筋トレにはタンパク質だけでなく「炭水化物の摂取も重要」と専門家
「筋力トレーニングの際にはタンパク質を取れば取るほど筋肉の成長が促される」といわれているため、筋トレをしている人には高タンパク・低炭水化物の食事メニューが注目されがちです。しかし、くっきりと「キレてる」筋肉作りには炭水化物の摂取も必要だと、専門家は指摘しています。
Want to build muscle? Why carbs could be just as important as protein
https://theconversation.com/want-to-build-muscle-why-carbs-could-be-just-as-important-as-protein-224305
2023年の大会で、経験豊かなボディビルダーなら誰もが憧れる「ミスター・ユニバース・マスターズ・オーバー45」のタイトルを獲得した、記事作成時点で52歳のボディビルダーのマーク・テイラー氏はインタビューで「成功の鍵は実は炭水化物」と語ったことがあります。
かくいうテイラー氏も、キャリアの大半を伝統的な高タンパク・低炭水化物の食事の厳守に費やしてきました。しかし、常に付きまとう疲労感に悩まされていたテイラー氏は、炭水化物を控えるという考え方と厳しいダイエットを捨て、炭水化物とカロリーを多く摂取するメニューに切り替えることで、長年の夢をかなえました。
Mark Taylor explains how diet change helped him take the coveted Mr Universe Masters Over 45 crown ???? #bodybuilding https://t.co/Gs2thSH0Mx
— My Strength Training (@MyStrengthT) February 22, 2024
イギリス・エセックス大学でスポーツ運動科学の講師を務めるヘンリー・チャン氏らによると、トレーニングによる筋肉の成長は、新しい筋肉が作られたり筋組織が修復されたりする「筋タンパク質合成」と、筋組織が分解される「筋タンパク質分解」という2つのプロセスで成り立っているとのこと。筋肉の合成と分解は体内で同時に進行するため、2つのプロセスの速度とバランスが筋肉の成長を左右することになります。
筋肉の合成にはもちろんタンパク質が重要で、トレーニング後にホエイプロテインなどの「速放性タンパク質」、つまり体への吸収が速いタンパク質を20~40g摂取すると、短期的な筋タンパク質の合成が促進されるとの研究結果が報告されています。また、就寝前にカゼインプロテインなどの「徐放性タンパク質」を摂取することで、夜間の筋肉の回復が向上するというデータもあります。
そして、筋タンパク質の分解の速度に影響を与えるのが、炭水化物です。というのも、炭水化物の摂取は体内でインスリンというホルモンを分泌させるトリガーとなりますが、インスリンにはタンパク質の分解を抑制する効果があることがわかっているからです。
一般的なボディービルダーは、筋肉を増やすために1日の摂取カロリーを15%以上増やす「増量期」を設定し、その後筋肉をより目立たせるために体脂肪を減らす「減量期」に入ります。
この時、引き締まった体を得るために低炭水化物のアプローチが取られることがありますが、炭水化物の不足は体力や免疫力の低下と疲労の増大を招いてパフォーマンスを低下させる危険性があります。また、低炭水化物ダイエットは女性の月経機能を乱したり、特に男性が筋肉を発達させるのに必要なホルモンであるテストステロンを低下させたりする可能性もあります。
炭水化物は、筋肉にグリコーゲンとして貯蔵され、激しいトレーニングを可能とすることで間接的に筋タンパク質の合成に寄与します。逆に、炭水化物を控えて筋グリコーゲン不足のままトレーニングを続けると、筋肉を増強するプロセスとトレーニング全体のパフォーマンスに影響が及ぶことになります。
タンパク質にも種類があるように、炭水化物の選択も重要です。前述のテイラー氏の場合、コーチの指導によりいつもの鶏肉とブロッコリーのメニューにサツマイモとポリッジ、つまり穀類で作るおかゆを加えることで、血糖値の急上昇を抑えつつ炭水化物を摂取しました。
炭水化物の選択には、グリセミック・インデックス(GI)という指標がかかわってきます。GIは、特定の食品に含まれる炭水化物が血糖値を上昇させる速度を示すもので、低GIの食事は血糖値の上昇を緩やかにし、一日を通じて持続的なエネルギーをもたらします。
また、ハードなトレーニングや長時間のトレーニングの後に、ベーグルやグラノーラなど高GI食品を摂取することで、筋肉へのグリコーゲンの迅速な補給がサポートされるという研究結果もあります。
このことから、チャン氏らは「トレーニングとその後の回復の戦略には、1日を通して低GI食品と高GI食品を組み合わせることが有効です。つまり、炭水化物でトレーニングにエネルギーを補給しつつ、筋肉にタンパク質を補給するのが、目標達成に効果的ということです。かつてのテイラー氏のように思い通りの結果が得られないのであれば、欠けたパズルのピースは炭水化物かもしれません」と述べました。
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