夫は妻が忙しくしている方が健康的に暮らせるという研究結果が明らかに
夫婦共働きの家庭が日常生活を送る中で分泌しているストレスホルモンの推移を調べたところ、夫は妻が家事などで忙しくしている方が健康的な状態にあるという結果が出たそうです。
男性は家で1人でいる時にリラックスしている傾向があるため、妻がバタバタしている方がかえって落ち着けるということのようですが、妻の方も夫が家事をしている時にストレスホルモンが低下したとのことで、夫婦が同時に安らげる時間というのはなかなか訪れないのでは……と思わせる内容となっています。
家庭生活でのストレスを詳細に調査した結果と、それを受けた各専門家の分析は以下から。Men relax best when wives are busy - USATODAY.com
夫婦共働きの家庭では、妻は夫が家事を手伝うことでストレスレベルが低下する傾向があり、一方で夫は妻が家事などで忙しくしていればいるほどリラックスできるという研究結果が明らかになりました。
この研究は2004年~2006年にかけて、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の家庭における日常生活を対象とした研究施設にて行われたもので、ロサンゼルス在住の夫婦30組を対象に、日々の行動とストレスホルモンの推移を記録しました。
ちなみに、ほとんどの夫婦は2~3人の子どもと暮らしていました。結婚してからの期間は平均して13年が経過していて、平均年齢は41歳。夫婦の行動調査の期間は4日間で、平日2日と休日2日に行われたとのこと。
4日間と聞くと短いように感じますが、調査の内容はストレスに反応して分泌される副腎皮質ホルモンのコルチゾールを測定するため、10分おきに被験者にだ液のサンプルを作成してもらい、それを回収して録画しておいたビデオテープを元に、コルチゾールの値と一日の行動を照らし合わせ検証するというかなり手間のかかりそうな内容。それとは別に面接を行い、各人の健康状態についてもヒアリングも行いました。
コルチゾールの値が高いということはストレスの多い状況であるとも考えられていて、睡眠や体重、免疫系の働きに影響を及ぼします。この場合、コルチゾールの値は急激に下がったほうがより健康的であるという判断を元に、仕事の後にどのような形でコルチゾールの値が低下していくかというところに着目して数値を分析しました。
すると男女問わず、自宅で家事を多く行っていると、一日の最後に測定したコルチゾールの値が高い数値を示しました。男女別に傾向を見ていくと、妻は夫が家事を積極的に行っている時に、コルチゾールの値が健康的な範囲にとどまっていたとのこと。夫の側からすると、妻が家事をやっていてあまり余暇を過ごしていない状態で自分には自由な時間があると、コルチゾールの値が低下するという傾向があったそうです。
「これまで行われていた被験者の自己申告で得たデータを集める研究とは異なり、今回のストレスに関する研究は被験者を直接観察して行われています。生物学的なストレスレベルをおよそ1週間にわたって測定し、膨大な情報を統合した結果でもあります」と、研究施設のリーダーである人類学者のElinor Ochsさんは今回の研究が優れていると主張します。
過去に同施設で行った研究では、仕事で受けたストレスは家でリラックスしてテレビを見たり、趣味に没頭したりすることで解消されているはずだという結果が出ていました。今回の結果は、自宅でのストレスレベルは家事やパートナーの状況に大きく左右されることを明らかにしたと言えるかもしれません。
「男性は、自宅に帰ると自室で1人になるのを好み、一方で女性は帰宅後は子どもと過ごしていることが多かったです。そして面白いことに、一人きりで家にいる時に、男女問わず家事に取りかかる傾向がありました。男性はおおむね一人で過ごしている時の方がリラックスしているようです。」とOchsさんは付け足しました。
南カリフォルニア大学で心理学の博士号を取得している、この研究の第一著者であるDarby Saxbeさんは、「誰かが代わりに家事などの作業を行ってくれていることで安心がもたらされるようです。夫が子どもの宿題を手伝っていたり、妻が洗濯物をたたんでいたりするのを見届けてはじめて、そのパートナーは心から休むことができるのだと思われます」と今回の結果を分析しています。
また、オハイオ州立医科大学の行動医学研究所にて精神医学と心理学を研究しているJanice Kiecolt-Glaserさんは、今回の研究の成果を見て、「男性は家族と関わっていない時に最もストレスを解消できている」という分析結果を導き出しています。Glaserさんは「夫が家族と関わっていないということは、妻は言外に『夫の助けは必要ない』というメッセージを出しているのです。妻が忙しくしていることで、夫は自由な時間を過ごすことができます」とも付け加えています。
しかし、研究の基準として使われたコルチゾールの値について、オハイオ大学のDario Maestripieri教授は「コルチゾールの値の高低は個人によって異なるので、ベースラインをしっかり定めてから、その上下を計ることが肝心です。コルチゾールの値が高いことがすなわち不健康だということにはなりません」という見方を示しています。
ごく最近行われた類似研究では、妻の方が家事を積極的に行い、夫はその間余暇を過ごしている傾向が強いという結果も出ているようです。
家事に夫婦がどう向き合っていくか、というのは永遠の課題のようです。
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