イランに怯えながら行ってみたら人々が公園にテントで寝ていた
「イスラム国」(イスラミック・ステート、IS)を称する組織が活動しているイラクやシリアなどと地理的に近く、ニュースでも名前が出たりすることからあまり治安がいいイメージがないイラン。実際行ってみたら、何に気を付けていいのか分からないくらい、平和な雰囲気が漂っていました。
こんにちは!世界新聞特命記者の植竹智裕(うえたけともひろ)です。世界一周中の僕は現在、18ヶ国目アゼルバイジャンにいます。(赤線は空路、青線は陸路で移動)
僕は今年の2月、イランに滞在しました。
◆イランとは
イランの場所はここ。北はアゼルバイジャン、アルメニア、トルクメニスタンと、東はパキスタン、アフガニスタンと、西はトルコ、イラクと国境を接する、イスラム共和制の国家です。
皆さんは、イランと聞くとどんな事を思い浮かべますか?地理的に最近ニュースで目にする事が多いISが活動しているシリアやイラク、かつてアルカイダが活動していたアフガニスタンやパキスタンなど、政情が不安定な国と近接している事から治安が悪い場所だと思われている方も多いのではないでしょうか?実際に訪れるまでは僕もその一人でした。
しかし、いざ行ってみると何に気を付けていいのか分からないくらい、平和な雰囲気が漂っていました。というわけで、僕が抱いていた先入観とはかけ離れていた実際のイランはどんな所なのかご紹介したいと思います。
◆イランの街はこんな感じ
イランに訪れる前に抱いていた街の印象は土で塗られた建物が並ぶ古い街並みでした。写真はゾロアスター教文化の中心地として知られる中部のヤズド近郊のメイボッドという街。
しかし、どの街でも一歩大通りに出れば、ショーウィンドウにはカジュアルな衣類が並んでいました。これは中部のシーラーズ。
イラン北西部のタブリーズにはスマートフォン屋が並んでいたりして……
他の国の都市と変わらない印象を受けました。これは北東部のマシュハド。
中部のエスファハーンなど、どの街にも古くからバザールがあったり……
モスクもあるのがイランの街の特徴です。エスファハーンのイマーム・モスクは世界遺産にも登録されています。
イランといえばペルシア絨毯。絨毯工房が多いのもイランならではです。写真はマシュハドの工房。
◆至る所にウォールアート
そしてどの街でも見かけるのがウォールアート。
首都テヘランで見かけたウォールアート。こちらは見事にモスクが描かれています。
マシュハドでは壁に窓や扉が描かれていました。まるで街そのものがトリックアート美術館のようになっています。
タブリーズではこんなウォールアートも見かけました。恐らくイラクとの戦争を記念したものでしょう。皆さんが抱くイメージのイランに最も近いのではないでしょうか。
このように歴史的な建物だけでなく、街全体が美術館・博物館のようになっています。これはタブリーズ。
◆イランは気候もバリエーション豊か
僕が抱いていたイランの印象は荒野が広がっているイメージでした。確かに大都市間の街道沿いは荒涼とした大地が広がり、壮大な景色が広がっています。ですが、行ってみて驚いたのは気候のバリエーションの多さ!
僕が越えた北東部のトルクメニスタンとの国境付近は雪山でした。
ヤズド近郊には砂漠もありました。
こちらもヤズド近郊ですが、まるで夏の北海道のような広大な畑だってあります。
そして、南部のペルシャ湾沿いの街に行くと、2月だというのにまるで南の国。ハイビスカスが咲いていて、ほんの数日前まで雪山を見ていたなんて信じられない位の暑さでした。
◆イランの人はとっても気さく
街並みはご紹介した通りですが、一番重要なのはどんな人が住んでいるかです。イランに行ったら3秒で襲われるのではないかと怯えていた僕を待っていたのは、あまりに気さくなイラン人たちでした。街で出会う男性たちは「何処から来たんだ!」「イランは好きか!」「ウェルカム!」と質問を投げかけながら、いい意味で次から次へと襲い掛かって来ます。
一方、女性はというと、イラン国内では髪の毛をスカーフで隠さなければならず、外国人であっても守らなければなりません。街中には真っ黒なチャドルを身に纏った女性が歩いています。一見すると正直不気味な印象を受けますが……
彼女たちも男性たちほど積極的ではないものの、話すきっかけさえあれば気さくに話しかけて来ます。
治安が悪そうなイメージのイラン。もちろん危険が全くないわけではないでしょうが、たとえ夜であっても人気のある大通りを歩く分には誰かが助けてくれると確信できるほどのフレンドリーさでした。
◆イランではこんなものが流行っている
治安が悪そうなイメージのイランで衝撃を受けたのがこちらです。なんとテント!
実はイランを周っていると川辺や公園でキャンプをしている人達の姿をよく見かけます。そんな事してたら強盗に襲われるんじゃ……いえいえ、どうやらそんな事もないようです。
こちらは南部のバンダレ・アッバースにて。海沿いの公園にはおびただしい数のテントが並んでいました。本当に治安が悪い地域であれば、たとえ現地人であってもキャンプはなかなか出来ません。
◆イランから見た日本と東アジア
イランで出会った人からよく言われるのが、下記のような言葉です。
・サッカー選手の名前
・日本車や電化製品のブランド名
・おしん
・一休さん
・キャプテン翼
・水戸黄門
サッカー選手の名前やブランド名を言われるのは他の国でもよくある事ですが、「キャプテン翼」と言われたのは今までで初めてです。これは街で話しかけて来たおじさんが得意げに見せてくれたもの。一休さんの歌が流れるアプリが存在するようです。
逆にダルビッシュ有やMay J.など、イラン系の血を引く日本の有名人はイランではあまり知られていませんでした。
街を歩くだけで何人にも声をかけられるのがイランですが、中には中国人だと思って「チンチョンチャン」とからかってくる人もいて、「日本人だ」と言っても「ブルース・リー!ジャッキー・チェン!」と言われる事も多々あり、更に韓国ドラマの影響から「朱蒙(チュモン)」と呼ばれる事も多かったです。彼らにとって、実は東アジアの文化はあまり区別がつかないのかも知れません。
◆なぜイランは治安が悪いと思われるのか
古代の遺跡や歴史ある宗教施設、大自然など見所も多く、比較的治安も良いイランですが、イランの文化の素晴らしさを伝える旅行番組や特集よりも、周辺諸国のイスラム過激派による悲惨な事件のニュースの方が観る人が多く、印象に残りやすいのも事実です。残念な事に日本では「治安が悪い中東の国のひとつ」という印象が強いのではないでしょうか。この記事を読んで少しでもイランに興味を持って頂けたり、少し印象が変わったと思って頂ければ幸いです。
文・取材:植竹智裕 https://twitter.com/hiro_uetaken
監修:世界新聞 sekaishinbun.net
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