メモ

なぜドルが「$」と表記されるのか?「円」を含む世界の通貨の名前のもとになったものはコレ


アメリカで使用される通貨は「ドル(dollar)」ですが、ドルは記号で「」と表し、大文字の「S」が入っています。「dollar」という文字のどこにも「S」は入っていないのですが、なぜドルは記号で「$」と表記するのでしょうか。

Why Is The Dollar Sign A Letter S?
http://observationdeck.io9.com/why-is-the-dollar-sign-a-letter-s-1683940575


そもそも、「$」はドルを表す記号ではなく、スペインや旧スペイン植民地で使われている、もしくは使われていた通貨「ペソ」を表す記号です。

By Bill Brooks

話はさかのぼり1500年代、ヨーロッパ中央の現在チェコ共和国がある辺りにあったのがボヘミアです。当時の中央ヨーロッパは銀が豊富に採れる土地だったので、数世紀にわたり銀を海外に輸出し、シルクや香辛料のような贅沢品を得ていました。銀鉱石が採れたのはドイツのザクセンやチロル、ボヘミアなどの地域。

チロルでは金が不足してきた際に、銀貨を鋳造して小さな金貨とサイズの大きな銀貨を等価として交換し始めます。この新しく鋳造された銀貨は「グルデングロッシェンコイン」と呼ばれるもので、32グラムの「ほぼ純銀」の銀貨で、これはたちまち地域で広く使われるようになりました。

そして1519年になり、ボヘミアのヨアヒムスタールでも独自の銀貨が鋳造されることになります。ボヘミアで新たに鋳造された銀貨はグルデングロッシェンコインを改良したもので、通貨の重さと銀の純度を、当時ヨーロッパで流通していた通貨の度量衡で割り切れるように微調整したものでした。これが流通しだすと、一気にヨーロッパ中で使用されるようになり、さまざまな地域でこのボヘミア銀貨のローカルバージョンが作られるようになったそうです。このボヘミアで作られた銀貨が「ターラー」と呼ばれる通貨で、この通貨を元にして作られた通貨がたくさん存在します。例えば、オランダのダアルダーやスロベニアのトーラル、さらにはアメリカのドルもターラーから生まれた通貨です。

by Classical Numismatic Group, Inc. http://www.cngcoins.com

豊富な銀からさまざまな銀貨が誕生した中央ヨーロッパも、1530年頃には豊富だった資源に陰りが見えてきます。また、スペインの新大陸発見により、その後300年間に渡って世界中で採掘された銀の85%がボリビア・ペルー・メキシコといった新大陸産のものに取って代わられていきました。こういった時代の流れから、ボリビアやドイツなどでは銀貨を純度が高いまま鋳造するのが困難になっていき、その含有率を少しずつ下げていく羽目になったそうです。

しかし、スペインは新大陸から得られる大量の銀を保有していたので、通貨の銀含有率を下げる必要がなく、安定して長い期間純度の高い銀貨を鋳造できました。当時のスペイン通貨は「ペソ銀貨(スペイン・ドル)」として知られるもので、純度の高い銀貨を安定して鋳造していたおかげで、このペソ銀貨が徐々に国際貿易の場で使用される通貨として、ターラーに取って代わるようになります。

やがて、ペソ銀貨は西インド諸島から極東までさまざまな地域で使用されるようになります。この使用範囲がどれくらい広範囲だったのかは、現在世界中の国々で使用されている通貨の名前を思い浮かべると、その流通具合がよく分かります。例えば、アルゼンチン・チリ・コロンビア・キューバ・ドミニカ共和国・メキシコ・フィリピン・ウルグアイという8カ国では、現在も自国の通貨を「ペソ」と呼びます。これはかつてスペインの植民地であっただとか、貿易でペソ銀貨が使用されていたという背景があるからです。さらに、中国や日本の「元」や「円」といった通貨は、ペソ銀貨の丸い形から自国の通貨名に「丸い形」を意味する「元」や「円」といった名前を付けた、とのこと。なお、ぺソ銀貨が名前の由来になっている通貨は、全て合わせると世界の人口の32%が使用しているそうです。

By Alex Proimos

スペインのペソ銀貨が世界中で流通した後、アメリカでも新たに通貨を作ります。これがドルで、名前はスペインのペソ銀貨(通称、スペイン・ドル)から取って、「ドル」と命名されました。

当時、世界中に流通したペソは「peso」と書くので手書きにはあまり適しておらず、書くのに時間がかかる文字列でした。ペソ銀貨は国際貿易で広く使用される通貨だったので、貿易に関わる人は誰でもペソを使用しており、誰もが元帳に「peso」と書く必要に迫られていました。「&」がラテン文字の「et(英語でandの意味)」から生まれたように、毎日「peso」と書き続ける商人は、単純明快な省略表現を考案しました。まず、「peso(ペソ)」の「P」を複数形にして「Ps」と表すようになり、さらに簡単に書けるように、「P」と「S」を重ねます。この記号が人気を博し、1770年代までには無駄な部分をそぎ落とした、現在のペソ記号「$」にまで発展しました。


前述の通り、アメリカのドルはスペインのペソ銀貨から名前を取っているので、そのまま「$」がペソとドルの両方で使われるようになった、というわけです。

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in メモ, Posted by logu_ii

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