地球を3周した「世界で最も大きな音」とは？

by Ghazaleh Ghazanfari

「音」は空気中の分子が振動し、それが鼓膜に伝わることで認識されます。普段の生活でも騒音に見舞われることがありますが、地球上で記録された「最大の音」とは何なのか、そして「音の限界」とはどこなのか、Nautilusがまとめています。

The Sound So Loud That It Circled the Earth Four Times - Facts So Romantic - Nautilus
http://nautil.us/blog/the-sound-so-loud-that-it-circled-the-earth-four-times

これまで記録されているうち、最も大きな音が発生したのは1883年にクラカトアで大噴火が起こった時。クラカトアはインドネシアのジャワ島とスマトラ島の中間に位置する島なのですが、クラカトアから2000km離れたアンダマン・ニコバル諸島では「銃声のような、並外れて大きな音が聞こえた」と記録され、3200km離れたニューギニアおよびオーストラリア西部では「北西の方角から大砲の音のような大きな音が何度も」聞こえたとされ、約4800km離れたロドリゲス島でも「東の方から遠くで銃声のような音が聞こえた」と伝えられるなど、世界50箇所で火山噴火の音が記録されました。この時の爆音は人間が遠く離れた場所で発生した音を直接耳で聞いた最長距離記録となっています。

by Wikipedia

島そのものの形が変化してしまうほど大きな噴火によって高さ30mの津波が発生し、沿岸沿いにある165の村が破壊されました。オランダが出したデータでは死亡者3万6417人とされていますが、12万人以上が死亡したという説もあります。

音は気圧の変化によって生じますが、クラカトアから100マイル(約160km)離れた所にあるバタヴィア・ガス製造所の記録によると、この時生じた圧力は2.5水銀柱インチで、音圧に変換すると172デシベル以上でした。10デシベル上がると、たいていの人間は音が倍の大きさになったと感じます。人間の聴覚が安全に耐えうる限界は130デシベルほどで、ジェット機のエンジン近くの音圧が120デシベルほどなので、どれほど大きな音だったかということは明らかです。それでは、地球上に響きうる音の限界とはどこなのでしょうか。

by Stuart Cunningham

言葉を発したり鼻歌を歌うことで、人は空気中の分子を毎秒数百回ほど揺らします。音が大きくなると分子の揺れが大きくなりますが、音の大きさにも限界が存在します。地球の大気内での音の限界は194デシベルで、それ以上の音圧は空気を通り抜けられないとのこと。194デシベル以上の音は衝撃波となり、高圧状態の空気を爆発的に押し出すのです。

クラカトアで起こったのは、これに極めて近いことでした。高圧状態の空気が爆風を生みだし、40マイル(約64km)離れた場所にいた水夫の鼓膜を破り、世界中を駆け巡ります。火山から4800km離れたロドリゲス島を過ぎたところで音は急に弱まりだしますが、それでも前進を続け、何日もかけて地球上で響き渡りました。

多方向からやってきた空気圧の関係で、7つのスパイク波形を観測した街も存在し、「音は地球を7周した」とも言われましたが、世界各地にある観測所の記録によると、カラカトアで生まれた圧縮波は地球上を3～4周したと考えられています。また、潮の満干を観測する場所では圧力波と同時に波浪を観測したと言われています。過去に「音」によって波に影響が出たことはなく、音が物理的に世界を動かした瞬間だったと言えます。

by NASA Goddard Space Flight Center

なお、火山の噴火によって圧縮波がどのように生じるのかは、クラカトアに比べてスケールは小さくなるものの以下のムービーを見るとよく分かります。

Volcano Eruption in Papua New Guinea - YouTube


ボートの上から火山を撮影する観光客。

……と、突然火山が噴火。

空気に圧力が加わり、火山上空に雲が生まれています。

ムービーを撮影している人々は火山から離れた場所にいますが、圧縮波はボートにまで届き、噴火が起こってから約13秒後に銃声のような大きな音を記録しています。