仮想通貨Bitcoinシステムにかかる膨大な電力はシステムそのものの維持を困難にする可能性


仮想通貨Bitcoin(ビットコイン)のマイニングで利益を得るには、高性能な専用マシンを使うのが必須で、さらには電力コストを抑えるために電気代の安い国に拠点を構えることが求められます。マイナーたちが軍拡競争のような熾烈なサバイバルを繰り広げる中で、システムを維持するためのマイニングに必要なエネルギーが高まり続ける状況は、将来的にビットコインシステムの維持そのものを不可能にすると指摘されています。

The Ridiculous Amount of Energy It Takes to Run Bitcoin - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/energy/policy/the-ridiculous-amount-of-energy-it-takes-to-run-bitcoin

ビットコインはすべてのトランザクション(取引)を記録する元帳として「ブロックチェーン」を活用します。世界中に点在するPCに記録されたブロックチェーンは、あらゆる取引の度に一斉に更新され、取引がチェックされる仕組みを採用しており、それゆえにビットコインの安全性が担保されています。そして、このシステムを維持するための計算リソースを提供する「マイナー」と呼ばれる人に新規発行されるビットコインが割り当てられることで、特定の発行主体が存在しないビットコインシステムは維持されています。

ビットコインの各トランザクションでは、ビットコインの移動の正当性を確かめるために公開鍵暗号システムが利用されており、偽造を不可能にすることで取引の安全性、正当性が確保されています。ビットコインによるトランザクションの仕組みは以下の記事を見ればよく分かります。

仮想通貨「Bitcoin」を完璧に理解するために知っておきたいことまとめ - GIGAZINE


話を分かりやすくシンプルにすると、暗号解読作業に計算リソースが使われており、より多くのハッシュ関数を解くことに成功した人にビットコインが提供されるというわけです。このため、より多くの計算を実行することで他のマイナーを出し抜いてビットコインの割り当てを受けようと、世界中のマイナーは演算能力を拡大させる競争を日々、繰り返しています。

しかし、新規発行されるビットコインの量は事前に決められているため、マイナーの計算能力が高まれば高まるほど、ビットコインを得るためのハードルが上がるという仕組みになっており、ここ1年の「ビットコインバブル」とでも言える価格の急騰によって、さらに演算性能を高める競争が激化しています。

トップクラスのマイナーがビットコインを掘るために構築しているシステムがどのようなものかは、以下の記事を見ればわかります。

高騰し続ける仮想通貨Bitcoinを掘る世界最大のマイニング工場に潜入、2万5000台のマシンを酷使する採掘現場の恐るべき実態に迫る - GIGAZINE


ビットコインが生み出された当初は、PCのCPUを使ってマイニングされていましたが、マイナーはより並列演算を効率的にできるGPUを使うようになりました。その後、ビットコインマイニング向けのSHA-256演算用のFPGAや、ビットコイン演算に特化したハードウェア「ASIC」など、マイニングツールはつぎつぎと進化を遂げていき、現在は16nmプロセスルールで製造されたASIC「Antminer S9」を搭載するマシンが主流となっています。


ビットコインをマイニングするためのマシンは演算性能が高いことはもちろんですが、マイニング行為が金銭的にペイするためには電気代を抑えることが不可欠であり、より効率的なシステムの開発が続けられています。

以下の図は、ビットコインマイニングに求められるシステムの効率性を年代別に描いたもの。折れ線はビットコインの時価から算出した1Gh/sあたりの利益(ドル)であり、赤線が各マイニングツールに必要な電力コストを表しています。


簡単に言うと、折れ線グラフより下にあるシステム(赤線)の場合、利益が出るという状態です。2017年初からの急激なビットコイン相場の上昇のおかげもあって、Antminer S9システムであれば利益を出せる状況になっています。もちろん、マイニングマシンの性能向上にビットコイン相場の上昇が追いつかなければ赤字になることは十分あり得ます。


2017年6月時点でのビットコインシステムを維持するために必要とされる電力は約500メガワットと推測されており、これは32万5000軒の家庭に電力を供給できる規模だとのこと。ビットコインによる金融取引を維持するために必要とされるエネルギーコストは、VISAクレジットカードを利用する場合の5000倍以上という試算も行われています。

具合の悪いことに新規発行量がコントロールされているビットコインの場合、時間の経過に伴ってビットコインの産出難度が上がることから、マイニングマシンの性能競争はよりシビアになるという構造があります。例えば。最先端のビットコインマイニングマシンは、ビットコインが誕生した2009年当時のCPUに比べると1億倍の速度かつ100万分の1の低消費電力性能を誇ります。仮に2017年時点のビットコインシステムを維持するために2009年当時のCPUを用いるならば、必要な電力は地球全体で生み出される全電力を超えてしまうレベルです。

ビットコインを使った取引が増えることで必要となるハッシュ計算の電力は拡大傾向にあり、オランダの研究者のセバスチャン・ディートマン氏は、2020年までに必要な電力は14ギガワットに到達すると予測しています。なお、この電力はオランダの国内の消費電力と同じレベルだとのこと。

ASICを含めた半導体の性能向上のペースが鈍る傾向にあることから、ビットコインが決済手段として普及すれば普及するほどシステム維持に必要となる電力が増えるという構造上の問題があるというわけです。この膨張していく電力コストから近い将来、ビットコインシステムが維持できなくなる可能性が指摘されています。

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