津波から命を守る「Tsunamiball」をアメリカ人デザイナーが制作中
「防災シェルター ノア」「サッカーボール型住宅 バリア」「たすかプセる」などの多くの避難用シェルターが開発され、「津波の非難先になぜ地下が提案されないのか? 」という議論なども起こったりしていますが、遠く離れたアメリカ・カリフォルニア在住のデザイナーがその名も「Tsunamiball(津波ボール)」という避難カプセルを開発しています。
Tsunamiball | Adventures in designing and building a tsunami-proof boat
http://tsunamiball.com/
開発を行っているのは、パロ・アルト在住のデザイナー、Chris Robinsonさん。
しかし、パロ・アルトといえばカリフォルニア内陸部にあり、海からは20km以上も離れている場所のはず。なぜChrisさんはTsunamiballを作ることにしたのでしょうか?
きっかけになったのは、2011年に起こった東日本大震災。災害の様子を知ったことで、いかにして家族を守ればよいかを考えるようになったそうです。まず思い浮かんだのが、「巨大なピンポン球に家族ごと入る」というものでした。
最初にこのプロジェクトを知人に話したところ、「反応はひどいものだった(笑)」と笑顔で語っています。
参考にしたのは、Tom Chudleigh氏が考案したFree Spirit Spheresや……
防災シェルター ノアも含まれていました。
しかしChrisさんは「球体ではなく、ボートにする必要がある」と考えて考案したのが、「Tsunamiball」でした。
製作は2011年12月にスタートしました。
◆2011年12月
アイデアをもとに、まずは段ボールで模型を作って構造のチェック。
◆2012年3月
次に、合板をコンピューター制御のCNCマシンでカットして、部品を作っていきます。
その部品を組み立て。
この「Tsunamiball」は、すべて木で作られているのです。
木製とすることに反対する声も挙がったそうですが、Chrisさんは「鉄製だと重く、日々のメンテナンスが大変だ。グラスファイバー(FRP)製は確かに軽くて耐久性も高いけど、製造の際にFRP繊維が飛散し、子供たちの健康に影響を与える。だから僕は安全な木で作ることにしたんだ。ただの木ではなくて、薄い木を60枚貼り合わせた合板でできているから、強度もかなり高い」と語っています。
船体の骨組みパーツができました。かなり巨大。
このパーツをいくつも作って……
貼り合わせることで、球面部分を作っていきます。
パーツが完成しました。このパーツが、船体の前と後ろに装着されます。
◆2012年8月
胴体部分は別に作成します。Chrisさんの家の庭に作られた造船所。
中は人が立てるぐらいの大きさです。長さ約6.8メートル、幅約3.1メートル、高さは約2.5メートルあります。
◆2013年2月
骨組み部分が完成しました。ここから外板の取り付け作業です。
細切れの木を重ね合わせていきます。この作業はかなり大変とのこと。
本体部分にもぺたぺた。この部分は直線上になっており、比較的楽だったそうです。
◆2013年4月
ようやく船体半面の外板が貼れました。
しかし、より強度を高めるために、さらに層を重ねます。
この曲面に合わせて貼るのが大変。
◆2013年7月
完成しました。しかし、しかし、下半分はまだ骨組みがむき出しのまま。
◆2013年8月
本体ごと、車輪に乗せてぐりぐりと……
そのままひっくり返してしまいました。この作業だけでじつに二日間を要したとのこと。作業中は、足場にヒビが入るなどかなり大変だったようで、ブログでは「終わったよ!!みんな無事だよ!!」と、喜びの声。
これが現状の姿だそうです。
予定では、2013年度中に完成させる予定となっているそうで、完成後にまずはプールでの初期テスト、問題がなければ海に浮かべて耐久テストを行う予定だそうです。
下記では、Chrisさんがおこなったプレゼンの様子を見ることもできます。
Ignite San Francisco 6: Chris Robinson, "Tsunamiball" - Ignite San Francisco
http://ignitesanfrancisco.com/HDaHF/ignite-san-francisco-6-chris-robinson-tsunamiball/
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