サイエンス

渡り鳥が「V字隊列」を保って体力を温存する本当のメカニズムとは

By Trish

渡り鳥をはじめとする鳥の多くが群れで空を飛ぶ時にアルファベットのV字形で隊列を組むことがありますが、これはエネルギーを節約してより長い距離を飛ぶためだといわれています。なぜV字隊列を組むとエネルギーを節約できるか、その詳細なメカニズムには不明な部分が残っていましたが、そんな謎をロンドン大学の調査チームが「鳥と一体になって」詳細な調査を行って明らかにすることに成功しました。

New research proves that birds in V formation arrange themselves in aerodynamically optimum positions
http://www.rvc.ac.uk/News/PressReleases/pr1401-birds-flying-in-V-formation.cfm


Why do birds fly in a V? Endangered ibis reveals its amazing secret - latimes.com
http://www.latimes.com/science/sciencenow/la-sci-sn-birds-v-formation-flight-northern-bald-ibis-nature-bioinspired-20140115,0,3808246.story#axzz2qVXaOus6

V is for vortex : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/v-is-for-vortex-1.14507

調査を行ったのは、ロンドン大学、ロイヤル・ベタリナリー・カレッジ(獣医学)のSteven Portugal博士です。博士は、動物保護団体の協力を得て絶滅危惧種に指定されているホオアカトキの体にGPS・加速度センサーを取り付け、飛行中の隊列内での位置関係と羽ばたきによって生じる上下動のパターンを分析して、そのメカニズムを解明しました。


◆羽ばたく翼の周りに発生する空気の流れ
鳥は、翼を上下動させることによって空気を押し、体を宙に持ち上げて前に進みます。この時、空気には翼によって下へと押しやられる流れ(下降流)が生じると同時に、その翼の端には下降流とは逆に上へ向かう流れ(上昇流)が発生します。これは「翼端渦流」と呼ばれ、鳥と同じように空気の力で空を飛ぶ飛行機の翼でも同様の現象が起こっています。

By cesar harada

この翼端渦流が発生させる上昇流をうまく捉えると体を持ち上げる力が発生するため、飛ぶために必要なエネルギーが少なくて済むようになります。これが鳥がV字編隊を組んで飛ぶ理由となっているのです。V字編隊を組んで大西洋を渡るペリカンに心拍モニターを取り付けて計測したところ、最前方を飛ぶ個体よりも後方を飛ぶ個体のほうが心拍が低く抑えられているという調査結果がでていることからも、この効果は明らかです。

By Michel Bakkenes

しかし、飛行機とは違って鳥の場合は翼を上下させているため、発生する上昇流は翼の動きに合わせて変化(脈動)することになります。上昇流の力を得るためには、脈動する空気の動きに合わせて翼を動かす必要があるため、なぜ鳥がその力を利用することが可能なのかは明らかにされていませんでした。その謎を解明すべく、Portugal博士はホオアカトキの編隊飛行を上空で詳細に観察すると同時に、GPSセンサーのデータを活用することで詳細に分析しました。



◆先行する鳥との位置関係と時間差
隊列の動きを詳細に確認するためには、その隊列に加わることが一番。そのためPortugal博士は、小型のマイクロプレーンに乗ってホオアカトキの隊列に加わり、その動きをリアルタイムで観察することにしました。約45分間にわたってその動きを記録し、その中で最も安定してV字編隊を保っていた7分間のデータに着目しました。


その様子を収めたムービーがYouTubeで公開されています。

NPR: The Science Of The "Flying V" Formation - YouTube


上昇流を生かすためには、脈動する上昇流の波が最大限に達するタイミングで自分の翼を羽ばたかせる必要があります。いわば、見えない空気の波に合わせて翼を動かす必要があるのですが、そのためには前の鳥との距離と羽ばたきのタイミングを正確に把握する必要があります。Portugal博士がホオアカトキに装着されたセンサーによって得た高精度なGPSデータと加速度データからは、隊形は約1.2メートルの間隔を常に保ち、翼の羽ばたきの角度は前方(および後方)のホオアカトキに対して平均で45度の遅れを保っていることが分かりました。


Portugal博士は「前方の翼が巻き起こした上昇流を予測(もしくは感知)する能力と、それを活用して流れに乗るという高い対応能力がホオアカトキに備わっていることを示しています」と語ります。先頭を飛ぶ鳥の羽ばたきは一定しておらず、羽ばたいている時もあれば、翼を広げて滑空する時もあります。後続の鳥はその動きに合わせ、最も効率の良いタイミングで空気の波をつかんで楽に飛ぶという能力が備わっているということが明らかになりました。Portugal博士は、この結果は鳥形ロボットを隊列飛行させる際にも応用できることになりかもしれないと語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
130万羽もの渡り鳥が集まって飛び立つ瞬間をとらえた衝撃の写真 - GIGAZINE

トラクターに恋をした白鳥 - GIGAZINE

モサドのスパイの疑いがあるハゲタカが捕まる - GIGAZINE

49機のクアドロコプターを使用して夜間の編隊飛行に成功したムービー - GIGAZINE

スペースインベーダーのような編隊飛行をするクアッドローターのムービー - GIGAZINE

チワワもブルドッグも等しくウナギイヌにしてしまう恐るべき犬用おもちゃ - GIGAZINE

飛べない豚は泳げばいい、家に帰るために1.6キロを泳ぎ切った子豚たち - GIGAZINE

洗濯物を干すためのワイヤーで懸垂に励むシジュウカラの写真 - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.