます。同タイムながら惜しくもいす-1GPに出場できなかった「D-WIN」は、いす-2GPではポールポジションからのスタートとなります。


倉敷市のご当地キャラ「シラカベーノ」も応援に駆けつけていました。


全車スターティンググリッドに付いたところでいよいよスタートとなります。


スタート直後の折り返しのコーナー、混乱もなく次々と各車が通過していきました。


チーム内での走者の交代は自由ですが、最低1周しないと交代できません。


バランスを崩して転倒する走者も。


1時間休むことなく、ひたすらコースを周回します。


1時間が経過しレースが終了、観客は拍手で参加者たちをたたえます。


いす-2GPのレース結果です。最後方でスタートしたチームが優勝するという波乱の結果となりました。


続いていよいよ、いす-1GPのスタートとなります。予選で最速だった「水島ガス」が呼ばれポールポジションに向かいます。


いよいよ2時間耐久レースのスタートです。スタート直後、かぶり物がハンデとなり、「水島ガス」はスタートダッシュに失敗。代わりに2番手からスタートの「岡大天文部」が先頭を奪取し、最初の折り返しのコーナーを通過します。


スタート直後ですが、何やらトラブルが発生し2番手以下の集団が混乱しています。「岡大天文部」は、一気に集団を突き放し独走態勢に。


スタートから2分経過、先頭でスタートした「水島ガス」が、2番でスタートした41番「岡大天文部」に早くも周回遅れにされてしまいます。


いす-1GPで会場に流れるBGMは地元のミュージシャンたちによる生演奏。「ディープ・パープルの『Burn』のみを2時間ひたすら歌い続ける」という、もう1つの2時間耐久イベントが行われます。


間近で見ることができ迫力もありますが、うっかりよそ見をしていると選手が突っ込んできて怪我をする可能性もあるので、十分気をつけて応援しなくてはいけません。


倒れたところに後からきたいすが追突し、さらに後からきたいすが追突するなど多重衝突も発生します。


コースの裏では、走り終えた参加者が倒れ込むなどかなりきつい様子。


ラグビー選手はトレーナーにマッサージしてもらっています。「スタミナは大丈夫だが、姿勢がきつくて足が痛い」とスポーツ選手でも簡単には攻略できない様子です。


地元大学生チーム「なかけん」もいす-1GPに進出していることを確認。かなり疲れがうかがえますがまだ開始40分、レースの半分も到達していません。


競走中の参加者が何やらお金を渡しています。


ジュース売り場の人を呼んで、ジュースを購入していました。


2時間耐久生演奏はドラマーが、音を絶やさないようにたたきながら交代を行っています。


なお、周回数の集計は地元の学生や商店街のスタッフによる目視での手動集計となっています。


開始から45分経過でトップは、「清滝友の会~特攻野郎Aチーム」になっています。こちらはトライアスロンのチームでスピードも持久力も兼ね備えた強力なメンバーが集まっており、スピードが他の参加者とは明らかに違いました。


日本事務いすレース協会の会長の、田原剛さんがステージに上がり、いす-1GPについて解説します。「そろそろいすの背もたれが取れるチームが現れますよ」と会長ならではの予想もありました。


1時間経過を前にして、けが人が発生した模様。両脇を抱えられ救護所へ運び込まれます。


なんと、「なかけん」のメンバーの1人が担ぎこまれてきました。両足を同時につってしまったとのことで、戦線離脱となりました。


救護所の前を通過する際、仲間がいるのを発見し、驚くメンバー。


仲間を1人失いましたが競技は続行、諦めません。


先頭からスタートするもかなり順位を下げてしまった「水島ガス」ですが、存在感はトップクラスです。


日本事務いすレース協会の会長の予想通り、いすの背もたれが取れたチームを発見。


キャスターが外れてしまうなど後半戦ではいすの耐久性が勝負の分かれ目にもなってきました。


Burnの演奏も続きます。


残り20分となりラストスパート。


5つあるキャスターのうち4つが壊れてしまっているいすもありました。引きずりながらも競走を続けています。


残り5分、参加者全員疲れ切った表情をしていますが、あともう一踏ん張りです。


2時間が経過し、チェッカーフラッグが振られレースが終了。皆が拍手で参加者をたたえます。


2時間耐久Burnも無事完走となりました。


表彰式は、いす-2GPから始まります。1位「清滝友の会~特攻野郎Bチーム」、2位「高橋本とゆかいな仲間たち」、3位「めざましテレビモアセブン」が表彰されました。


続いて、いす-1GPで会場を盛り上げたパフォーマンスに対して、特別賞が「水島ガス」に贈られました。


いす-1GPの優勝は、107周走った「清滝友の会~特攻野郎Aチーム」でした。賞品のお米90kgとオフィスチェアー「Bezel(ベゼル)」が贈られました。


2位は100周で「清滝友の会~特攻野郎Cチーム」、3位は92周で「岡大天文部」となり、ラグビー部やコクヨなどを抑えて、理系の普通の大学生が入賞したという驚きの結果となりました。


最後は、炭酸水によるシャンパンファイトで終了です。


いす-1GPの結果は以下の通りとなります。


「なかけん」を訪ねると、最後まで完走したチームに送られる完走記録証が手元にありました。途中、仲間が1人けがをして戦線離脱しましたが、諦めずに完走したことでチームの絆が思い出として残ることになりました。


大学から借りてきたいすも無事のようです。


競技大会として真剣に参加してもよし、ネタとして仲間と気楽に参加してもよしと、参加する形は自由に選べます。何よりも仲間と何かをやり遂げた時の感動を味わえることができるのが、1番のポイントです。参加者だけでなく、見ている観客にとっても耐久戦ですので、終わった時の感動は、参加者には及びませんが、十分伝わってきます。5月23日には鳴門大会が、7月19日には山形県新庄大会が行われますので、興味のあるかたは参戦もしくは観戦をして熱い戦いを感じてみてはいかがでしょうか。

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in 取材, Posted by darkhorse_logmk

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