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イギリスの対テロユニットがSteamで物議を醸すシューティングゲームの販売中止を要請


2010年にイングランド、ウェールズ、北アイルランドの警察長官協会(ACPO)が設立した、インターネットから違法なテロ関連コンテンツを削除することを目的としたテロ対策インターネット通報ユニット(CTIRU)が、2023年10月7日に「イスラエル国防軍の陣地を襲撃するパレスチナ戦闘員の立場を疑似体験できるゲーム」をイギリスのSteamから削除するよう要請していたことが明らかになりました。

Steam Removes Oct 7 Game at Request of UK Counter-Terrorism Unit
https://www.404media.co/steam-removes-oct-7-game-at-request-of-uk-counter-terrorism-unit/


UK counter-terrorism unit demands Steam withdraw controversial shooter from sale | Eurogamer.net
https://www.eurogamer.net/uk-counter-terrorism-unit-demands-steam-withdraw-controversial-shooter-from-sale

問題のゲームは「Fursan al-Aqsa: The Knights of the Al-Aqsa Mosque」と呼ばれるシューティングゲームで、公式ではゲーム内容について「パレスチナの視点からイスラエルとパレスチナの紛争を扱ったFPS/TPSゲーム。パレスチナ版マックスペインの強化版。史上最もベースのあるゲームです!!!」と説明されています。2022年4月18日にリリースされた本作のジャンルは「アクション」「アドベンチャー」「インディー」「ストラテジー」とされており、開発したのはイスラム教徒のウェブデザイナーでありゲーム開発者でもあるというNidal Nijm Gamesです。なお、「Fursan al-Aqsa: The Knights of the Al-Aqsa Mosque」の販売価格は税込1700円ですが、Steamオータムセール2024では税込578円で購入できます。

Steam で 66% オフ:Fursan al-Aqsa: The Knights of the Al-Aqsa Mosque
https://store.steampowered.com/app/1714420/Fursan_alAqsa_The_Knights_of_the_AlAqsa_Mosque/


「Fursan al-Aqsa: The Knights of the Al-Aqsa Mosque」は2023年に保守系のX(旧Twitter)アカウントであるLibs of TikTokが「プレーヤーは『アッラーは偉大なり』と叫びながらエルサレムの旧市街でユダヤ人を殺害するハマスのテロリストになることをシミュレートできます」と紹介したことで話題となりました。


404 Mediaの報道によると、Steamの運営元であるValveは2023年10月22日にNidal Nijm Gamesに連絡し、「Fursan al-Aqsa: The Knights of the Al-Aqsa Mosque」の販売をイギリスで中止したことを通知しています。Valveの代表者はNidal Nijm Gamesに対して、「イギリス当局からゲームをブロックするよう要請を受け、国別の制限を適用しました」と説明しました。


Nidal Nijm Gamesは「これは残念なことです。皆さんご存じの通り、私のゲームはCall of DutyのようなSteam上で配信されているほかのシューティングゲームとそれほど違いはありません」と述べ、イギリスのSteamでは販売停止となったことに不満を示しました。

これについて問い合わせた404 Mediaに対して、Valveの広報担当者は「イギリスのCTIRUから連絡がありました。CTIRUは地域のあらゆる当局と同様に、どのコンテンツを公開できるかを監督・管理しているため、我々はCTIRUの要請に従わなければなりません」とコメントしたそうです。

CTIRUはロンドン警視庁が運営する組織で、インターネットプラットフォームで報告された「過激派コンテンツ」を調査・削除しています。2018年にはこれまでに31万件の過激派コンテンツの削除に取り組んだと発表しました。CTIRUによると、2018年の1月から11月までの11カ月で約1300件の報告を受けたそうです。

CTIRUの広報担当者は404 Mediaに対して、「CTIRUはさまざまなテクノロジー、ソーシャルメディア、オンラインサービスプロバイダーと緊密に連携していますが、特定のコンテンツや特定のプラットフォームやプロバイダーとのコミュニケーションについてはコメントしません」と回答しています。


ただし、「Fursan al-Aqsa: The Knights of the Al-Aqsa Mosque」は2024年11月初頭に、ハマスによるイスラエルへの攻撃をシミュレーションできる「Operation al-Aqsa Flood Update」というアップデートをリリースしました。アップデートのトレイラーはMEGAにアップロードされており、トレーラーは「爆発ベルトを持っている者はどこにいる?どこにいる?こっちへ来い、爆発ベルトでシオニストたちを爆破しろ!!!」という白黒の文字からスタート。その後、ハマスの戦闘員がモーター付きパラグライダーでイスラエル国防軍基地に着陸し、イスラエル兵を殺害する場面が映し出されます。トレーラーにはハマスの戦闘員がひざまずいたイスラエルの女性兵士の後頭部を撃って処刑する場面も映し出されていますが、Nidal Nijm Gamesはこのような行為をプレーヤーが行うことはできないと説明しました。

Steamの「Fursan al-Aqsa: The Knights of the Al-Aqsa Mosque」販売ページ上ではハマスについて触れられていませんが、プレイヤーが操作するキャラクターはハマスを連想させる緑色のヘッドバンドを着用しており、作戦名やパラグライダーに言及することで、ゲームはプレイヤーがハマスか別のパレスチナ武装グループに所属していることを示唆しています。


「Fursan al-Aqsa: The Knights of the Al-Aqsa Mosque」が特定の地域でブロックされたのは今回が初めてではありません。ドイツとオーストラリアでは年齢制限がないことを理由に販売が停止されています。

Nidal Nijm Gamesは404 Mediaに対して、「イギリスで私のゲームがブロックされたのは明らかに政治的な理由によるものです。彼らは私のゲームが『テロリスト』のプロパガンダだと非難しています」と語りました。ただし、Nidal Nijm Gamesは「そもそも私のゲームをSteamで公開することを許可してくれたことについて、Valveには永遠に感謝しています。Valveは真に創造の自由を尊重する数少ない企業のひとつであり、Valveがゲームを削除したのは現地の法律に従う必要があったためだと理解しています。そのため私はValveやSteamを責めません。責めるべきは、ビデオゲームに腹を立てているイギリス政府と当局です。彼らの誤った論理に従えば、最新のCall of Duty Black Ops 6も禁止されるべきです。プレイヤーはアメリカ兵としてプレイし、イラクに行ってイラク人を殺すのですから。私が言えるのは、イギリス政府にはダブルスタンダードが存在するということです」と語り、Valveではなく削除を要請したイギリス政府を批判しています。

「Fursan al-Aqsa: The Knights of the Al-Aqsa Mosque」を実際にプレイしたという404 Mediaは、「ゲームとしては最悪です。Nidal Nijm Gamesは3Dモデルマーケットプレイスからいくつかのアセットを購入し、イスラエルの国旗を散りばめ、プレイヤーが銃を乱射する単調で面白みのないレベルをいくつか構築したような感じがします。最も基本的なレベルでは機能的なシューティングゲームですが、その主題から離れると、新しいことも興味深いことも何もなく、Steam上にあふれている最低レベルの粗悪品のように感じられます」と評しました。


なお、Nidal Nijm Gamesはハマス戦闘員がイスラエル兵を処刑するシーンを描きながら、実際のゲームでは非武装の兵士を殺害したプレイヤーにペナルティを課している理由について、「このカットシーンはシオニストを刺激して怒らせるためだけに作ったものです。これは現実世界での言論の自由の意味を議論するために作ったものでもあります。Call of Duty:Modern Warfareの悪名高いミッション『No Russian』には皆が納得しているのに、なぜ私のゲームでは許されないのでしょうか?」と語りました。

Call of Duty:Modern Warfare IIの「No Russian」は、プレイヤーがロシアの空港で残忍なテロ攻撃に参加し、数十人の民間人を大量射殺するというもの。このミッションは複数のメディアで問題視されており、ロシア版のCall of Duty:Modern Warfare IIには含まれておらず、日本版とドイツ版ではプレイヤーが民間人を撃つとペナルティが課せられます。

No Russian - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/No_Russian

Nidal Nijm Gamesの主張に対して、404 Mediaは「Nidal Nijm Gamesは間違いなく正当な主張をしています」「アラブ人、ロシア人、その他の国籍の人々が砲弾の餌食としてしか扱われないシューティングゲームは数え切れないほどあります。私のように生涯ずっとビデオゲームをプレイしてきた人なら、おそらく何十万人ものアラブ人NPCを殺したことがあるはずです。イギリス当局が『Fursan al-Aqsa: The Knights of the Al-Aqsa Mosque』を『過激』とみなした理由は、プレイヤーキャラクターがパレスチナ人で、敵がイスラエル兵だからに他なりません」と指摘しました。

404 Mediaは最後に「もう一度言いますが、長年ゲームをレビューしてきた者としての私の専門的な意見は、『Fursan al-Aqsa: The Knights of the Al-Aqsa Mosque』はひどく、悪趣味なゲームです。Nidal Nijm Gamesが指摘しているように、Call of Dutyについても同じことが言えます。Valveは今のところこの2つを区別していませんが、イギリス政府は区別しています」と記しています。

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in ゲーム, Posted by logu_ii

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