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チェルノブイリ原発を「石棺」ごと巨大なシェルターでスッポリ覆う作業が開始、5日間かけて全体を移動

By European Bank for Reconstruction and Development

1986年に「史上最悪の原発事故」を起こしたチェルノブイリ原子力発電所があるウクライナで2016年11月14日、原子炉を覆っている「石棺」を含む原発施設を丸ごと巨大なシェルターでさらに覆う作業が開始されました。シェルターは幅275メートル、長さ162メートル、高さは108メートルもあるもので、総重量は3万6000トンにも及ぶ巨大な構造物となっています。

Major step in unique engineering project as Chernobyl arch slides into place
http://www.ebrd.com/news/2016/major-step-in-unique-engineering-project-chernobyl-arch-slides-into-place-.html

Chernobyl disaster: Giant shield begins move towards reactor - BBC News
http://www.bbc.com/news/world-europe-37978482

建造されたシェルターの全体像。コンクリートと鉄で造られており、上面はなだらかなアーチで覆われています。

By European Bank for Reconstruction and Development

シェルターを正面から見たところ。石棺の形状に合わせて開口部が作られており、最終位置に到着すると前面のフタのようなものが閉じられる仕組みになっている模様。また、シェルターはアーチの根元にあるレールに載せられており、全体が移動できるようになっています。

By European Bank for Reconstruction and Development

内部は鉄骨構造になっていることがわかります。

By European Bank for Reconstruction and Development

シェルター建設中の2015年9月に撮影された内部の様子。いかに巨大な建造物であるかがわかります。

By European Bank for Reconstruction and Development

1986年4月に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故は、4つあった原子炉の1つが制御不能に陥って核燃料のメルトダウン(炉心溶融)が発生し、原子炉が爆発して大量の放射性物質が大気中に放出されるという極めて重大な事故でした。

By European Bank for Reconstruction and Development

放射性物質の飛散を防ぐために、事故後には「石棺」と呼ばれるコンクリート製の建造物が急ピッチで作られました。しかし、事故から30年を経て老朽化が目立っており、今後は石棺そのものが崩壊する危険も指摘されていました。さらなる被害を防ぐべく、今後何世代にもわたって全体を覆うために建造されたのが、今回の巨大シェルターというわけです。

By European Bank for Reconstruction and Development

シェルターと石棺の位置関係や大きさがよくわかる1枚。この状態からシェルター全体が移動して石棺をスッポリと覆います。

By European Bank for Reconstruction and Development

3万6000トンのシェルターを支えて動かすレール部分

By European Bank for Reconstruction and Development

シェルターには油圧ジャッキが横向きに取り付けられており、少しずつ全体を押しながら移動させる仕組みとなっています。

By European Bank for Reconstruction and Development

ジャッキを作動させて実際に移動を開始した様子が、以下のタイムラプスムービーに収められています。

Major step in unique engineering project as Chernobyl arch slides into place - YouTube


以下のムービーには、シェルターの建設が進められている現場の様子や、廃墟と化したチェルノブイリ原発の内部の映像などがまとめられています。

Authorities at Chernobyl Prepare to Seal off Reactor Building With New Steel Structure - YouTube


このプロジェクトは、欧州復興開発銀行(EBRD)を主とする出資者からの予算によって進められており、総費用は15億ユーロ(約1700億円)にのぼります。4日間かけてシェルターを移動させ、2016年11月29日までに設置を完了させる計画となっているとのこと。ウクライナのオスタプ・セメラク環境相はこのプロジェクトについて「1986年に発生した事故から続いてきた30年にわたる戦いの終わりが始まりです」と語っています。また、EBRDは巨大シェルターの建設と設置は「工学史上、最も野心的なプロジェクトの一つ」だとしています。


EBRDのFlickrでは、工事全般の様子やチェルノブイリ原発の資料写真などを見ることができます。

EBRD Project: Ukraine - Chernobyl Nuclear Power Plant | Flickr
https://www.flickr.com/photos/ebrd/sets/72157635398132162

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in メモ,   動画, Posted by darkhorse_log

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