サイエンス

「簡単なスポーツの映像」を見ると食事の量が増えてしまうという研究結果


「ジムに行ったりスポーツをしたりすると、どうしても食事の量が増えてしまう」という人は多いはず。運動が自分へのご褒美やカロリー補充として食事量の増加につながるということは不思議ではありませんが、新たな研究では「ランニングなどの簡単な運動の動画」を見るだけでも食事の量が増えてしまうという結果が示されました。

Watching easy sports makes me eat more - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0950329317300915


Will watching the Olympic Games make you eat more?
https://theconversation.com/will-watching-the-olympic-games-make-you-eat-more-231199

フランスのEMリヨン経営大学院グルノーブル経営大学院の研究チームは、「数え切れないほどのスポーツイベントが放映され、画面が常にスポーツの競技で埋め尽くされているため、『スクリーン上でスポーツを見ることが、私たちの食事量にも影響するのではないか?』という新たな疑問が生じています」と述べています。

そこで研究チームは、112人の学生をグルノーブル経営大学院の実験室に招待し、「動画を見てからキャンディーを渡して、その味について評価してもらう」という実験を行いました。被験者は「男女がスポーツをする動画」あるいは「スポーツと関係ない動画」のいずれかを視聴し、その後3分間にわたって好きなようにキャンディーを食べられたとのこと。


実験の結果、スポーツの動画を見た学生はスポーツと関係ない動画を見た学生と比較して、より多くのキャンディーを食べることが確認されました。しかし、この実験では男子学生の方が女子学生よりはるかに多くのキャンディーを食べており、結果が男子学生によってもたらされた可能性があるほか、視聴するスポーツの種類がキャンディー消費量に及ぼす影響も不明でした。

残された疑問を調査するため、研究チームは女子学生のみを対象にしてさらなる実験を行いました。この実験では、「簡単なスポーツ(軽いランニングなど)」の動画か、「難しいスポーツ(走り幅跳び・体操・ラグビー・ロッククライミング)」の動画のいずれかを見せて、最初の実験と同様にキャンディーの試食をしてもらいました。


すると、簡単なスポーツの動画を見た被験者は約30.1gのキャンディーを食べたのに対し、難しいスポーツの動画を見た被験者は約18gのキャンディーを食べたことが判明。つまり、視聴するスポーツの難易度がキャンディーの消費量に影響を及ぼしており、「簡単に実行できるスポーツを視聴すると、難しいスポーツを観戦するよりもキャンディー消費量が増える」ということが確認されました。

なお、被験者が視聴した「簡単なスポーツの動画」が以下です。

Asics Running TV Advert - YouTube


「なぜ難しいスポーツより簡単なスポーツの動画を見る方が食事量が増加するのか?」という疑問について、研究チームは目標達成のモチベーションが関連していると考えています。人は目標が達成できていないと感じるとより努力しますが、いったん進歩が見られると怠けてしまいがちだとのこと。たとえば、健康維持を目標にしている人は、ある程度運動すると「順調に目標に近づいた」と感じてしまい、その後の食事管理などがおろそかになってしまう可能性があるというわけです。

今回の研究で、女性が簡単なスポーツの動画を見ると食事量が増えてしまった背景には、女性の方が男性よりも「自分の体重を気にしてダイエットをしている」という傾向が強いことが関連している可能性があります。

研究チームは、「私たちの研究は単にスポーツを観戦するだけで、フィットネス目標の代理的な達成感につながる可能性があることを示唆しています。見ているエクササイズをしている自分が想像できると、すでに自分が運動したような気分になってしまい、よりぜいたくな食べ物を選ぶようになってしまうのです」と述べています。難しいスポーツであれば自分がやっている場面を想像しにくく、代理的な達成感が得にくい一方で、簡単なスポーツであれば想像が容易なため達成感が得られやすいため、食事量の増加につながる可能性が高いというわけです。


今回の研究は、健康的なライフスタイルを奨励するマーケティングや政策において、簡単すぎる身体活動を動画などでアピールすることは代理的な達成感を高め、食事量の増加といった逆効果をもたらしてしまう可能性があることを示唆しています。そのため、運動を推奨するにはまず短距離走やマラソンといったハードな運動を見せた後に、その代わりとしてウォーキングやジョギングなどの簡単な運動を見せることで、代理的な達成感を得にくくするなどの工夫が有効かもしれないとのことです。

また、ダイエットをしている人であれば、簡単なジョギングやウォーキングの動画を見るよりは、プロの試合などの自分がやるには難しいスポーツ動画を見た方がいいかもしれません。

研究チームは、「食生活を維持したいなら、オリンピックを見るべきなのでしょうか?答えはもちろんその通りです。しかし、最も実行しにくいと感じる身体活動を選んで、節度を保たずにそれらを見る方がいいかもしれません」と述べました。

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in サイエンス,   , Posted by log1h_ik

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