サイエンス

ケーブル伝いに宇宙へ、ロケットに替わる「宇宙エレベーター」実現への展望


以前は単なる夢物語としてとらえられていた宇宙エレベーター(軌道エレベーター)の構想ですが、カーボンナノチューブが発見されたことが実現への大きな転換点となりました。宇宙開発が始まって以来、多くの燃料を燃やして宇宙へ飛び出す「化学ロケット」に頼るしかなかった宇宙への道に新たな道筋をつけることになりそうな宇宙エレベーターの実現には、どのような展望が開けているのでしょうか。

Can Quiet, Efficient 'Space Elevators' Really Work? | Space.com
http://www.space.com/24739-space-elevator-tether-technology.html

宇宙エレベーターは、地球の地表から宇宙に向けて延ばされたケーブルに沿ってゴンドラが上下することで、宇宙へ物資や人を届けることができる輸送手段です。実現のために必要なケーブルの長さは10万km。一般的な旅客機の高度が10km(1万メートル)、スペースシャトルや国際宇宙ステーションが地球を周回する低周回軌道の高度が250~500km、そして気象衛星などの静止衛星が浮かぶ静止軌道でも高度3万6000km程度であることを考えると、とてつもなく長いケーブルが必要ということになります。


「そんなに長いケーブルだと、地球の重力に負けて地表に落ちてきてしまうのではないか」という意見もありますが、逆にその長さがケーブルに遠心力を与え、常に地球から宇宙に向けて引っ張られた状態にすることで、釣り合いを取るように計算されています。ただし、それほどの大きな力を受け止められる素材が以前は存在せず、実現に向けての大きな障壁となっていましたが、1991年にNEC筑波研究所に在籍していた飯島澄男教授によってカーボンナノチューブが発見されたことで、構想は大きく前進します。従来の金属に比べ、同じ重量あたりの引っ張り強度が1000倍にも及ぶという「軽くて強い」カーボンナノチューブ素材を使用することで、実現に向けての大きな山を越えることができたと言われています。


宇宙エレベーターの概念は古く、1895年に当時のソビエトの科学者であるコンスタンチン・ツィオルコフスキー氏によって考案されたことが最初と言われています。それ以来、1世紀以上にわたって多くの科学者や技術者が実現に向けて研究を重ね、近年の研究によりかなり実現が具体的になってきたと国際宇宙航行アカデミーのマダヴァン G. ネア会長は語ります。

宇宙関連のニュースを取り扱うSpace.comを率いるピーター・スワン氏は「宇宙エレベーターはもはやSF小説に出てくる話ではありません。近年の研究を見ていると、その念を強く感じます」と語り、映画「2001年宇宙の旅」の原作者であるSF作家のアーサー・C・クラーク氏も2003年の時点で「宇宙エレベーターは、それを笑う者が居なくなってから10年のうちに建設されるだろう。そして今ではもう誰も笑う者はいなくなっている」と記しています。

By Bruce Irving

国際宇宙エレベーターコンソーシアムの会長でもあるスワン氏は「問題は、それが『いつ』なのかということです。科学は常に進歩を続けています。私たちは将来かならず宇宙エレベーターが実現すると信じています」として、以前よりも研究を真剣に捉える人が多くなってきたことを強調しながらも、「それでも解決しないといけない課題は山積みです」と語りました。

スワン氏によると、宇宙エレベーターの実現には「カーボンナノチューブ」と並んで「太陽光パネル」の技術が鍵になってくるとのこと。地上と宇宙を往復するゴンドラは太陽光を電力に変換して動力とする仕組みになっているため、その効率は非常に重要と言います。近年の技術発展には注目を続けており、今後の活用を検討しているとのことです。

By erek Gerstmann

実現に向けての原動力としては、政府によるサポート、民間企業、そして国家プロジェクトとしての形態があり、スワン氏は「そのいずれもが実現可能ですが、肝心なのは『資金』『動機』そして実現させるという『強い思い』です」と語りますが、現在の段階では民間業による研究が中心であると考えられています。

スワン氏によると、宇宙エレベーターの優位性はもはや従来の化学ロケットを上回っているとのこと。宇宙エレベーターは基本的に荷物の形状や重量の制限がなく、一週間程度の旅程で静止軌道上へと到達することが可能です。従来のロケットは自身の質量のうち94パーセントを打ち上げ時の燃料として消費することを考えると、その優位性は明らかと言っていいのかもしれないほどです。スワン氏は「いつの日か『以前は宇宙ロケットというモノを使っていたよね』と笑う日が来ることでしょう。宇宙エレベーターこそが、宇宙への道の答えとなるのです」とその展望を語っています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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