北朝鮮出身者が明かす、北朝鮮での給料や仕事を得る方法とは？

小さい頃から政府のプロパガンダ教育を受けて育つ北朝鮮の子どもは、将来の夢について考える事もできず、ただ政府が指示した仕事に就くだけ。北朝鮮の子どもは高校を卒業する際、専用の用紙に就きたい業種を3つ記入しますが、卒業生はそれがただの形式に過ぎないことを理解しています。男性は高校を卒業したらすぐに軍に入隊する義務があり、男性ではなく女性も「背が高い」などの体格に恵まれている場合は軍に入隊。

By Matt Paish

軍に入隊しなかった人は工場に配置されますが、その配置基準で考慮されるのは「自宅から工場までの距離」のみで、能力などは一切関係ありません。一度配置されれば転属することは不可能。そもそも転属しても仕事内容や給料が変わらないので、転属を希望する人はゼロという状況です。

「職業選択の自由がない」というただでさえ劣悪な雇用環境は、配給システムが崩壊したことで悪化の一途をたどります。工場が生産をストップしても、労働者に一切の補償が支払われることはありませんでした。

2013年現在、北朝鮮で最も人気のある職場は「外貨を取り扱う機関」です。具体的には、北朝鮮資源を輸出して政府のために外貨を得ている機関のことで、この機関で働く人には十分な配給と給料が与えられるとのこと。その背景には「外貨を取り扱う機関」のほとんどが政府などの権威を持った組織の傘下にある、という事実があります。

By Zhimin Pan

しかしながら、「外貨を取り扱う機関」で働いている人の多くは、政府に何らかのコネを持っている人たち、もしくは富裕層の人であるため、一般の人が就職するのはほぼ不可能。

安定した給料や配給を得られる仕事への需要が高まるにつれて、北朝鮮では贈賄が流行しているとのこと。贈賄にもステップがあり、まずは役人を買収して地元の行政機関から、個人情報記録を盗んでもらいます。次に、政府傘下の工場の責任者や党書記を買収して「自分を雇うための確認書」を作成してもらいます。最後に、作成した確認書を行政機関に提出して無事に就職できるというわけです。

また、北朝鮮の軍部で10年以上働いていた人は、新しい仕事に就くチャンスを政府から与えられますが、その中でも運の悪い人は大規模人材を必要とする国家プロジェクトなどに出向させられるとのこと。金正日総書記が存命であったころ、住人が少ないもののジャガイモ農業が盛んであった両江道(リャンガンド)に、何千人もの元軍人が送り込まれたことがありました。元軍人たちは、それまで政府関係の機関で働いていたにも関わらず、農民としての人生を強制されたのです。

By Taylor Sloan

このとき、両江道に大量の男性を急に送り込んだことで、地域では女性不足問題が発生。政府は適齢期の女性を募集しリャンガン州に送り込みましたが、女性の数は足りず、今でもリャンガン州には未婚の男性が大勢いるそうです。

Yoonさんは「北朝鮮の社会システムが崩壊している今、速やかに古いシステムを破棄し新しいシステムを取り入れるほうがいいでしょう。また、新しいシステムには若い人が夢を持てるような雇用制度が取り入れらるべきです」と北朝鮮の現状を心配しています。