世界的に広がりを見せる「プア充」世代が作る社会に向けての考え方とは

By epSos .de

高収入を追い求めずそこそこの生活レベルを保って暮らしていければ満足する「プア充」と呼ばれる生き方が日本で関心を集めていますが、これは日本だけの現象ではないようです。アメリカではジェネレーションYと呼ばれる世代や、1980年代から2000年初頭にかけて生まれたミレニアル世代などは、その消費欲の低さや上昇志向の弱さが問題視される一方で、日本の「プア充」のように社会との新しい関わり方を見いだそうとしているようです。

The Cheapest Generation - Derek Thompson and Jordan Weissmann - The Atlantic
http://www.theatlantic.com/magazine/archive/2012/09/the-cheapest-generation/309060/1/?single_page=true

自動車会社のフォードは2009年、アメリカ市場向けに小型車「フィエスタ」をヨーロッパから上陸させた時に、ある取り組みを行いました。それは「100人の影響力のあるブロガーに6ヶ月間にわたって乗ってもらい、ブログにその感想を率直に書いてもらう」という画期的なものでした。ブロガーたちはフィエスタを気に入りブログにアップしましたが、フィエスタの売上げは18か月で9万台と目標を下回るものでした。これは、フォードの戦略が間違っていたということではありません。フォードが採った戦略は、アメリカの自動車会社を悩ませている「消費欲の低いミレニアル世代にどうやって自動車を買ってもらうか」という課題に向けての取り組みの一つなのです。

By Nacho

ミレニアル世代は、かつての親の世代ほど車に関心を持っていません。2010年、全米で販売された新車の27パーセントは21歳から34歳の世代によって買われたものでしたが、1985年のデータは38パーセントというもので、大きく下落したことを示しています。さらに、一人あたりの運転マイル数も減少し、運転免許保有率も1998年から2008年のあいだに28パーセント下落しています。

この傾向を解消するために、自動車業界の巨人ゼネラル・モータース(GM)も取り組みを行っています。GMでグローバル戦略マーケティングを担当する31歳のJohn McFarland氏は「若者が車を買うことに興味がないとは思っていない」と語ります。また、スバルのパブリシストのDoug O’Reilly氏は「まだ誰もミレニアル世代のことを理解できていない。われわれは彼らとの『心のつながり』を取り戻すことに取り組んでいる」と語ります。フォードは、ソーシャルメディアの活用を強め、ミレニアル世代が信頼を置くメディアチャンネルを活用しようとしています。

しかし、これら自動車メーカーの戦略には「ミレニアル世代が本当に自動車を持ちたがっている」という大前提が横たわっています。メーカーの考え方は「経済が少しずつ回復すれば、親の世代と同じように車をほしがるようになる」や「アピール手法が正しければ、自動車を買ってもらうことができる」というものですが、その前提は正しいのでしょうか?ミレニアル世代が自動車を買わないのは経済が原因ではなく、考え方そのものが変化しているためだとしたら、どうなるのでしょうか?

By Tim Evans

これまでの典型的な家庭の場合、家計の半分は自動車と家賃によって占められていました。しかし、ミレニアル世代はそのような古いタイプの考え方には背を向けています。ミレニアル世代への自動車販売は落ち込みを見せており、人生で初めてのローンを車の購入で組む人の割合は10年前に比べて半分になっています。これにはもちろん、景気の悪さが影響を与えているのも確かです。しかし、ガソリン価格の高騰や郊外化、低賃金、そして新しい消費の形態がミレニアル世代のスタイルを変化させているのは間違いないことです。

もはや、親の世代と同じようにお金を使ったり、ものを買うということはないといえるでしょう。第二次世界大戦以降、新車や郊外の一軒家を購入することが世界で1番強いアメリカの経済を支えてきましたが、ミレニアル世代は車や一軒家のどちらにも興味がないのです。

By Jay Williams

2000年にカーシェアリング会社のZipcarが創業した時のガソリン価格は1ガロンあたり1.5ドル(1リッターあたり約50円)でした。もちろんその頃にiPhoneはありませんでした。そんなZipcarは、今や70万人の会員を持つ世界最大のカーシェアリング会社となっています。その成功には2つの要素があり、1つは「ガソリン価格の高騰」そしてもう1つが「スマートフォンが生活に浸透し、カーシェアリングが身近になったこと」です。「シェア経済」の最たる例ともいえるZipcarですが、世界規模で空き部屋をシェアするAirbnbや子供服をシェアするthredUPなどのサービスが成長している事実を忘れることはできません。一昔前までは考えにくかった自動車や部屋、そして子供服のシェアリングですが、テクノロジーがそれをメインストリームに育ててきたのです。

一般的な自動車の価格は3万ドル(約300万円)もするのに、1日のうち23時間はガレージの中に停められたままです。Zipcarはこのような使われていない自動車の活用方法を提供し、自動車を所有することはミレニアル世代の優先順位から大きく落とされていったのです。

By jay joslin

しかし同時に、それは新しい視点をもたらしてくれるともいえます。「車を介さない繋がり、テクノロジーを通じたソーシャルな繋がりが生まれている」と、前出のO’Reilly氏は考えています。言い換えれば、テクノロジーがもたらしたのはカーシェアリングの進歩だけではなく、距離を隔てた人と人との繋がりを可能にしたのです。その結果、自動車からモバイル機器へのシフトが続き、業界の停滞をもたらすことになったのです。

これまでの典型的な住宅のモデル像は「郊外の一軒家」でしたが、この考え方にも変化が訪れていると言います。「人びとは、アメリカ的郊外と都市生活のいい点をブレンドしようとしている」と不動産コンサルト会社RCLCOのマネージャーAdam Ducker氏は語ります。カリフォルニアのCulver Cityやイリノイ州のEvanstonのような、歩いて行ける範囲内にいろんな店が存在し、公共交通機関が発達した街があり、そのような街では、小さな住居が選ばれる傾向があるのです。2007年のRCLCOの調査によると、ミレニアル世代の43%は、住居や自動車の必要性が低い都市近郊に住みたがっているという結果が出ています。

全米不動産協会のShannon Williams King副会長は「ショッピングセンターには徒歩で行ける距離に住み、自転車や自動車はシェアすることで済ませたいと思っている。他の人と『繋がっていたい』という欲求があるのです」と語り、住宅業界の将来像は、自動車業界と同じように、「小さく・安く」と新しい経済に沿ったものに変わっていくことになりそうです。

By Sabrina S

これまでは、住宅産業が不況からの脱出を牽引してきました。1980年台中盤の景気交代時に連邦準備金制度が金利を下げた際には、住宅建設ラッシュが起こって「レーガン・リカバリー」が起こりました。しかし、住宅市場が停滞している状況では、金利政策による経済刺激は期待できないといえるでしょう。さらに、小さな都市の建設には手間がかかり、必要な家具や設備は少なくなるため、付随する産業に与える影響も少なくなってしまいます。

「世界には、ドイツのように住居所有率が低いのに健全な所得を挙げている国もある」とアーバン・インスティテュート図書館の特別研究員であるRobert Lerman氏は語ります。言い換えると、自動車や住宅に向かわなくなったお金の新しい使い道が生まれるということです。Milken InstituteのPerry Wong氏は「教育こそがミレニアル世代にとってのお金の使い道だ」と語り、今後はモノではなく自分自身に投資することになると考えを述べています。Wong氏は「過去においては、住宅が投資の手段でしたが、教育がその役目を果たすことになるでしょう。知識経済においては、最新の知識こそが資産になるのです」と語ります。さらに、都市の密集した生活に移行することで、経済は成長する可能性を持っている可能性があります。調査によると、コミュニティの人口密度が2倍になると、その生産能力が6~28パーセント向上するということが分かっています。

By Jonathan Strauss

社会の豊かさは個人のスキルや才能だけではなく、私たちを取り巻く「知識」へのアクセス性の高さよって定義されるのです。究極に言えば、ミレニアル世代が社会をシェア化の方向に推し進めていくと、アメリカの消費文化そのものを変化させることになるでしょう。そしてそれは次の世代の経済を強くするものとなるだろう、とコラムは将来への展望を語っています。

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