日本向けiPadはSIMロック版であることをソフトバンクの孫正義が明言

by Danny Choo

5月10日に予約開始された際に、ソフトバンクモバイルのみで利用できるSIMロック版であることが明らかとなり、物議を醸したAppleのタブレット端末「iPad」ですが、なんとAppleの最高経営責任者であるスティーブ・ジョブズが問い合わせに対して、「日本向けiPadにSIMロックは施されていない」という驚くべき回答を行ったことで、混迷を極める結果となりました。

しかしソフトバンクの孫正義氏が日本向けのiPadについて、SIMロック版であることを明言しています。

詳細は以下から。
ｉＰａｄのＳＩＭロック理由は「戦いの武器渡せない」　孫社長がネット番組で　 (1/2ページ) - SankeiBiz（サンケイビズ）

産経新聞社の報道によると、ソフトバンクは原口一博総務相が2015年までに国内の全4900万世帯にブロードバンド通信回線を100％普及させる「光の道」構想をテーマに、世界最高水準に達しているブロードバンドの普及ではなく、生活に直結した使いやすいサービスやネットが国民生活の社会的基盤となっていくような政策を推進することの重要性を訴えるジャーナリストの佐々木俊尚氏と孫正義氏が対談形式で実施する生中継を5月13日20時から14日の1時までUstreamで行ったそうです。

孫正義氏

佐々木俊尚氏

対談の様子

番組で孫正義氏は28日から発売される予定の「iPad」に自社のSIMロックを施す理由について、ソフトバンクはNTTドコモやKDDIといった競合他社と異なり、総務省から携帯電話用の800MHz帯を割り当てられておらず、「少なくとも公平な競争環境にない」とした上で、「ハンデキャップがある分、新しい文明の利器や違う切り口で戦う」と述べたとのこと。

なお、その代わりに同社は今後、Googleの携帯電話用OS「Android」を採用したスマートフォンや多機能情報端末をSIMフリー端末として販売する方針を示していますが、iPadをSIMフリー端末として販売するタイミングについては「確約できない」として明言を避けています。

対談の内容については、以下のリンクで書き起こされています。（5月14日12:10現在、アクセスしづらい状況となっています）

【書き起こし.com】孫vs佐々木対談「光の道は必要か？」1 孫正義プレゼン | 書き起こし.com :: Ustream / ニコ生/PodCast

ちなみにソフトバンクモバイルが現在手がけている携帯電話事業は、かつて日本で展開されていたvodafoneの携帯電話事業を2006年に買収したものであり、さらにさかのぼると日本テレコムの「J-PHONE」となるわけですが、買収が決定する以前はソフトバンクが自社で携帯電話事業に新規参入をすることを検討していました。

携帯電話事業の新規参入にあたっては電波が通りやすく、エリアの整備コストが抑えられるとされる800MHz帯の割り当てを希望していたソフトバンクですが、総務省が新たに空いた800MHz帯をNTTドコモとKDDIに対して優先的に割り当てる方針であることを不服として2004年に総務省を相手取った行政訴訟を起こすなど、800MHz帯の割り当ては同社にとっての悲願であることがうかがえます。

しかし、NTTドコモは基地局同士の干渉や、1つの基地局にユーザーからのアクセスが集中することを避ける目的で電波が飛ばないようにする必要があるため、都市部では800MHz帯の基地局も2GHz帯の基地局と同様に基地局をきめ細かく設置していることを挙げて、800MHz帯が有利であるというソフトバンクの主張に「大きな違いはない」と反論しており、その上でソフトバンクが整備している2GHz帯の基地局数についても、NTTドコモが整備している2GHz帯の基地局数よりも少ないではないかと指摘するなど、両者の意見は対立しています。

つまり「800MHz帯が割り当てられない現状は公平な競争環境ではなく、そのためにiPadにSIMロックを施す」という孫正義氏の主張は、iPadへの通信サービスの提供を検討していたNTTドコモから異論が出かねない内容ということのようですが、はたしてNTTドコモは何らかのアクションを起こすのでしょうか。日本向けモデルについて「SIMロックを施していない」と回答したスティーブ・ジョブズの真意も気になるところです。