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ハイパーループ開発陣営の一つ「Hyperloop One」が実物大の車両で時速310kmの走行に成功、ムービーも公開


実業家のイーロン・マスク氏が提唱し、現在はHyperloop Transportation Technologies(HTT)と並んで実現に向けた開発を競う企業「Hyperloop One」が、実物大の車両を使って時速約310kmでの走行に成功しました。

Hyperloop One Goes Farther and Faster Achieving Historic Speeds | Hyperloop One
https://hyperloop-one.com/hyperloop-one-goes-farther-and-faster-achieving-historic-speeds

Hyperloop One pod reaches almost 200 mph in new test – BGR
http://bgr.com/2017/08/02/hyperloop-one-test-speed-record/

ハイパーループ構想の実物大車両を使った開発を進めてきたHyperloop Oneは、ネバダ州に建設した試験用トラック「DevLoop」で実施したテスト走行でこれまでの最高速となる時速192マイル(時速約310km)という速度にまで車両を加速させることに成功しました。DevLoopは全長約500メートルという試験用のトラックで、テスト用車両は300メートルまで加速を続けて最高速をマークした後に、200メートルかけて減速して停止したとのこと。


今回の実験で用いられた車両「XP-1」は、出力3151馬力というリニアモーターを搭載した車両。Hyperloop Oneは2017年5月に最初の実物大施設での試験走行を実施していたのですが、この時の車両の出力は891馬力だったことと比較すると、順調に大出力化が進められている様子もうかがえます。


時速300km超というスピードは日本の新幹線やヨーロッパの高速鉄道「ユーロスター」などと肩を並べる速さですが、Hyperloop Oneが目指している「時速250マイル(時速約400km)」を実現するためにはさらに長い試験用トラックが必要。しかし、順調に規模拡大が進めば、これまでの実験の進み具合からみても今後確実にクリアできるものと考えてよさそう。

さらなる高速化を実現するためには、ハイパーループ構想の要でもある「減圧化」が不可欠になってきます。チューブ内部の空気を減圧することで空気抵抗を減らし、音速を超える速度を実現するというハイパーループですが、今後の課題はいかにしてチューブ全体を減圧するか、そしてそこに出入りするための機構を実現するかにかかってきます。


出入りする機構は将来的にハイパーループの「駅」を設ける時に不可欠なものとなってくるわけですが、もちろん構想段階からその解決方法についても考案されています。Hyperloop Oneでは今後、本線となるチューブから分岐する引き込み線のようなものを作り、減圧状態と大気圧を往き来するための機構のテストを実施し、実現に向けた技術開発を進めるとのこと。

さらには「車両の制御」や「安全性の確保」などの各種技術の確立や、その先にある商業化に向けた地方自治体との取り組みなどが待ち構えていますが、現段階ではおおむね順調に進んでいる模様。つい先日も「初走行に成功した」というニュースが出た途端に、今度は「時速300kmを超えてきた」という脅威のスピード感で開発が進められているということもあり、目の前の課題も実はあっという間にクリアされて営業運転が開始される……という未来もそう遠くはなさそうです。


今回のテスト走行の様子を捉えたとみられる映像「Phase 2 Test Recap」が公開されています。

Phase 2 Test Recap - YouTube


今回の試験は「Phase 2」と呼ばれるもので、実物大のポッドを使って走行実験を行うもの。まずは、台車部分だけのテストが行われます。よく見れば、車体前面の情報は秘密のためか、モザイクがかけられています。


ポッドが走行するのは、直径3メートルほどのチューブの中。今後は中の空気を抜いて真空に近い状態にするためか、フタはオートクレーブ(圧力釜)のような形状になっています。


まずは台車だけの走行が行われ……


動作を確認。振動を吸収するのか、もしくは走行中は不要の車輪を格納するためなのか、バネとダンパーのような機構が見えます。


そしてついにポッド本体を装着。


クレーンで注意深く下ろして結合すると……


実物大のポッドが完成。


チューブの中に押し込みます。


そして走行開始。収録されている音声が本物であるとすれば、ほとんど大きな騒音も立てずに走行している様子がわかります。


開発チームもガッツポーズ


映像に収められているのは、「時速310km」とするにはいささか遅く見える光景でしたが、リリースによると確実に最高速をマークした模様。今後は実際に減圧したチューブ内にポッドが出入りするための「エアロックシステム」を開発する「Phase 3」の段階へと進むことになっています。


すでにハイパーループの仕組みについては理解している人もいると思われますが、Hyperloop Oneはその仕組みを開発するムービーを新たに公開しています。

Hyperloop Explained - YouTube


ハイパーループの車両が走るのは、電気を使って回転する「モーター」と同じ原理。ただし、ハイパーループには回転型のモーターは使われていません。


その代わり、ハイパーループでは磁力を生みだす電磁石を直線上に配置して……


ガイドとなるレールの上を浮上するポッドを電磁石で引っ張ります。まさにこれは「リニアモーター」の仕組み。海外では磁石(Magnet)で浮かぶ(Levitate)という意味の「MagLev」という呼称が一般的です。


ハイパーループはチューブの中を音速を超えるスピードで進む乗りもの。その理由は、高速走行時に大きな抵抗源となる空気の存在を排除するため。チューブの中を、旅客機が飛ぶよりも高い高度20万フィート(高度約6万メートル)という上空と同じ気圧に下げることで、空気抵抗を押さえて高速性と省電力性を両立するほか、音速を超えた際の衝撃波を軽減することも目指されているのかも。


ハイパーループは地表を旅客機よりも速い時速約1200kmで走ることで、鉄道だと5時間かかるロサンゼルス~サンフランシスコ間をわずか40分足らずで結ぶという超高速移動手段。今後はドバイで実際の設備の建設が計画されていたり、韓国でも計画が進められているなど、世界の交通手段を飛躍的に変化させる可能性を秘めています。

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in 乗り物,   動画, Posted by darkhorse_log

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