ロックが禁止されていたソ連で「退廃的音楽」を入手するための「骨レコード」とは?
By leted
1945年から1989年まで44年間にわたって続いた冷戦当時、ソビエト連邦では西欧由来の音楽や芸術が「退廃的」「堕落した文化」として扱われ、音楽レコードや芸術品の輸入が全面的に禁止されていました。そんな中でも「スティリャーガ」と呼ばれた10代の若者によるサブカルチャー集団の間では、ロックンロールやジャズが人気を集めていたのですが、ソ連の若者たちが最新の西欧音楽を密輸していた意外な方法が明らかにされています。
When Rock Was Banned in the Soviet Union, Teens Took to Bootlegged Recordings on X-Rays | Smart News | Smithsonian
http://www.smithsonianmag.com/smart-news/soviet-hipsters-bootlegged-banned-music-bone-records-180957505/
冷戦当時のソビエト連邦は、対立する「仮想敵国」の思想流入を防ぐため、公式的に西欧文化の音楽や芸術を禁止していました。一方で、当時のソ連の10代の若者の中にはロックンロールやジャズなどの禁止されたサブカルチャーを愛するグループが存在していましたが、最新のヒット曲を密輸するために使われていたのは「ボーン・レコード」と呼ばれるレントゲン写真を用いた手製のレコードでした。
当時のソ連では退廃的音楽の禁止に加え、レコード盤の素材となるポリ塩化ビニールが不足していたため、西欧からの最新ヒット曲が非常に入手しづらい状況が続いていました。そこで10代~20代で「スティリャーガ」「スタイルハンター」と呼ばれた独特のファッションを持つ若者グループたちは、安価で大量にビニール素材を得る方法を思いつきました。それが「撮影済みのレントゲン写真を使うこと」で、その素材ゆえに若者たちから「肋骨上の音楽」「ボーン・レコード(骨のレコード)」と呼ばれていたとのこと。
By Charlie J
密輸業者は密輸したレコードを円板カッターで複製できることに気づき、ボーン・レコードは地下市場で大量に販売されるようになりました。ボーン・レコードによってソ連の若者たちはエラ・フィッツジェラルド、エルヴィス・プレスリーなどの最新ヒット曲をシェアできるようになったとのこと。
一方で、ボーン・レコードの品質は決して良くはなく、音質はオリジナルより劣化していたほか、レコード盤の片面しか録音できませんでした。中心穴はタバコの火で空けられることが多かったそうですが、密輸されたレコード盤が1枚5ルーブルだった当時で、ボーン・レコードは1枚1ルーブルという価格で販売されていたことで人気を集めたわけです。そんなボーン・レコードも1958年に禁止されてしまったのですが、現存するボーン・レコードは数十年たった現代でも音楽を再生可能。当時作られたボーン・レコードを試聴できるウェブサイトも存在しており、以下からどんな音楽が録音されていたのか、確かめることができます。
X-Ray Bootlegs — X-Ray Audio
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