「食事の記憶」は次の食事に影響を与える

by Ed Gregory

記憶喪失で「食べたこと」を忘れてしまう人は、たとえ満腹感があったとしても食べ物を与えられると食べてしまいます。これは、人間が「空腹だから食事をする」わけではないことを示しているのですが、新たな研究により、「食事をしたことの記憶」が次の食事に影響を与えることがわかってきています。

Postmeal optogenetic inhibition of dorsal or ventral hippocampal pyramidal neurons increases future intake | eNeuro
http://www.eneuro.org/content/early/2019/01/14/ENEURO.0457-18.2018

Memories of eating influence your next meal – new research pinpoints brain cells involved
https://theconversation.com/memories-of-eating-influence-your-next-meal-new-research-pinpoints-brain-cells-involved-109713


「テレビを見ながら」や「ゲームをしながら」のような状態で食事をすると、食事から気が散った状態になり、次の食事量が増えるということが2013年の研究で示されています。

そして、1998年の研究で、記憶喪失で「食事をした」ということを憶えていられない人は、食事をしたばかりで満腹のはずでも、食べ物を与えられると食べることがわかっています。

ジョージア州立大学神経科学研究所のマリーズ・ペアレント教授は、これらの研究を受けて、大脳辺縁系の一部で記憶などに関する器官である「海馬」に注目。ラットが食事を終えた直後に、海馬に対して光遺伝学(オプトジェネティクス)的な措置を行って不活性化しました。


すると、ラットは次の食事を早く求めるようになり、しかも通常の2倍の量を食べるようになりました。食事内容は「齧歯類用の固形飼料」「砂糖溶液」「サッカリンで甘味を付けた水」で、通常の食事では発生する血糖値上昇が抑えられるサッカリンの場合でも食事量は増加しました。

このためペアレント教授らは、将来的なエネルギー摂取量を制限するためには食事後に海馬の働きが必要であると結論付けました。前の食事の記憶を統合することにより、将来の摂食行動を阻害しているというわけです。

これまでの研究により、ラットに脂肪や砂糖を過剰に与えすぎると海馬の記憶が損なわれることが分かっており、過食症や肥満と海馬の損傷・記憶障害の間に関連があることもわかっています。今回の研究結果は、肥満の原因の理解や肥満治療に重要な意味を与えるものと考えられています。

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in サイエンス,   , Posted by logc_nt

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