公正取引委員会からGIGAZINEに封筒が届きました
普段あまりニュースを見ないような人でも「公正取引委員会」という名前は聞いたことがあると思います。この組織は、名前の通り経済で自由な取引が行われるように独占禁止法を運用すべく設置された機関で、ソフトバンクモバイルやイー・モバイルが行っていた「0円」広告が不当表示ではないかと調査したり、JASRACに排除措置命令を出したりという活動を行っています。
いったい、どのようにして公正取引委員会はこの調査を進めているのだろうと常々思っていたのですが、どうやら公正な取引保護のため、名簿から無作為抽出した下請事業者に連絡して協力を依頼しているらしいということが明らかになりました。この書類が届いた=自分の会社が独占禁止法違反、ではなく、周囲の会社へ調査を行っているから協力してくれということのようですが、果たしてその調査とはどんなものなのか、実際の書類をご覧ください。
なお、この分類でいうところの下請事業者に当てはまる人はこの設問の選択肢をチェックし、自分が下請法違反な行為を行われていないかどうか確認した方がよいかもしれません。
詳細は以下から。
まず、封書が「公正取引委員会事務総局 経済取引局 取引部 下請取引調査室」から届きます。これは実際に先日、GIGAZINEに届いたもの。
中身はこんな感じ。調査依頼書、回答用紙、返信用封筒が同封されています。
回答用紙の表側。自分の会社情報を記入し、後述の質問に対する回答をボールペンで塗りつぶしていくという形式。「今回調査対象の親事業者」のところには実在するある企業名が入っています。
回答用紙裏側、選択肢に当てはまらなかった事項についての自由記入欄となっています。また、赤線が引いてある部分には「親事業者に対して実際に調査を行う場合には、情報源が親事業者に決して知られることのないよう十分に注意して行っておりますので、安心してありのままの事実を記載してください。」とあります。さらに、一番下には公正取引委員会が平成20年度には親事業者2964社に是正を求める措置を行い、下請代金の減額を行っていた親事業者50社に対して29億5133万円を下請事業者2022名に支払うように命じたという実績も書いてあります。
そしてコレが「親事業者との取引に関する調査について」。下請代金支払遅延等防止法(下請法)を運用する公取委が調査対象事業者(親事業者)との取引について、親事業者の下請事業者名簿から無作為抽出で選んだ会社に対して調査を行っていると書かれており、重ねて「貴社の親事業者に知らせることは一切ありません。」「この調査の目的以外に使用することは一切ありませんので、ありのままの事実を回答してください。」と書かれています。また、「親事業者から回答内容について指示を受けたり、回答用紙の写しを提出するよう求められたりした場合」は公正取引委員会事務総局の各地方調査室や下請課へ連絡せよとのこと。
「回答作成前にお読みください」。これまでに何度も登場した「親事業者に対して調査を行う際には、決して情報源が知られることのないよう十分注意していますので、安心してありのままの事実を回答してください。」という文章がもう一度登場しました。
今回の調査は下請法に基づいたものなので、まずは親事業者が「法律上の親事業者」に該当するかどうかをチェック。取引内容が「物品製造(加工を含む)」「修理」「情報成果物の作成」「役務の提供」の4種類のいずれにも該当しない場合は親事業者はなしとなります。
ここからが設問です。下請法のそれぞれのポイントについて、親事業者に問題があるかどうか細かくチェックしていく形。まずは「発注書面の交付について」。親事業者は発注の際に「発注内容」「下請代金額」「支払期日」など必要記載事項をすべて記載した書面(注文書や契約書)を交付する義務がありますが、それをちゃんと履行しているのかチェック。口頭のみで発注を行った場合や、単価を記載していない発注書面を交付した場合は下請法違反です。
「下請代金の支払制度について」:親事業者が「請求書提出が遅かった」「事務処理が遅れた」などの理由で期日までに代金を支払わなかった場合は下請法違反です。そんなケースがなかったかどうか、具体的な選択肢をあげ、親事業者が該当していないかどうかじっくりチェック。
「下請代金の額の決定方法について」:親事業者は通常支払われるべき対価と比べて不当に低い代金を定めることが禁止されており、一方的に代金額を決定する場合は下請法違反のおそれがあります。「下請代金の減額について」:下請事業者に責任がないとき、事前合意があっても親事業者は名目・方法・金額の多少を問わず代金を減額した場合、下請法違反となります。
「発注内容の変更・やり直しについて」:下請事業者に責任がないとき、親事業者の都合で追加作業を行わせ、その費用を負担しない場合は下請法違反となります。「経済上の利益提供要請について」:親事業者が決算対策として下請事業者に協賛金を負担させることは下請法違反です。
「物の購入要請・サービスの利用要請について」:正当な理由なしに、親事業者が製品の販売促進のために下請事業者に製品を購入させたり、取引先の依頼に応じて下請事業者にサービスを利用させることは下請法違反です。
役務の提供のみ請け負っている場合、回答はここまで。物品製造などを請け負っている場合はさらに以下の設問へと続きます。
「受領(納入物の受取り)拒否について」:親事業者の都合で下請事業者に対する発注を取り消して納入物を受領しなかった場合は下請法違反です。「返品について」:発注書面通り納期を守ってちゃんとした製品を納入したにもかかわらず返品するというのは下請法違反です。
「有償で支給した原材料の決済時期について」:親事業者が下請事業者に原材料を有償で支給した場合、その原料を用いた品の下請代金支払期日よりも早い時期に材料代を決済することは下請法違反です。さらに、金型関連の業務を行っている会社は、金型の製造委託についてもここまでの問いと同様に下請法が適用されるので内容を確認する必要があります。
これですべての設問がおしまい。回答用紙に記入するか、e-Gov(電子政府窓口)から解答すればすべて完了です。
こうやって地道に回答を集めて調査を行っているのですね……。
公正取引委員会
http://www.jftc.go.jp/
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