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世界最古にして最大の独立系図書館「The London Library」


イギリス・ロンドンの中心地にほど近いセントジェームズスクエアにある「The London Library(ロンドン図書館)」は、大英図書館よりも古い歴史を持つ世界最大の独立系図書館です。イギリスの一般市民や王室からの寄付によって誕生したロンドン図書館は、公営サービスとして提供される図書館のモデルにもなったと言われており、今なお多くのイギリスの知識層に愛され、会員制で運営されています。

Secrets Of The London Library | Londonist
http://londonist.com/2016/06/secrets-of-the-london-library

1840年当時、イギリスには公営の図書館というものがなく、書物は自分で購入するか、大英博物館の図書閲覧室にある本を読むのが一般的でした。読みたい書籍をすべて購入することは経済的に不可能だったので、歴史家のトーマス・カーライルは大英博物館の図書閲覧室で文献にあたっていたそうですが、部屋には本を読みたい人があふれて窮屈で、満席で本を満足に読めないことも多く、不満を抱えていました。さらに、自分の読みたい書物が少ないという蔵書のラインナップにも不満を抱えていたカーライルは、それならばと私設の図書館を開設することを決めました。


1840年にカーライルはフリーメーソン・ターバン(現・フリーメーソン・ホール)で聴衆に対して「民衆が利用できる図書館」の必要性を訴えるスピーチを行い、書籍購入費用の寄付を募り始めました。カーライルの訴えは多くの民衆の支持を集めることに成功し、1841年5月までに十分な資金を調達して、会員制の私設図書館である「ロンドン図書館」がオープンしました。

会員名簿の593番目には進化論のチャールズ・ダーウィンの文字。ダーウィンをはじめ、小説家のチャールズ・ディケンズ、ハリエット・マーティノー、哲学者のジョン・スチュアート・ミルなどが創業時からの会員で、その後もウィンストン・チャーチルアーサー・コナン・ドイルなどの多くの著名人が会員名簿に名を連ねています。


ゆっくりと書籍を読めるロンドン図書館は、イギリス中の愛読家を集めることに成功しましたが、それは落ち着いて読書をできる静かな空間を提供していただけでなく、優れた蔵書システムにも理由がありました。1893年から1940年の間、ロンドン図書館の蔵書責任者を務めたチャールズ・ハグバーグ・ライトが考案した書籍管理システムでは、徹底的にタイトルのアルファベット順で書籍を配置されたとのこと。そのため「inn(宿)」の次に「insanity(狂気)」が並べられたり、「fools(馬鹿)」の次に「football(サッカー)」が並べられるという具合でしたが、このおかげで書籍をぶらぶら探しては、思わぬ「ヒット」に出くわすという楽しみがあったそうです。


175年という歴史を誇るロンドン図書館ですが、その歴史のわりには建物は「歴史」を感じさせません。


その大きな原因は、1944年にドイツ軍の爆撃を受けて建物が大きく損壊したから。爆弾は当時のロンドン図書館の5階部分を破壊して、宗教や伝記など1万6000冊の書物を喪失させました。


爆撃によって焦げた書物。皮肉なことに、失われた書物の中にはドイツの教会の歴史に関する書籍が大量に含まれていたそうです。


これは、爆撃の被害を受けなかったフロアの様子。棚から書物が落ちましたが、消失の悲劇は回避できました。ちなみにロンドン図書館に今も置かれているカーライル像の首の部分にはつなぎ目があるとのこと。これは、この爆撃によってカーライルの首が吹き飛ばされて、破片を片付けていたアメリカの軍人によって数日後に発見され、修復された名残だそうです。


これは、現在のロンドン図書館の館内の様子。今も会員制で図書を閲覧することが可能。ちなみにロンドン図書館が設立されてから9年後の1850年にイギリスでは図書館を公費で運営する図書館法が制定されており、ロンドン図書館は一般的な公営図書館のルーツと言える存在です。


大量の蔵書は整然と並べられています。


中には、1611年刊行の欽定訳聖書の複写などの貴重な書物もあり。


館内はリフォームが施されており、トイレはターナー賞を受賞したマーティン・クリードによって設計されているとのこと。


イギリスの観光地としても有名な大英図書館よりも歴史を持つロンドン図書館は、イギリスの上流階級によって維持されてきた知の殿堂として、今なお多くの民間人や企業などのサポートで運営されています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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