ジョジョOPなど高クオリティ短編動画で有名な神風動画によるオリジナル長編アニメ「COCOLORS」の製作秘話を中の人が熱く語ったトークイベントレポート


アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのオープニング映像や「未来光子 播磨サクラ」など、CGを駆使した超絶アニメーションを作ることで知られているのが神風動画です。そんな神風動画がアニメのオープニングやミュージックビデオ、CMなどの短編ムービー以外にもそろそろ着手したい……ということでスタートさせたプロジェクト「GASOLINE MASK」では、CGと版画が奇跡的な融合を遂げるというオリジナル作品「COCOLORS」を鋭意製作中です。まだまだ謎に包まれまくった状態のままのCOCOLORSですが、製作陣がマチ★アソビ vol.15に参戦してどのようにして高いクオリティのオリジナル作品を作っているのか熱く語ってくれました。

神風動画
http://www.kamikazedouga.co.jp/

会の名前は「COCOLORS(コカラス)中間報告会」ということで、ufotable CINEMAのシアター2でスタート。


会場に登場したのは、左から神風動画の清水一達プロデューサー・横嶋俊久監督・企画/広報担当の宮下卓也さん


というわけで、まずは初めましての人も多いかも、ということで監督の紹介から。COCOLORSの監督を務める横嶋さんは、これまでEXILE「愛すべき未来へ」のMVや「ドラゴンクエストIX ~星空の守り人~」オープニングムービー、「FINAL FANTASY TACTICS 獅子戦争」のムービーなどを手がけてきた人物。

「MVやゲームムービー、CMまで幅広く手がける実力派」として紹介されたのですが、監督は「ドラゴンクエストシリーズとFFシリーズの両方に携わったことがあることが自慢」と語っていました。


EXILE「愛すべき未来へ」のMVは以下から見られます。

EXILE / 「愛すべき未来へ」 - YouTube


続いて企画の成り立ちについて。前回と前々回のマチ★アソビで神風動画は「GASOLINE MASK」プロジェクトと「COCOLORS」についての発表を行ってきたのですが、そもそも前回来てくれた人はどれくらいいるのだろうか?ということで会場に質問してみると、全体の半数くらいが挙手していました。


そもそも神風動画というのは、代表取締役である水崎淳平さんが桟敷大祐さん・森田修平さんの2人と活動をスタートしました。1998年にCGでキャラクターものをやろうということで「ガソリンマスク」が作られることとなり、その後、神風動画は法人化も果たします。そんな神風動画の社訓は「妥協は死」というもので、これに恥じないようにこれまでいくつもの新しいことにチャレンジしてきたそうです。

そんな神風動画が新たにチャレンジしようとしているのが「長編アニメ」。最初の法人化前の段階ではやること自体に意味があったという「ガソリンマスク」が、今の成長した神風動画によって長編プロジェクト「GASOLINE MASK」として生まれ変わるわけです。ただし、作品自体には大きな関連性はない模様。そして、「GASOLINE MASK」プロジェクトとしてひとつの作品を作り出すにあたって、ストーリーを描くことに挑戦してみよう、ということで声がかかったのが横嶋監督だったわけです。

なお、横嶋監督はPVなどの短編ムービー以外に長編アニメも作ってみたい、と考え「COCOLORS」の監督の話が舞い込む直前に神風動画を退職したそう。しかし、その際に代表取締役の水崎さんから「長編あるよ!」と声がかかり、結局再び神風動画に戻ってくることになるという不思議な体験をした模様。これは会場どころか一緒に登壇した広報の宮下さんも知らなかったそうです。


「CGで長編って大変じゃないの?」という質問に対して、横嶋監督は「CGでキャラクターを作るのはすごいコストがかかる」と回答。キャラクターをモデリングし、動かせるようにセットアップを組んで、ようやくアニメーターが動きをつけられるようになります。しかし、物語となるとたいていの場合はキャラクターが複数いるわけで、そもそも新しい長編となるとモブも出したい……となってしまいそうなると何かと大変です。

そこで出てきたアイデアが、初代ガソリンマスクのようにマスクをかぶせてしまえ!というもの。初代は「大変だからマスクをかぶせちゃえ!」という発想だったそうです。

ここでいったん話が切り替わってキャラクターデザインの鈴木理さんの紹介。ドラゴンクエストシリーズや「黒猫のウィズ」などのキャラクターデザインの他、アートディレクターもこなしており「視覚からの情報で、匂いすら知覚できるほどの空気感を描き出すデザイナー」とのこと。


その鈴木理さんがデザインした主人公の「アキ」と「フユ」。「最初のラフ」とは書かれているもののほぼ決定稿に近いものになっているそうです。


主人公を基に作られたキャラクター素体


こちらは大人版。


いろんなバリエーションがありますが、あくまでマスクをかぶったキャラクターにすることで、素体ベースから比較的簡単にさまざまなキャラクターを作成できるようにしたわけです。登場キャラクター全てがマスクをかぶっているので、顔や髪の毛など細かい部分がなく、キャラクターを動かすことにも集中できそうな印象ですが、実際には動きをつける現場側からすると、細かいパーツの変化なしでキャラクターたちの感情を表現する必要があるので非常に大変だそうです。


横嶋監督いわく、今作でモチーフにしている木版画とアニメには似通った部分が多いそうで、例えばアニメでいうところの輪郭線が版画にもあり、Photoshopのレイヤーを重ねるような画の作り方が版画でも行われているそうです。そこで、「版画的な表現をアニメ側に落とし込む」というチャレンジに「COCOLORS」では取り組んでいます。この挑戦は簡単に言うと「版画みたいな線でアニメができたらな」ということらしいです。

横嶋監督と清水プロデューサーたちは版画を刷ったその質感を確かめたりもしている模様。実際に会場で見せてもらった版画で刷った「COCOLORS」。


なお、プライベートでもマチ★アソビに来ていたくらいさまざまなアニメを見てきたという清水プロデューサーも、「これまでこういう見た目のアニメは見たことない」と語っており、「COCOLORS」が完成した暁には誰も見たことのない映像になるのではと語っていました。

そんなわけで、「COCOLORS」では「近現代の版画表現をアニメに落としこむ」と「マスクを被るという枷から生じる奥行き」という2点がポイントになっているわけです。


そして「COCOLORS」はどんな世界になるのか?


横嶋監督がさまざまな場所を回って面白い見た目のものをピックアップして世界観の基礎が作られているそうです。例えば栃木県宇都宮市にある大谷資料館は人の手で作られた石切場だそうで、ここから着想を得て「COCOLORS」の地下の世界が誕生しています。さらに、秋田県由利本荘市にある宇宙船のような見た目の建築物「カダーレ」にもインスパイアされているそう。

「COCOLORS」は急激な環境変化が起きた世界というコンセプトでできており、「変化に伴って地上から地下に地面を掘り進めた」という設定で世界観が設計されています。なので、地下の方にはとても有機的な場所があるのですが、中間地点には有機的なデザインと無機的なデザインが混ざった場所もあるそう。つまり、有機的なデザインの大谷石の石切場と、無機的なデザインのカダーレを参考にしながら「COCOLORS」の地下世界が生み出されたというわけです。

「COCOLORS」の面白い点は、通常のアニメとは異なり美術原図の作業が先行している点。通常は複数の作業が平行して行われますが、「COCOLORS」では、まず橋口さんを中心とした原図チームが、本作の世界観を作りながら着手しております。このためまず全カットの美術原図が完成し、アニメーション作業に入る前に、全編をより完成図に近い形で見ることができます。これには清水プロデューサーが「劇場版以上の作り方だと思う」とポツリ。

そういうわけで完成した世界観ラフその1がコレ。


ラフその1に生活感をプラスしたのがコレ。この段階だとまだまだ「大谷石資料館」と「カダーレ」のイメージに引っ張られすぎている、ということで……


美術原図の橋口コウジさんに好き勝手して作ってもらったのがこれ。一気にイメージが変化してしまいましたが、「ここなら鈴木さんが描いたキャラクターが走っていてもおかしくない」と監督も納得のできに仕上がった模様。


そして実際にどうやって作っているのか、というお話。最初にあがってくる背景ラフは……


線をブラッシュアップして……


これくらい書き込みを増やします。


これに色をつけることでようやく背景が完成。


そんな風にして作られた背景の数々。鳥居モチーフのものや……


入り組んだ街中


これは葬儀場だそうです。


葬儀場は原画を上下反転させるとドクロに見えるようなデザインになっています。


他にも、キャラクターを作成する際、細部を把握するために主人公のフィギュアを作成したそうです。


細部に至るまでこのディテールで立体化。ものすごい完成度であることがビンビン伝わってきます。


さらに、前回のトークショーの中でも登場していた造形作家の鎌田光司さんに依頼して作ったという、歯車やパイプのようなものが集まってできた仏像のような物体。これを鎌田さんに製作してもらう際、監督は「肉体を感じさせる造形」と「心臓のようなものも足して欲しい」という2点しか注文しなかったそうですが、できあがりは圧倒的生々しさを持ったものに仕上がっています。


これを橋口さんに原図で出してもらい、絵に落としこむとこんな感じ。絵でも立体物でもとにかく圧倒的な存在感を放ちます。


というわけで、ここでタイムアップ。最後は前回のマチ★アソビで上映されたものと同じティザームービーが上映されました。このムービーの中には今回の中間報告で語られた背景画などが複数登場しており、その経緯を聞いたあとだとまた違った視点から映像が楽しめました。

GASOLINE MASKプロジェクト第2弾 『COCOLORS』 ティザームービー - YouTube


ムービーがマチ★アソビで公開されたのは5月だったのですが、なんとこのムービーは同年の4月に神風動画に入社したばかりの新人たちと一緒に突貫作業で作ったものだそうです。現在も絶賛製作中という本編映像が一体どんなクオリティに仕上がるのか……期待が膨らみます。


神風動画では物販ブースも出展しており……


ここには「COCOLORS」のポスターも展示されているので要チェックです。

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