世界最初のマウスから最新のマウスまで、知っておいて損はないマウスの歴史
マウスのメーカーとして世界的に有名なLogitech(日本法人はロジクール)によると、本日、10億台目のマウスを出荷したとのこと。10億台目になったということは最初の1台目があり、さらには原型となる「世界最初のマウス」もあるわけで。上の画像が世界最初のマウス&そのマウスを考え出した人で、なんとこの世界最初のマウスから40年以上が経過しているそうです。
というわけで、世界最初のマウスからワイヤレスマウス、トラックボール、レーザーマウス、現在の最新鋭技術の粋を凝らした空中で操作可能なマウスに至るまで、知られざるマウスの歴史に迫ってみましょう。
詳細は以下から。たぶんWikipediaとは違う方向で詳しいので、これであなたもマウス通になれるはずです。
Logitech(日本法人: ロジクール)、10億台目のマウスを出荷
世界初のマウスを作り、その機能を知らしめるためのデモを行ったのがこのダグラス・C・エンゲルバート氏。現在は83才となっており、まだご存命です。(※2013年7月2日に腎不全のため死去、88歳でした。)
これが世界初のマウス
1962年の論文でエンゲルバート氏は、画面上のアイテムを自由に動かすことのできる「ポインタ」に言及しており、彼が最初に「コンピュータマウス」というものを思いついたのは、この論文を書く前の年のある会議でのこと。彼はこのデバイスの絵をノートに記していました。
1963年にNASAが、画面選択デバイスを何にするかを決めるプロジェクトに資金を提供すると発表、エンゲルバート氏はこの「マウスについてのアイディア」を書き留めたノートを探し出し、研究所のエンジニアの一人ビル・イングリッシュに渡し、製作してもらったというわけ。デバイスは使い勝手に関するNASAのすべてのテストに合格、コンピュータによるAugmentation Research Centerの共同作業ではこのデバイスが重要な要素になったとのことです。
見てわかるように、世界初のマウスは木でできた箱のようなデバイスで、基部に取り付けられた2つのローラーが垂直方向と水平方向の動きを追跡するようにできています。上部に赤いボタンがひとつあり、後部からコードが延びたこのデバイスをエンゲルバートの研究所のだれかが「ねずみ」みたいだと言ったため、それ以来「マウス」という名前が定着したとのこと。が、今日までその名付け親が誰であるか定かではないそうです。
エンゲルバート氏は「このデバイスが世に出れば、いずれもっと重々しい名前が正式に付けられると誰もが思っていました」と語っており、まさかこのようなことになるとは想像だにしていなかったそうです。
1967年、エンゲルバート氏によって「表示システムのためのX-Y位置指示機」という特許が出願され、1968年12月9日についに公に「マウス」が公開されました。ちなみに、この際に行ったデモは「Mother of all Demos」(あらゆるデモの母)と呼ばれている90分間の公開ライブデモンストレーションとなっており、マウス以外にも「ハイパーテキスト」「オブジェクトアドレス指定」「動的ファイルリンク」、さらにはネットワークを介して音声と映像の両方でコミュニケーションを取りながら画面上で行う共同作業(ビデオ会議)のデモンストレーションも行ったとのこと。つまり1968年の時点で今のパソコンやネットに関する様々なアイディアは既に出現していたというわけ。
これがそのデモを行ったサンフランシスコのブルックスホール。およそ1000 人の参加者をアッと言わせたそうです。
エンゲルバート氏と遠方にいるSRIの同僚がネットワークで接続され、ショッピングリストを共同で編集している様子の写真。
1981年、ディック・ライアン氏とスティーブ・カーシュ氏が「光学式(オプティカル)マウス」と総称される2つの新しいマウスを発明。これらの初期の光学式マウスは、点や線の模様が記された特殊なパッド上で操作するもので、翌年の1982年にはついにLogitech初のマウス、「P4」が発表されています。
これがその「P4」
1983年1月、Appleがマウスを使用する初のグラフィカルユーザーインターフェイスを搭載した9995ドルのApple Lisaコンピュータを発表。さらに1983年5月2日、Microsoftが「Microsoft Mouse」を発表。
これがそのマウス。2つの緑色のボタンが付いていたため、一般には「緑色の目をした」マウスと呼ばれていたそうです。価格は195ドル。
1984年、Logitechはヒューレット・パッカード社(HP)と初のOEM契約を締結、HPのハイエンドワークステーションの付属品としてLogitechのマウスを出荷。
名前は「HP Mouse」で、これがその写真
なお、1984年には既にLogitechがMetaphor用のOEM製品として初の「コードレスマウス」を開発。このマウスは赤外線(IR)技術を使用しており、4本のニッカド電池で駆動するというものだったそうです。ただ、コンピュータに接続されているIRレシーバーの方に直接向けられている必要があり、データ転送速度はコード付きマウスよりも劣っていたそうです。
1985年、Logitechは「Logimouse C7」という名前のマウスによってリテール市場に参入。当時、マイクロソフトのマウスは179ドルであったのに対して、Logitechのマウスは99ドルという価格だったので、新境地を開拓したと言われたそうです。このマウスは18ヶ月で開発されており、コンピュータのRS232ポートから電力を得る初のオプトメカニカルマウスで、それまで別途必要であった電力供給が不要になっているというのがポイント。
これが「Logimouse C7」。その3つ目のボタンにより、単純なポイント&クリックだけでなく、複雑なコマンドも実行可能。
1987年、マイクロソフトがエルゴノミクスデザインを初めて採用した曲線形状のマウスを発表。このマウスは棒状せっけんに似ていたので、一般に「Dove bar」と呼ばれ、その後マイクロソフトのマウス製品の主流となったそうです。
こんな感じのデザイン
さらに同年、LogitechがMacintosh用のカスタムマウス、「Apple Macintosh Plus Mouse」の製造を開始。
アップル独特のあのボタンが一つしかないマウスですね
1991年、ついにLogitechがRF無線テクノロジーを使用した初のワイヤレスマウス「MouseMan Cordless」を発表。高価な3V、1.3Ahのリチウム電池を使用していたそうです。
これが実物。ワイヤレス通信で27MHzの周波数帯を採用しています。
1995年、Logitechが「TrackMan Marble」を発表。見てわかるように従来のマウスと異なり、Logitechが特許を取得したMarble Sensing Technology(マーブルセンス・テクノロジー)と呼ばれる新しいテクノロジーを採用したトラックボール方式。カメラを使ってトラックボールの動きをスキャンすることにより、先進の光学機構とニューラルネットワーク(神経回路網)論理が、コンピュータに動きを伝える仕組み。可動部品はボールだけなので、初期のマウスを悩ませたほこりと汚れの問題は解消されたそうです。
こんな感じ
このトラックボールはさらに進化、1997年にはLogitechから親指と人差し指の両方が使える唯一のトラックボール、「TrackMan Marble FX」というものが発表されています。
1999年、今度はAgilent社から、マウスパッドが不要になるオプティカルマウスセンサーが発表されました。これによって今まで以上に精確なトラッキングを実現する長寿命の次世代コンピュータマウスの基盤ができあがり、このセンサーを使ってマイクロソフトから「オプティカルマウス」が発表されました。
これがそのマイクロソフトのオプティカルマウス
そして2004年、Logitechがレーザートラッキングテクノロジーを搭載した世界初のマウス「MX 1000 Laser Cordless Mouse」(MX-1000)を発表。光源としてはオプティカルマウスの発光ダイオード(LED)よりもレーザーの方が優れており、LEDベースのマウスではトラッキングが難しい表面上でもトラッキングが可能に。また、レーザーは高いコヒーレンスを持つため、表面に関するディテールをLED光よりも多く把捉することができ、マウスのトラッキング機能を劇的に向上することが可能になったというわけ。
これが記念すべき初のレーザーマウス
さらに同年、2.4GHzテクノロジーを搭載した初のノートパソコン用マウスである「V500 Cordless Notebook Mouse」(V-500)を発表。これまでのワイヤレスマウスとは異なり、2.4GHz帯を使用することによって操作範囲を10メートルにまで広げているのが特徴。この2.4GHzコードレスマウスのレポートレートは毎秒約500で、従来のマウスの4倍。さらに従来のスクロールホイールの代わりに、ソリッドステートのタッチセンサー式パネルを採用しています。
これが初の2.4GHzテクノロジーのコードレスマウス
2005年にはLogitechから、ついにマウスとしての極地に到達したFull-Speed USBコンピュータマウスが発表されました。この「G5 Laser Mouse(G-5)」と「G7 Laser Cordless Mouse(G-7)」はともにパソコンのゲームユーザー向けに設計されており、解像度2000dpiのレーザートラッキングテクノロジーを搭載。解像度はマウスのボタンですぐに選択できるため、ピクセル単位の精確なターゲティングや瞬間的な操作を柔軟に切り替えられるという仕組み。いずれのマウスも毎秒500のレポートレートを誇り、G7マウスは2時間での完全充電と素早い交換が可能な超薄型リチウムイオンバッテリーパックで駆動。G5マウスにはウェイトのセットが同梱されており、ユーザーはこれらのウェイトを使ってマウスのバランスを調整し、カスタマイズ性能を高めることができました。
これがG5
こっちがG7
これは過去にGIGAZINEでも使用したことがあり、以下のような感じで記事化しています。
超高解像度マウス「G5 Laser Mouse」を買ってみました - GIGAZINE
2006年、今度はホイールに進化が起きました。Logitechから「MX Revolution Cordless Laser Mouse(MX-R)」とノートパソコン向けの「VX Revolution Cordless Laser Mouse(VX-R)」が発表され、これらの新しいマウスはMicroGear・プレシジョンスクロールホイールを搭載。このホイールは最大7秒間回転し続けることができ、指先の軽い操作だけで何百ページものドキュメントをすぐにスクロールすることができるというわけ。ワンタッチ検索ボタンも搭載され、新しいサムホイールコントロール機能により、拡大縮小やアプリケーションの切り替えも行えるようになっています。
一体どこまで進化するのかわからない領域へ
2007年にはLogitechから「VX Nano Cordless Laser Mouse for Notebooks(VX-N)」というマウスが発表されました。このマウスのプラグ&フォゲット(抜き差し不要)ナノレシーバーは、発表された当時、世界最小のマウス用USBレシーバーだったそうです。
こんな感じ
そして同年、デスクトップだけでなく空中でも動作する多機能な「MX Air(MX-A)」を発表。とうとうマウスは空を飛べるようになったというわけですね。このMX Airは、空中での簡単な操作を実現するべく、Freespaceモーションコントロール、ジェスチャーコマンド、そしてワイヤレスという3つのテクノロジーを組み合わせており、手首を軽く動かすだけでポインタ操作・選択・メディア再生などが行えるようになっています。
このMX Airマウスはなんと2008年にニューヨーク近代美術館で開催された、現代世界における科学とデザインの関係を探る展示「Design and the Elastic Mind」に出品されました。もうどこまでいくのかわからない。
で、今年、2008年にはこのようなノートパソコンにくっつくクリップ&ゴー ドックを搭載したノートパソコン用「V550 Nano Cordless Laser Mouse」が登場。ノートパソコンに貼った小さなドックにV550マウスを取り付けることで、マウスの持ち運びを容易にする……らしい。
こんな感じ
来年の2009年には一体どのような革新的マウスが登場するのか、もうまったくわかりません。
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