なぜ昔の彫像のペニスはあんなに小さいのか?


美術館で彫像を見ているとその美しさに感じ入りますが、一方で気になってくるのが「なぜそろいもそろってペニスが小さいのか?」ということ。この疑問について、美術史の専門家であるエレン・オレドソンさんが真面目に解説を行っています。

“Why do all old statues have such small penises?” | How To Talk About Art History
https://howtotalkaboutarthistory.wordpress.com/2015/08/30/why-do-all-old-statues-have-such-small-penises/

オレドソンさんが「なぜ昔の彫像のペニスはあんなにも小さいのか?」というトピックでブログを書くことを決めたのは、ブログの読者から質問を受けたため。読者の示す「昔の彫像」は古代ギリシャや古代ローマの時代に作られた彫像を指しているのだと推測されています。


古代ギリシャの彫像のペニスが小さいのには2つの理由があります。まず1つ目は、彫像のペニスが弛緩した状態であるため。そしてもう1つの理由は、当時の男性的な美しさの基準が、現代とは大きく異なっていたためです。現代では男らしさを示すものとして大きなペニスに価値が見いだされていますが、古代ギリシャでは大きなペニスよりも小さなペニスのほうがよいと考えられていました。歴史学者ケネス・J・ドーヴァー氏の著書「Greek Homosexuality」によると、当時、大きなペニスは「愚かさ」「色欲」「醜さ」を連想するものであったため、小さなペニスの方が文化的には価値が置かれていたとのこと。


しかし、巨大なペニスを持った彫像も存在します。例えば、以下は巨大なペニスを持ったサテュロスの彫像。サテュロスはワインと女性と美少年を愛したという神話上の生き物です。


また、以下は男性の生殖力の神であるプリアーポスの彫像。プリアーポスはヘーラーという神から永遠の勃起・インポテンツ・醜さ・愚かさの呪いをかけられており、他の神々からも忌み嫌われているそうです。


上記の例に見るように、古代ギリシャに見る大きなペニスは色欲や愚かさを連想させたり、サテュロスのように動物じみた振る舞いを連想させるものでした。古代ギリシャにおける「理想の人」は知的で理性のある人間であり、性行為は好まれていたものの、むしろ小さなペニスであるほうが論理的でいられるという考えだったようです。

そして、古代ギリシャの彫像はバランスと理想主義が全てだったために、ユーモアやグロテスクさを含んだ大きなペニスの彫像はあまり作られなかったというわけです。


古代ローマの人々は大きなペニスに対して古代ギリシャほどネガティブな印象を持っていませんでしたが、彫像においてペニスのサイズは小さいまま。その後、ルネサンスの時代にも古代ギリシャ・古代ローマの彫像が大きな影響を及ぼすことになり、「小さなペニス」という慣習は後の世に伝わっていくことになります。

ルネサンス時代に作られた小さなペニスを持つ彫像として有名なのが、ミケランジェロが作ったダビデ像。2005年にフィレンツェの医師2人が「ダビデのペニスは恐怖によって小さくなっている」という内容の論文を発表しており、論文によるとダビデの体は巨人との戦いを前にあらゆる部分が恐怖を示しており、ペニスも例外ではないとのこと。歴史的な背景と関係なく芸術を解釈するのは非常に興味深い、とオレドソンさんは語っています。

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