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時速1200kmで走る「ハイパーループ構想」が一歩前進、その仕組みは磁石を特殊な「ハルバック配列」に並べて浮上することにアリ


起業家・イーロン・マスク氏が考案し、細い筒状のレール(チューブ)の中を時速1200kmという飛行機よりも速い速度で走る次世代交通システム「ハイパーループ (Hyperloop)」の開発を進める企業「Hyperloop Transportation Technologies」が、その核となる技術ライセンスを獲得したことを発表しました。今回発表された内容によると、ハイパーループの車両「ポッド」は永久磁石を「ハルバック配列」と呼ばれる特殊な方法で配置する「インダクトラック方式」を採用することで、コストを抑えながら高い効率性を実現するようになっています。

Hyperloop Transportation Technologies, Inc. Reveals Hyperloop™ Levitation System
http://www.prnewswire.com/news-releases/hyperloop-transportation-technologies-inc-reveals-hyperloop-levitation-system-300264946.html

Hyperloop Transportation Technologies Picks Passive Levitation for Pods - IEEE Spectrum
http://spectrum.ieee.org/tech-talk/transportation/alternative-transportation/hyperloop-company-plans-to-levitatepassively

Hyperloop Transportation Technologies (HTT)は2016年5月9日、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)との間で、ハイパーループ・システムの浮上方式としてインダクトラック方式を独占的に使用するライセンス契約を締結したことを発表しました。インダクトラック方式は、同研究所の故・Post博士が長年にわたる研究を進めてきた方式で、博士の死後もHTTとLLNLの両者は1年間にわたる受動的磁石浮上(passive magnetic levitation)方式を用いたシステムの開発を進めてきました。

このインダクトラック方式の核となるのが、複数の永久磁石を特別な向きに並べた「ハルバック配列」(またはハルバッハ配列)と呼ばれる配置方法です。以下の概念図が示すように、矢印の方向に磁界が来るように複数の永久磁石を並べたユニットが、ハイパーループの車両に搭載されています。


インダクトラック方式を採用するハイパーループがどのように走行するのか、その概要が以下のアニメーションで説明されています。

Hyperloop Levitation - YouTube


ハイパーループは、既存の「リニアモーターカー(英名:Maglev)」と同じく、磁石の力を借りて浮上走行する乗り物です。しかし、従来型のリニアモーターカーは、その運用に多額のコストが必要になります。


その大部分を占めるのが、大量の電力と軌道に敷き詰める必要がある大量の電磁石(コイル)です。


ハイパーループは、そんなインフラにかかるコストを大幅に削減することが可能とのこと。


そのコアとなる技術が、電力を必要としない軌道(アルミニウム製チューブ)と、車両に搭載された磁気システム。


そのシステムは大きく2つに分けることができます。まずは、車両に搭載されたバッテリーからの電力を制御する「Power Conditioning Unit(電力調整ユニット)」と、リニアモーター方式で車両に推進力を与える「Thrustcore(スラストコア)」。


そして、車体を地面からわずかに浮上させるために用いられるのが、ハルバック配列(Halbach Array)を持つインダクトラック方式の浮上システムです。ハイパーループは、この2つの磁気システムを組み合わせることで、推進と浮上の力を得る仕組みになっています。


「フェーズ1:加速」


列車として前に進むためには、なによりもまず駆動力が必要。ハイパーループは、その駆動力をリニアモーターで生みだします。


車体側面に配置されたリニアモーターを使い、磁力で加速力を得ます。


時速20マイル(約32km/h)に達した頃から、車体底部に配置したインダクトラックと軌道チューブの間に誘導電流が生じます。この仕組みこそが、インダクトラック方式の要となる部分です。


「フェーズ2:浮上」


ハイパーループは一定の速度に達することで、インダクトラックによる浮上力を得るようになります。その仕組みは次のとおり。


先述の通り、車体にはハルバック配列を持つ永久磁石が搭載されています。一方、軌道チューブの底にはコイルが埋め込まれています。このコイルには電力が供給されておらず、かつ両端が閉じた「閉回路」となっているのがポイント。ハルバック配列を持つ永久磁石がコイルに近づくと誘導電流が生じ、車両と反発する向きの磁力が発生する、つまり浮上力を発生させるという仕組みとなっています。


つまり、インダクトラック方式は車両に推進力を与えるだけで浮上力が得られ、浮上のための電力を必要としないという、非常に高い効率が備わった方式となっています。


軌道と接触する車輪を持たず、減圧されたチューブの中を走行するハイパーループは走行抵抗が非常に少ないため、最大時速760マイル(約1200km/h)という、音速を超えるスピードでの走行が可能。従来型の駆動方式では絶対に実現できない速度をハイパーループは可能にするというわけです。


「フェーズ3:減速」


減速時には、加速に用いていたリニアモーターを逆方向に働かせることでブレーキとして使います。


もちろん減速時には電気エネルギーを回収してバッテリーを充電する回生ブレーキのシステムが搭載されており、電力効率のアップに一役かっています。


速度が落ちると、インダクトラック方式による浮上力も失われます。そのままでは車体が軌道チューブに接触するので、低速時にはタイヤまたは車輪を使うようになっています。


ムービーの最後には、小型の実験模型を使った走行実験の様子が一瞬だけ収められていました。


なお、このハイパーループ構想をめぐっては、HTT以外の企業でも開発が進められています。HTTとよく似た名前の「Hyperloop Technologies」はネバダ州の砂漠の中に試験用の軌道チューブを建設する作業を進めており、2016年中にも時速700マイル(約1100km/h)で車両を走行させる計画を進めています。

時速1000kmオーバーの次世代移動体「Hyperloop」の試験用チューブが砂漠に建造される - GIGAZINE

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in ハードウェア,   乗り物,   サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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