クチコミや5つ星レビューの問題点とその解決策とは?
By Tambako The Jaguar
Amazonなどで買い物をする時や食べログなどで食事の場所を探す時に、実際に行った人のレビューや写真を参考にする人は多いはず。一方で、口コミやレビューを有償で操作する業者が話題になったこともあり、必ずしもユーザーによる口コミやレビューは正確な結果を表しているとは言えません。そんな口コミやレビューの限界について、TripExpertが指摘しています。
TripExpert - The Limits of User Reviews: A Study of TripAdvisor and Yelp
http://www.tripexpert.com/articles/limits-of-user-reviews
今では製品レビューがない方が不自然に感じるほどですが、1999年に一般ユーザーがカメラ・書籍・オモチャといった消費者製品のレビューを記入することができる「Epinions.com」の誕生は、当時では画期的なアイデアとされました。Epinionsは2014年現在も運営しており、消費者が意志決定を行う重要な要因となっています。
ほかにもどこで食事をするか?という時には「Yelp」、家電や日常雑貨などは「Amazon」、書籍に迷ったら「Goodreads」、滞在するホテルについては「トリップアドバイザー」があり、医者の選択で参考になる「Healthgrades」など、さまざまな口コミレビューサイトが存在します。ユーザーレビューは人々が製品やサービスに関するお金と時間の使い方の改善に貢献できるだけでなく、レストランのオーナーやメーカーにクオリティを向上させる誘因にもなります。
しかしながら、TripAdvisorで間違って自分自身をスコットランドの「87番目の最高の観光名所」として登録したスコットランドの女性や、タモンビーチ付近ホテルのレビューとして「ビーチの海がキレイだけど砂まみれ」と投稿したハワイの男性など、知識不足のレビュワーの投稿に惑わされることもあるため、ユーザーレビューや口コミは必ずしも正確な結果を生まないことがあります。
◆1:レビューを書く動機
By Ed Yourdon
YelpやTripAdvisorのような口コミサイトにとっては、「誰が、なぜレビューを書くのか?」という傾向を知っておくことが重要です。例えばレビューを書く人々は良い/悪い経験を書き込む傾向があり、肯定的でも否定的でもない単なる「OK」という感想はあまり書き込まれません。多くのレビュー記載方式には1つ星~5つ星を付ける「5つ星レビュー」が採用されていますが、この5つ星レビューは顧客の感じた経験とは無関係に書かれてしまうという問題を持っています。
「ナイトクラブペナルティ」と呼ばれる、TripAdvisorでは有名なクラブやバーが併設されたホテルのレビュー欄に、クラブやバーでの悪い体験が1つ星で書き込まれることがあります。多くはバウンサー(用心棒)が汚く貧相な服装の人や、男性のみのグループの入店を断る差別的な「選択的ドア」を設けているニューヨークのバーやクラブに多いとのこと。要するに、ホテルには一泊もしていないレビューにもかかわらず、「星の数が少ないためにホテルのサービスや料金に問題があるのでは?」という間違った印象を抱くことがある、ということです。
こういったナイトクラブペナルティはホテルに併設されているゴルフ場・カジノなど、全ての施設に当てはまります。ナイトクラブペナルティを明確に区別するだけで、同じホテルのレビューでも以下のように大きな差が出てきます。
TripExpertは「バウンサーによる排除」以外に1つ星が付けられている理由を調査するため、TripAdvisorに登録されているニューヨーク内の447のホテルを調査。1つ星が付けられている内容をカテゴリ分けしたところ、全ての1つ星のうち41%が「サービス」に関するクレームであることが判明しました。この割合は高級ホテルであるほど高くなる傾向にあり、最大で46%まで変動します。
ニューヨークで最高のホテルと言われるThe St. Regisでは以下のように、「スタッフがぶっきらぼうで愛想が良くなかった」という理由で「二度と来ない」というタイトルの1つ星レビューが投稿されています。
サービスの質はもちろん滞在先を決定するにあたって重要な要素の1つですが、TripAdvisorの「ホテル選びでは何を重視するか?」という調査によると、最も重要視されていたのが「立地:30%」で、次に「ベッドの快適さ:29%」、3番目に「従業員のサービス:24%」という回答結果が出ています。人によって重要視する要素が異なるため、単に「1つ星」だけで判断するのは難しいかもしれません。
また、滞在するホテルの宿泊料が金額に見合う価値であるかどうかも重要なポイントですが、時に高評価のレビューが「過度な期待」を持たせてしまうことがあります。TripAdvisorで99ポイントと評価され、ローマで人気ナンバー1のホテルはAppia Antica Resortです。清潔な部屋のベッドサイドには各国の言葉で「お休みなさい」と書かれていたり、スタッフが非常に親切であると評価されています。
TripExpertでローマナンバー1と評価されているホテルは、スペイン階段のすぐそばに豪華な庭園を併設したHotel De Russieですが、TripAdvisorではいくつか1つ星レビューが付けられており、「高価すぎる」「期待外れ」という内容。1泊10万円近くするためハネムーン旅行などで利用するホテルであるため、「一生に一度の特別な出費」としては高評価を得るものの、単なる旅行用途としては低評価になる、ということがあります。
◆5:偽装レビュー
By Romain Ballez
日本でも問題になったレビュー偽装による高評価の獲得ですが、YelpやTripAdvisorでも同様のことが起きているとのこと。いくつかの概算によると全体の40%にのぼると見られており、カリフォルニア大学バークレー校の研究によると、レビュー星が0.5星追加されるだけで、最も人気のある時間帯の売上げが13%~34%増加するという結果が出ており、(PDFファイル)ハーバード・ビジネス・スクールの研究では1つのレビュー星の追加が収益の5~9%の増加につながる、としています。
Fiverrのようなクラウドプラットフォームでは、ホテルやレストランに向けてレビュー星を1つあたり25セント(約25.5円)で販売しており、レビュー偽装は格安であるとのこと。YelpやTripAdvisorは疑わしいレビューを自動的に選別して調査・削除可能な、機械学習によって成長する優れたアルゴリズムを導入していますが、こういったシステムをだまし抜くためのトリックシステムに膨大な資産をかける企業も多く存在するため、いたちごっこの状態です。
◆6:人口分析
By Simon Greig
いくつかの口コミサイトでは、レビューを書く人の人口統計が偏っているため、正確性に欠けてしまうことがあります。例えば、Yelpではレビューを書く人のうち女性ユーザー層が少なくとも60%を占めると見られていますが、女性は男性に比べてダイエットや健康への配慮に関心が高く、アメリカにおけるベジタリアン・ヴィーガン(完全菜食主義者)の女性割合は79%になるとのこと。そのため、男性と女性の関心の違いによってレビュー評価に差が出てしまうことが考えられます。ニューヨークで高評価を得る移動販売型シナモンロール専門店The Cinnamon Snailは、有機食品を売りにしており、ヴィーガンに人気のお店ですが、肉食主義の人がレビュー星の数だけを見て食べると物足りなく感じるかもしれません。
◆TripExpertの解決策
5つ星レビュー評価システムには多くの問題点があったわけですが、多くの人はレストランやホテルを選ぶ時に全てのレビュー投稿を読むことはできないため、総合評価として星の数を参考にしがちです。そこでTripExpertは、正確なホテルのレビューをユーザーに提供するための解決策として、ロンリープラネット・Frommer's・Travel + Leisureといった、トラベル系ウェブサイトや出版社のデータを使っており、20の異なるプロのライターのレビューを組み合わせることで、正確なホテルのクオリティを提供しており、要するに、本当はさまざまなレビューを事細かく検討すべきなので、単一的な視点だけではなく、いろいろな基準で総合的に判断するべきである、というわけです。
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