紙と鉛筆と暗算でBitcoinマイニングに挑戦する強者が登場

By voyageAnatolia.blogspot.com

仮想通貨「Bitcoin(ビットコイン)」はPCや専門ハードウェアを使って計算することで新しいビットコインを生み出せます。このビットコインを発掘する行為は「マイニング」と呼ばれ、ハイスペックなマシンと膨大な時間が必要となっているのですが、そのマイニングに「紙」と「鉛筆」と「頭脳」だけで挑む強者が現れました。

Ken Shirriff's blog: Mining Bitcoin with pencil and paper: 0.67 hashes per day
http://www.righto.com/2014/09/mining-bitcoin-with-pencil-and-paper.html

ビットコイン決済ではすべてのビットコインのやりとり(取引)は、「ブロック」という単位で管理されており、このブロックとブロックをつないだ「ブロックチェーン」と呼ばれる「帳簿」に記載されています。マイニングではブロックとブロックをつなぐために「ハッシュ値」と呼ばれる値を計算しており、この計算によって取引の正当性・公正が担保されています。そして、ハッシュ値を計算するのに必要なエネルギーはマイニングする人(マイナー)から提供され、マイナーにはエネルギーを提供した対価として新しく「発掘」されるビットコインが与えられるというメカニズムで運営されています。

マイニングはすでに素人が手出しできる次元を超え、軍拡競争のごとくマシンの性能アップ競争が繰り広げられた結果、マイニング専用チップを搭載したハイスペックマシンが必須となっているのですが、ケン・シュリッフ氏は「紙」と「鉛筆」と「頭脳」を使って人力によるハッシュ値計算に挑んだ様子をブログで公開しています。

ビットコインはマイニングにSHA-256というアルゴリズムを採用しており、SHA-256を二重に使うことでセキュリティをより強固にしています。しかし、SHA-256のアルゴリズム自体は非常に単純な仕組みであるため、シュリッフ氏によると手動でもマイニングは可能であるとのこと。

これはマイニングでハッシュ値を計算する様子を表した模式図。「previous block hash」という前ブロックのハッシュ値(ここでは「17975b……」)と「Merkle root(マークル木)」という情報(ここでは「8e97295a……」)と「nonce」と呼ばれるランダムな変数(ここでは「48750833」)という3つの値をハッシュ関数に代入して計算して、ハッシュ値「Block hash(ブロックハッシュ)」を算出します。nonceを変えればブロックハッシュが変わるので、変数nonceを手当たり次第変えまくって計算しまくるのがマイニングというわけです。

ブロックハッシュは「0」が連続する数字であれば「正解」で、現在は17個連続して0が続くブロックハッシュが算出されたときに、晴れて新しいビットコインが誕生するとのこと。なお、この0が17個連続で続くブロックハッシュが算出されるのは1垓(10の20乗)に1回です。

ハッシュ値を手計算で算出するためにシュリッフ氏は下図のような表を作成しました。このマス目に数字と文字を入れていくことでハッシュ値を計算できるとのこと。

なお、最初の計算工程にかかった時間は16分45秒だったとのことで、計算の様子は以下のムービーに収められています。

Mining Bitcoin with pencil and paper - YouTube


シュリッフ氏は実際に紙と鉛筆を使ってマイングをしてみたところ、作業は想像以上に簡単だったとのこと。なお、シュリッフ氏によるマイニング速度は0.67ハッシュ/日で、現在主流のマイニングマシンの計算速度が毎秒数京(10の16乗)ハッシュであることを考えれば、当然、ビットコイン発掘には使い物にならないレベル。しかし、「実際に手計算でマイニング作業を行うことでマイニングがどのような仕組みで行われているのかを非常に正確に理解できた」とシュリッフ氏は話しています。