スピード違反者の車に制限速度超過を物理的に阻止する「インテリジェント・スピード・アシスト(ISA)」を取り付ける法案が可決

「インテリジェント・スピード・アシスト(ISA)」とは、GPSなどを使用して道路の制限速度を特定し、車が速度超過しないように働きかけるシステムのことです。アメリカでは一部の州で、無謀なスピード違反者の車にISAを取り付ける法案が可決されています。
Virginia will use technology to slow chronic speeders’ cars—and other states are rushing to join in - Fast Company
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スピード違反は交通安全を脅かす重大な問題であり、スピード違反者が起こした事故に関係ない車の乗員や歩行者が巻き込まれ、死亡する事例は後を絶ちません。アメリカでは2022年だけで、スピード違反に伴う事故で約1万2000人が死亡しており、中でも制限速度を20マイル(約32km)以上超える「Super-speeders(スーパースピーダー)」は壊滅的な被害をもたらします。
警察による取り締まりが行われているものの、すべてのスピード違反者を特定・摘発することは難しく、たとえ摘発されても事故を起こしていなければ罰金や免許停止などで済まされてしまいます。また、アメリカ政府が資金提供した(PDFファイル)調査では、免許停止中の人々の約75%が運転を続けていたこともわかっています。
そんな中で注目されているのが、ドライバーによる速度超過を積極的に阻止するISAです。ISAはGPSやデジタルマップ、標識認識技術などを組み合わせて走行中の道路の制限速度を識別し、その速度を超過した際にドライバーへ働きかけるというもの。製造中の車だけでなく、製造後の車に取り付けることも可能だそうです。
ISAにはいくつかの種類があります。「パッシブ」なISAは速度超過した場合にドライバーへ警告を発するだけですが、「アクティブ」なISAは速度超過時にアクセルペダルへ働きかけ、それ以上の加速ができないようにブロックするとのこと。
すでにEUでは、2024年7月7日から新規登録車に対してISAの搭載が義務づけられていますが、このISAはドライバーに速度超過を知らせる「パッシブ」タイプのものです。
EUが自動車のスピード違反防止システム「ISA」を義務化 - GIGAZINE

近年、アメリカ国内でもISAを義務化する機運が高まっており、2024年にはカリフォルニア州のスコット・ウィーナー議員が「カリフォルニア州で販売されるすべての新車にパッシブISA搭載を義務づける法案」を提出しました。この法案はカリフォルニア州議会の両院を通過しましたが、ギャビン・ニューサム知事が拒否権を行使したため成立しませんでした。
ウィーナー議員の法案はすべての新車を対象にしたものでしたが、適用範囲をより狭く「無謀なスピード違反の前歴を持つ人々が所有する車に対し、速度超過を物理的に防ぐアクティブISAを搭載する」という法案も検討されています。
2024年にはワシントンD.C.で、スピード違反者へのアクティブISAの搭載を認める法案が、アメリカで初めて可決されました。2025年春にはバージニア州でも、時速100マイル(約160km)を超えたスピード違反者に対し、裁判官がISAの設置を要求できるようにする法案が成立しました。
記事作成時点ではワシントン州の議会でもISA設置法案が可決されたほか、アリゾナ州やカリフォルニア州、ジョージア州、メリーランド州、ニューヨーク州などの議会でも同様の法案を検討されているとのことです。

アメリカでは政治的な二極化が進んでいますが、ISA法案には超党派の支持が集まっています。政治的な観点から見ても、「無謀なスピード違反をしたドライバー」のみに焦点を当てることは、すべての新車を対象にした包括的なISA法案よりも受け入れやすいといえます。
大幅なスピード違反をするドライバーはほんのわずかであるため、法案が可決されたとしてもほとんどの住民に直接的な影響はなく、危険なドライバーから自分たちや愛する人々を保護できます。また、自動車業界としても、すべての新車にISA導入を義務化されるよりもマーケティング上の問題が発生しにくいため、法案に反対する可能性が低いとのこと。
ISA法案の擁護団体であるFamilies for Safe Streetsの代表であり、自らもスピード違反の事故で息子を失っているエイミー・コーエン氏は、「私たちは、あなたの車を没収しろと言っているわけではありません。ただ、無謀な運転をしてはいけないと言っているだけです。あなたは目的地まで、安全にたどり着かなくてはなりません。そしてその道中で、誰も殺してはいけないのです」と主張しました。
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