4月26日に日本で行われる聖火リレーで一体何が起きるのか?
ネット上では「エクストリーム・聖火リレー」と称され、いかにして聖火を消すかに命を賭けているのかと思われるほどの一種異様な盛り上がりと、チベット関連の抗議とがミックスされたむちゃくちゃな状態になっている北京オリンピックの聖火リレーですが、ついに4月26日には日本の長野県にて聖火リレーが行われる予定となっています。
既にスタート地点となっており、聖火リレーの出発式が予定されいる「善光寺」には一日に数十件ほど問い合わせの電話が殺到しており、チベット事件のまとめガイドラインの善光寺関連ページにこれまでの経過などが詳しく書かれています。
というわけで、開催が中止されない場合、一体何が起きるのかを予想するためにも、今までの経過や今後の予定などをまとめてみました。
■長野市における聖火リレーの概要
まずは長野市における聖火リレーの概要です。
長野市における聖火リレー概要
4月25日(金)に聖火が長野市に到着
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4月26日(土)8:00~8:30に善光寺にて開会式
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8:30~12:15、長野市内を聖火リレー(長野市の観光スポットや長野オリンピックで使用した競技施設等を巡るコースで、総延長約18.5キロメートル)
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12:00~13:00に若里公園にて到着式
既に4月26日(土)の14時から長野オリンピックスタジアム前で予定していた「聖火リレー記念イベント」は中止になっています。
また、ボランティアや市職員約1200人、警備員約300人態勢で交通整理や警備にあたる予定。しかし、世界各地で聖火リレーに対して抗議する妨害活動が山ほど発生している事態を考慮し、さらにコース脇へ機動隊を配置、近隣県警への応援要請も検討しており、既に機動隊員が聖火ランナーを取り囲んで伴走する形でガードすることが決定しています。
なお、4月23日には記者会見が予定されており、ランナーがどの区間を走るか一部について発表されるらしい。
ちなみにこれが聖火を守っているランタンの構造
聖火を置く台
聖火ランナーがもって走るトーチはコレ
上から見るとこうなってます
■聖火ランナーについて
参加する聖火ランナーは80名で、1区間は約200メートルから300メートル。この聖火ランナー、一体どういう基準で選ばれているかというと、長野市実行委員会枠54名、BOCOG推薦枠5名、IOC推薦枠3名以外に以下のスポンサー枠があります。
コカコーラ:6名
サムスン:6名
レノボ:6名
また、走者の中にはタレントの萩本欽一、北京五輪野球日本代表の星野仙一監督などが含まれていますが、現時点では辞退を表明していません。それどころか、「欽ちゃん走り」をする可能性もあるとのこと。以下に全員のリストがあります。
主な聖火ランナー - JOC - 北京2008
中継するテレビ局的にはエンターテイメントとしてショー化して騒ぎたいのかもしれませんが、これまでの世界各国での聖火リレーの状態を見ると、事態は深刻であり、「欽ちゃん走り」をした日には世界中から良識を疑われる可能性が大です。
また、既に辞退したリレー走者が世界中で相次いでいます。
デイリースポーツonline/タイの聖火リレー走者が辞退/芸能社会速報
デイリースポーツonline/サッカー インド代表主将が聖火走者拒否/スポーツ速報
ノーベル平和賞・マータイさん、聖火リレー参加辞退 : 運営・話題 : ニュース : 北京五輪2008 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
また、走者ではありませんが、日本からも既に北京オリンピックをボイコットする人が出ています。
ついに出た!日本から北京ボイコット第1号 ― スポニチ Sponichi Annex ニュース
日本初の北京五輪ボイコット、メダリスト用の砲丸職人 国際ニュース : AFPBB News
■聖火リレー、これまでのできごと
今回の聖火リレーは一番最初にギリシャのオリンピア遺跡にあるヘラ神殿前にて行われた聖火採火式からして、既に波乱含みでした。
CNN.co.jp:聖火採火式、中国五輪関係者の演説中に男が乱入
この乱入場面ですが、中国では検閲され、放送されていないそうですが、YouTubeにて、実際に乱入された様子のムービーを見ることができます。
YouTube - Olympic torch launch disrupted
結局、聖火リレー初日の逮捕者は9人、むちゃくちゃです。この活動家の正体は国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」のメンバーだそうです。
「国境なき記者団」の作った北京オリンピックに対する抗議マーク
こういった動きを受け、米連邦下院のペロシ議長は「五輪の開催地として中国を選んだことは失敗」だと発言しています。
フランスのパリでは、パリ市長が市庁舎に「パリは世界中の人権を守る」と書いた横断幕を掲げることを明らかに。長野市も何かした方がいいのではないでしょうか……。
フランスではさらに選手も抗議の意志を明らかにしており、人権尊重を訴えるバッジを発表して五輪本番で着用しようとしましたが、着用は認められないことに。
サンフランシスコでは市議会が「警戒と抗議をもって迎える」とする決議案を採択、トルコでも抗議行動が起きました。
そして迎えた現地時間4月6日、イギリスのロンドンでは聖火を消そうとしたり、聖火を奪おうとしたり、むちゃくちゃなことになったようです。抗議した人数は数百人、35人が逮捕されました。
asahi.com:聖火リレー、妨害次々 ロンドン騒然 - 国際
ロンドン、チベット弾圧抗議デモが聖火リレーを妨害 国際ニュース : AFPBB News
聖火リレー:男が聖火奪い取ろうとする騒ぎ ロンドン - 毎日jp(毎日新聞)
中日新聞:聖火妨害35人拘束 ロンドン、強奪未遂や消火剤:国際(CHUNICHI Web)
この大騒動の様子は以下のムービーで見ることができます。
YouTube - ロンドン聖火リレー聖火掴む
YouTube - ロンドン聖火リレー ブーイング Booing in London torch relay
FNNニュース:中国・新華社通信、英での北京五輪聖火リレー妨害について「恥ずべき悪行」と非難
この抗議活動について当のイギリスの各メディアはどう報道したかというと、「民主主義の理想の勝利!」ということで、好意的に報じています。
現地時間で4月7日、パリではついに聖火が消えること3回、リレーは途中で中止され、最終地点にバスで移送するという非常事態に発展しました。
バスの写真は以下に。
パリでも抗議行動、五輪聖火が「バス乗車」 国際ニュース : AFPBB News
また、サンフランシスコの観光名所ゴールデンゲート・ブリッジには抗議の横断幕が掲げられ、在サンフランシスコ中国総領事館前では1000人以上が抗議を行いました。そのほかにも、俳優のリチャード・ギアやノーベル平和賞受賞者も2000人規模の抗議集会に参加。
そして現地時間の4月9日、サンフランシスコで聖火リレーがスタートしたものの、直後に第一走者が消えました。前代未聞。
サンフランシスコ聖火リレー開始・第一走者、倉庫の中に消える
約45分後には予定のルートから遠く離れた場所に出現。抗議活動を回避することに成功。
サンフランシスコ聖火リレー、別コースで再開・一時姿消す
asahi.com:米聖火リレー、隠密裏にルート変更、閉会式なく空輸 - 国際
時事ドットコム:聖火リレー、コース変更=走者が突如消える-「奇策」で大きな混乱回避・米シスコ
厳重な警戒態勢の様子は以下で見ることができます。
サンフランシスコの聖火リレー、妨害でルート短縮 国際ニュース : AFPBB News
■聖火リレーの最中に側を走っている青い服は一体何?
彼らは中国当局から派遣された「聖火防衛隊」。一応、「刑事警察学院の学生ボランティア」となっていますが、実際には中国の弾圧用警察官です。
彼らはスポーツ選手なみの体格と体力の持ち主で、聖火を空輸する専用機「和諧号(調和号)」の中でも聖火を守っているそうです。
また、ロンドンにて聖火に消化剤を吹きかけられたり奪われそうになったときにも守っています。
中国が“聖火防衛隊”をロンドンに出動、パリにも同行へ : 運営・話題 : ニュース : 北京五輪2008 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
逆に、フランスのパリでは聖火を消したりもしています。わけがわからない。
2008/04/09-06:18 聖火消したのは中国側=リレー打ち切り自ら決める-仏
以下で中国の「聖火防衛隊」が聖火を消す様子をムービーで見ることができます。
YouTube - Paris, France: Olympic flame extinguished by Chinese
なお、日本の警察は中国側が派遣するこの青服たちによる妨害活動への実力行使は一切認めない方針だそうです。
■今後の聖火リレー
そもそも一体チベットの何が原因でこのようなことになっているのかは、チベット難民として中国からインドに亡命し、今は桐蔭横浜大学法学部教授のペマ・ギャルポ氏による以下の話を読むとわかります。
活火山化したチベット/ペマ・ギャルポ氏に聞く(1)
中国政府はチベットに「自治区」という名称を与えて、それがダライ・ラマ法王の求める「自治」だとしている。表向きは融和を唱えているが、実際は引き続きチベット仏教の信仰に対して宗教弾圧を行っており、寺院に対しダライ・ラマ法王の写真掲示禁止をはじめいろいろと制限を加え、僧侶の活動にもさまざまな監視をしている。青蔵鉄道開通によって便利になったが、現実は中国人がどんどん入ってきて札束をはたいてチベットのものを買収し、観光開発でもチベット人は恩恵を受けていない。これにチベット人の不満がたまっている。
法王は高度な自治を求めている。内政・文化・宗教はチベット人に任せてほしいと言っているのだ。それはもともと1951年に中国とチベットが結んだ17カ条協定にある通りだ。チベットの民族の権利、宗教信教の自由、チベットの国語など学校教育発展などが約束されたのに、ことごとく中国は破っている。チベット語は第2外国語化してしまい教科書も中国語だ。高等教育を受けようと思ったら中国語ができないと試験も受けられない。学校では、チベット仏教の伝統的信仰に対して「古い体質にしがみついて改革精神がない」と批判される。法王が「文化的虐殺」と表現したのはまさにその通りだ。
こういう背景があるため、聖火リレーがただのスポーツイベントではなく、政治的問題と絡められ、今回のような事態に発展しているわけですが、これらの混乱ぶりは公式的には「ない」ことになっているのか、聖火リレーのページの写真やムービーでは見事に隠蔽されています、当然ながら。
Relay Route - The Official Website of the Beijing 2008 Torch Relay
http://torchrelay.beijing2008.cn/en/journey/
今後の聖火リレーの順路については以下のサイトで見ることができます。
The Planned Route Map
http://torchrelay.beijing2008.cn/en/journey/map/
4月26日、日本での聖火リレーが平穏無事に済んだ場合は「中国のチベットに対する行いに抗議しないとはけしからん!」と国際社会から非難され、平穏無事に済まなかった場合には中国と国際オリンピック委員会から「けしからん!!」と非難されることは確実。一体どちらがよりよいと判断するのか、今後の動きに注目です。
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