取材

溶岩火口の前に立つラスボス気分が味わえるエチオピアのダナキルツアー


「ガッハッハッハ!!よくぞやって来た」という台詞がよく似合っていたシルエット。3時間をかけて登った火山の火口には溶岩湖がありました。ドロドロとした赤いマグマがうごめく湖面。現実離れした世界が広がっています。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。2015年10月ごろ、バックパッカーとなってエチオピアを旅していた時に参加したツアーで、「生きている地球の鼓動」を目の当たりにしました。

◆ダナキルツアー
南米のウユニ塩湖と並んで、最近の世界一周バックパッカーの中で話題沸騰となっているのが、エチオピアのダナキルツアーです。このツアーの最大の魅力は、火山の頂上で見ることのできる溶岩湖。首都アディスアベバから北に直線距離で500km離れたメケレという街がツアーの基点でした。たくさんの旅人がブログに情報に載せていますが、見どころを全部回る3泊4日のツアーで400US$~500US$という値段。メケレには有名な旅行会社が2つほどありますが、私はエチオトラベルを利用しています。

私が旅した頃のエチオトラベルは、毎日ダナキルツアーを行っていました。ツアーにはエルタ・アレ火山(溶岩湖)と、ダロール火山(奇景)と2つの大きな見どころがあるのですが、それぞれ別の日のグループと一緒に周ります。私は1、2日目にエルタ・アレ火山(溶岩湖)に登ったのですが、ツアー3、4日目のグループと一緒でした。3、4日目のダロール火山(奇景)の散策は、ツアーに参加したばかりのグループと合流。旅行会社は効率よくお客さんを捌きます。

ツアー中の移動は4WD。


◆エルタ・アレ火山
ツアー当日は朝の8時にメケレの旅行会社前へ集合。この日の夜に火山に上ったのですが、休憩や昼飯を挟んでの、終始のんびりとした行程でした。ツアー全般を通してですが、随分と緩やかなスケジュールが組まれています。シャワーなしはもちろん、トイレも野外という微妙な環境なので、もっとテキパキやって拘束時間を短くして欲しかったです。早く帰りたかったのです。

溶岩石を手にとって。


随分と殺風景な景色が広がっていました。


このような場所でも、生活を営んでいる人々がいます。


溶岩湖はこの山と思いきや、一つ後ろの山でした。


16時ごろに、エルタ・アレ火山の麓の街に到着。


標高613mのエルタ・アレ火山は、地表にある火山の中では地球上で最も低く、かつ火口内には世界にも珍しい溶岩湖があることから、エチオピアでも人気の観光スポットなっています。ただし、隣国エリトリアとの国境に近く、治安に問題もあって、個人での訪問は不可能。ツアーでも銃を持った護衛が付いて周ってくれました。2012年には武装集団が観光客を襲撃して死者もでています。

◆マグマうごめく火口
18時過ぎ、日が暮れたところで登頂開始。序盤の道は緩やかでトレッキングのようでした。辺りが暗くなったところでヘッドライトを取り出します。10kmと少しの行程でしたが、前日の睡眠不足もたたって、頻繁に休憩があったにも関わらずぐったり。終盤の火口付近の道は、少し勾配が急になります。ようやくついた頂上のキャンプ地。「おぉー」「すげぇー」と、そこから見えた暗闇を赤く燃やす火口に誰もが驚きの声を上げていました。

火山頂上のキャンプ地から、火口までは10分程度。風に乗ってやってくる刺激臭に、鼻をおさえて目をしぱしぱ。そして、とうとうたどり着きました。かっぽりと開いた大きな火口の底で、マグマがゆったりと動いています。よく観察してみると、湖面からぶくぶくとマグマが吹き出していたり。活動の盛んな溶岩湖の淵はまばゆい光を放っていて、激しくマグマが飛び散っていました。火口付近では、赤外線ストーブの前に居るようにマグマの熱が伝わってきます。一緒のツアーに参加している人たちも顔を火照らせながら、ぼんやりと溶岩湖を眺めていました。

エルタ・アレ火山に登ったものだけが見える溶岩湖。


のっそりとマグマは動いています。


溶岩湖の表面は平坦でもなく、生きているかのように脈動していました。


波打つマグマ。


活動が盛んな溶岩湖の付近では、小規模な爆発を繰り返していて、辺りに粘り気と重さのあるマグマ粒を撒き散らしていました。


エチオピアのダナキルツアーで訪れるエルタ・アレ火山の溶岩湖 - YouTube


脳裏をよぎるのは「地獄の業火」という言葉。


惹き込まれるようにマグマを見つめて。


火口からキャンプ場に戻ると、もう24時というのに夕食となるスパゲッティの配布。一気に平らげると地べたにマットを引いただけの寝床で、土の匂いを嗅ぎながら眠りにつきました。

◆翌朝も火口へ
朝は5時過ぎ、「動きたくないでござる」と目覚めは悪し。ちらほら動き出す人を横目に、諦めるつもりまんまんだったのですが「ここまで来てこれでいいのか」という内なる良心に苛まされ、ようやく重い腰を上げました。朝の火口も見に行きます。この判断は正解。明るくならないと見られない景色がありました。

夜明け前の溶岩湖。


記念写真を振り返ると、ゲームに出てきそうなラスボスのような格好でした。勇者をやってくれるお友だちを見つけて「ガッハッハッハ!!よくぞやって来た」と遊ぶのも良さそうです。誰かやって下さい。


溶岩湖にはしゃぐ観光客バージョン。


夜が明けるとともに、溶岩湖の全貌が明らかに。


灰色に固まっていたマグマの表面。


象の皮膚のようなゴワゴワとした質感でした。


手でつまめそうな位の皺があります。


グツグツしたマグマがまるで鍋で料理中の何かにも見えるエルタ・アレ火山の溶岩湖 - YouTube


エキゾチックで熱い夜の顔とは違い、朝はすっぴんで随分とさっぱり。


火口からキャンプ場のある淵までは、寒々しい光景が広がります。


不毛なる世界。


溶岩の流れた後がトンネルになっていました。


6時30分ごろから下山を開始。


溶岩湖のあったエルタ・アレ火山を振り返って。


◆他の見どころ
この溶岩湖以外にも、ダナキルツアーにはこんな見どころがあります。

・アサレ塩湖
南米のウユニ塩湖は乾季だったので、塩の大地と化して自転車で走ることができました。このツアーではアサレ塩湖という場所に立ち寄ります。水が張っているので、鏡張りに期待したものの、その感動は見当たらず。それでも、遠くまで見渡せる地平線と開放感は最高でした。水があるということで、ヒンヤリと風が拭くのもまたいい。

アサレ塩湖と地平線。


塩の大地に立って。


・キャラバン隊
塩湖の周辺では、塩の採掘が行われていることからラクダのキャラバンも見ることができます。とはいっても、前持った演出もなく行き当たりばったりなので、もたもたしていると見逃します。もっとゆっくりとラクダを眺めていたかったです。

優しい目をしたラクダとロバ。


人、ラクダ、ロバという構成のキャラバン隊。


・ダロール火山
海抜下に位置するダロール火山は、噴火活動によって奇観を作り出しています。違う星に迷い込んだかのように、次々と見たことのない景色が飛び込んできました。

サンゴ礁のような黄色い塩の塊。


スクランブルエッグをぶちまけたような大地。


抽象画のように現実離れしていた場所でした。


違う星に迷い込んだかのようなエチオピアのダロール火山にある奇景群 - YouTube


噴出口の有機物が固まったあとは、エイリアンが抜けだした卵の殻のよう。


・子ども
あとは、そこら辺で無邪気に遊ぶ子どもたちを追いかけるのも楽しいでしょう。素敵な写真が撮れますが、子どもたちを集めすぎると収拾がつかなくなるのでご注意を。お母さんの背中に隠れた赤ちゃんにも注目してみてください。1枚の布を体に巻き付けて赤ちゃんを背負うのですが、エチオピアは両肩がけという珍しい形でした。たすき掛けだったり、腰巻きだったり、アフリカは場所によって赤ちゃんの背負い方が違うのです。

ツアー中に利用するゲストハウスの愛らしい看板息子。


こちらの子どもたちは、落とし穴を作って遊んでいました。


これまでの旅の中で一番高額な出費となったダナキルツアーでしたが、溶岩湖は一生に一度見るのも難しいでしょうから、訪れることができて良かったと思います。母なる地球の神秘を体感できる素敵な場所を見てきました。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
究極の地熱発電とも言われる「マグマ発電」が実現に向けて前進 - GIGAZINE

ドローンを使って噴火する活火山に接近して激写したムービー - GIGAZINE

アフリカの砂漠に新しい海が誕生しつつある - GIGAZINE

空想世界を現実に持ち込んだような世界の奇妙な風景10景 - GIGAZINE

火山の溶岩が吹き上がる側で撮影した恐るべきムービー - GIGAZINE

ボリビアからチリに抜ける「宝石の道」は世界の果てを感じさせる絶景の連続 - GIGAZINE

水と緑の地球を忘れさせる砂の世界は別の惑星、ナミブ砂漠はナミビア観光のハイライト - GIGAZINE

in 取材, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.