「鉱山優先」で街と人のほうを移転させる決断を下したスウェーデンの都市「キルナ」


北欧の国スウェーデン北部、北極圏に位置する都市キルナは、古くから鉱業で栄えてきた街です。そんなキルナでは今、市街地の一部をそのまま別の場所へと移動させるという一大プロジェクトが進められています。

BBC - Travel - Why Sweden is relocating an entire town
http://www.bbc.com/travel/story/20171102-why-sweden-is-relocating-an-entire-town

スウェーデン政府による公式YouTubeチャンネル、その名も「Sweden」では、キルナで進められるプロジェクトを描いたムービーが公開されています。

This is Kiruna: How to Move a City - YouTube


北緯68度に位置するキルナは、完全に北極圏に位置する人口2万3000の都市。かつては「世界で最も面積が広い都市」の称号を手にしていましたが、1970年の行政区改革の際に面積が減少してしまったために、オーストラリアのマウントアイザ市に次ぐ世界第2位へと陥落してしまいました。


北極圏といえば夜でも太陽が沈まない「白夜」と、その逆で昼間でも太陽が昇らない「極夜」。冬になると、お昼のランチタイムでもこの暗さ。


さらに、春になっても雪に覆われきった状態が続きます。


この街には、古くから残る風景が受け継がれています。人の集まる広場の脇に立つこのお店「Centrum」は……


親子4代にわたって綿々とこの場所で営業を続けてきました。


キルナの繁栄の源、それは街にほど近いところにある鉱山です。純度が高く、世界でもトップレベルの品質を持つ鉄鉱石「スウェーデン綱」が産出されるキルナ鉱山は、スウェーデン国営企業「LKAB」によって運営されています。1900年初頭に鉱山が開かれた時には地表を掘り広げる「露天掘り」が行われていましたが、近代に入ると地下深くへと掘り進める方法へと転換。2000年代に入る頃にはその深さは地下1000メートルにも及んでいます。


しかし、掘削が進むにつれ、街では少しずつ地盤が沈下するという悪影響が生じてきました。そのままでは人々の生活が成り立たなくなりますが、一方で世界有数の良質な鉱山をあきらめるわけにもいきません。そこでスウェーデン政府は、鉱山がもたらす潤沢な資金をもとに、街の一部を移転させてしまうという決断を下しました。


その計画は以下のようなもの。矢印が書かれている部分に広がる市街地を鉱山から離れた場所へと移転させ、新しい街の中心部を作ります。


今ある生活が失われてしまうということで、当初は住民から圧倒的な反対の声が挙がったとのこと。しかし、立ち退きを迫られる住民には今住んでいる家をLKABが市場価格の25%増しで買い取り、さらに移転後も生活レベルは一切落とさないという条件が示されたことで計画が受け入れられることとなったそうです。

移転が決まると、住民のいなくなった建物は壊され、新しい場所に次の家が建てられます。しかし、それだけではないというのがこの計画の興味深いところです。

住民の中にはなんと、今住んでいる家をそのままトレーラーに乗せ、新しい居住地へ運んでしまう人も。


日本でも重要文化財などの建物がそのまま移転されることはありますが、一般の住宅をそのまま移動させるというのはスウェーデンでも非常に珍しい模様。


もちろん、移転にかかる費用も全てLKABが負担するとのこと。豊富な資金をつぎ込み、できるだけ多くの住民の要望をかなえるという方向性は評価に値するものといえます。


移転対象の建物の中には、全て木で建てられた貴重な教会「キルナ教会」も含まれています。もちろんこの建物もそのまま移転することになっているとのこと。


当局では街の移転を2020年前後に本格的に実施することを予定している模様。あまり聞いたことがない街を丸ごと移動させる計画がどのように進むのか、興味をそそられるところです。

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