取材

広大な敷地にそびえ立つ倉庫群、劇団四季を影で支える「四季演劇資料センター」に潜入してきました~前編~


劇団四季といえば日本全国に劇場を所有、台詞劇・ミュージカル問わずさまざまな演目を上演している日本有数の劇団。その華やかな舞台を影で支えているのが、長野県にあり、一般に公開されている「四季演劇資料館」と非公開の倉庫群である「舞台美術保管庫」で構成される「四季演劇資料センター」です。

広大な敷地の中にはいくつもの巨大な倉庫がそびえ立ち、のどかな風景とは違った一種独特の雰囲気を放つその場所に潜入、一般には公開されていないその内部を特別に見せてもらいました。前編では「エビータ」という演目の荷下ろし(劇場から倉庫へセットを運び、格納すること)と倉庫群の中を見せてもらいました。

信濃大町駅に到着。ここから四季演劇資料センターまではタクシーで15分ほど。


駅前のロータリーの向こうにはすぐ北アルプスが。


駅からの道のりはこんな感じ。結構な距離があります。


四季演劇資料センターに着きました。なぜ長野県にこのような施設があるのかというと、もともと劇団四季の稽古場が信濃大町にあったことがきっかけ。市の施設の建設デザインを提供したことなども関係して自治体との関わりが深く、また、ちょうど日本の中心に位置する土地でもあったことから、大規模な倉庫群を建設することになったとか。一般向けの施設として「四季演劇資料館」を作ったのは、市からの観光資源として貢献してほしいと要望もあったようです。


スタッフルームのあるC1棟。


多くのスタッフが出入りするため、注意書きがラミネートされて掲示されていました。


朝のミーティングの様子。倉庫管理の責任者からスタッフに申し渡しなどが行われます。


作業の心得「安全十訓」。これは四季独自のものではなく、Amazonでも購入可能なプレートのようです。


プリンターの機種が変わったなど、細かい連絡事項がはられているホワイトボードも。


白樺と山脈がいかにも長野らしい風情をかもしだしています。倉庫はかなり大規模で工業的ですが、周囲はけっこうのどかな雰囲気。


ミーティング後、スタッフは持ち場へ向かいます。


倉庫は相当な大きさです。


雪深い地域なので、一般的な建築の何倍もの強度を持たせて作られています。また一般道に大量の雪が落ちて交通の妨げになるのを防ぐため、敷地内へ雪が落ちるように屋根の形が工夫されています。


ここから見えているのは倉庫のほんの一部で、上の写真の倉庫群とはまた別のもの。こちら側にあるのは新しい倉庫だということで、屋根は従来のものより低く取られ、面積が広くなっています。当初は6棟だったのが、現在は14棟の倉庫が建てられているそうです。17年前にはスタッフルーム付近にあった倉庫だけが建てられていて収納スペースとしては充分だと思われていたものの、海外作品のロングラン公演が増えたことなどが影響して、たったの3年で埋まってしまったということ。例えば有名な「オペラ座の怪人」はトラック50台分にもなるというから、その大がかりさがよく分かります。


ガードレールが隅っこにずらっとありました。


東京・浜松町の自由劇場からトラックが到着。2010年3月14日(日)まで公演が行われていた「エビータ」の荷下ろしが始まります。


ぎっしり舞台セットが積まれています。


輸送できるようにパーツごとにばらばらにできるようになっているため、ぱっと見ではどんなものか分からない部分が多いです。


基本的には人力でえっさほいさと担ぎ出します。


フォークリフトも使用しますが、今回見せてもらった荷下ろしでは人の手の方が多く動いていた印象。いろいろな形状のパーツがあるため、機械では運び出しにくいのかもしれません。


よいしょ、とばかりに大勢で運びます。


よいしょよいしょ。


かなり大きいパーツも人力で運びます。


少しわかりにくいですが、このシーンで後ろに写っているのがこの壁のセットです。

by 山之上雅信

やはり大きいものはいったん倉庫前に並べておくようです。


舞台では明かりをともして揺らめいていた燈台


台車に載せられて次々と運ばれていきます。


劇中で印象的に使われる扉は一枚のパーツで構成されていました。


倉庫の中に格納。


素材感が印象的なパーツ。


板状のものはラックに入れて管理されるようです。


徐々に整理されていきます。


製作現場の熱気が想像できるような、力強く書かれた演目名。


白いテープの上に、どこに使用するパーツかというメモがされています。


自由劇場は劇団四季の所有する中では小さい劇場に入るのですが、それでもこれだけのボリューム。


倉庫はとにかく広く、抜けのある広大な空間が広がります。


すでに格納されている過去の公演のセットを見せてもらうことに。WSSというのは「ウェストサイド物語」の略称。演目名をはじめとして、よく使う単語はアルファベットの頭文字で略されています。


印象的な色の壁。


同じ演目に使われたものはぎっしりと詰めて置かれています。


かなり高い格子。


クレイジー・フォー・ユー」のパーツ。1994年に全国公演(劇団内では「旅」と言われている)した際のパーツなどが保管されています。「いらない」とメモ書きされてはいますが、物によっては再利用することもあるので念のため保管しているそうです。


「いらない」とは思えない作り込みなのですが……。


どどんと積まれています。


A10倉庫に突入です。


この空間はただ空いているわけではなく、舞台と同じ状態で最終チェックをするためのスペース。奥に見えるカーテンで区切っている部分は、使う劇場ごとに違う広さを調整するための間仕切りだということです。


照明も設置されています。


電気のスイッチ脇には節電の呼びかけ。節約の精神が徹底して取り入れられています。


舞台装置を電動で動かすモーター類も膨大な量。


2階に上がったところ、隅に段ボールが積まれていました。


舞台装置を組み立てるためのクレーンも。組み立てに必要な条件が完備されています。


リフトの最大積載量はすごい重さになります。ほぼ1トン搭載可能。


A4倉庫に移動


ホームセンターの木材加工場のような作業現場。


普段の生活ではまずお目にかからないような加工機械がどっさり。


大工さんでも使わないのではないかと思うくらいたくさんの工具・道具類がそろっています。


舞台で使う幕は袋に入れて管理されています。「文字幕」は舞台上部の照明などを隠すための細長いもので、袖幕は舞台袖の中が見えないように遮るものです。


バッテリーも多く活用するようです。これは「クレイジー・フォー・ユー」でリムジンのライトに使われたそう。


ずらずらと並んでいます。


これは「サウンド・オブ・ミュージック」のためにキープされている機材。ここからはB-2倉庫になります


今春に初上演となる舞台だからなのか、たくさんの機材がキープされていました。


いろんな人が出入りしているため、箱に名前をつけて識別できるようにしているそうです。例えば、この箱を持ってきて欲しい時は「太郎取ってきて!」と言うわけです。


こちらは「もずく」。別に箱の名前は人名に限らないようです。


サツマイモの皮のような色だけど名前は「まつたけ」


こちらは「サザエ」さん。


「すずカステラ」。特に法則性はなく、フリーダムに名付けられている様子。担当の方の好物なんでしょうか。


ケーブル類だけでこの量。


照明機材もずらっと並んでいます。


まるで陳列されているかのような整列ぶりです。


広大な倉庫は大変寒く、今回の取材中も屋外の方が温かいという場面が何度もありました。この底冷えを少しでも解消するためのヒーターです。


A1倉庫へ。


他の小道具類とはちょっと違う、ファンシーな雰囲気を放っているイチゴのケーキの作り物。「CATS」のイベントで使われたものだということです。


「CATS」で使われている小道具のゴミもしまわれていました。


ネコたちの目線で見たゴミの大きさを再現するため、実際の約3倍の大きさで作られています。サイズの違いをわかりやすくするためiPhoneと比べてみました。


ビンも尋常ではない大きさ。これらも全て手作りで、わざと汚した風にペイントするなど工夫がされています。


倉庫群を一段下になった場所から見上げると、ものすごい迫力が。これらすべてが演劇のための機材・セットのために使われているのだから、いかに劇団四季が大規模に展開をしているのかがよく分かります。


後編では「エクウス(馬)」の荷出し(倉庫から劇場へセットを運び出す)様子のほか、まだまだある倉庫の中をどんどん紹介していきます。また、取材当時は冬期閉館中だった「四季演劇資料館」の中も特別に見せてもらいました。

・つづき
広大な敷地にそびえ立つ倉庫群、劇団四季を影で支える「四季演劇資料センター」に潜入してきました~後編~ - GIGAZINE

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in 取材, Posted by darkhorse_log

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