メモ

ドローンレースの実態をものすごい臨場感で見られるムービーが公開、問題を抱えつつ広がりを見せるレースの現状とは?


日本では首相官邸屋上にドローンを侵入させる事件の影響などでドローンに関するを取り巻く状況は大きく変化しようとしていますが、どうやら世界的にもドローンを取り巻く状況は過渡期にあるといえるようです。オーストラリアにおけるドローンレースの状況をまとめたMashableの記事では、現実や規制と折り合いを付けながら実施されるレースの実態が描かれています。

The underground world of drone racing in Australia
http://mashable.com/2015/06/11/drone-racing-australia/

2015年6月6日、メルボルン郊外にある廃工場の建物ではメディアを招いてドローンレースの様子が公開されたそうです。ドローンのパイロットたちはそれぞれレース専用に組み立てられた機体を持ち込み、機体に搭載されたカメラの映像をヘッドセットで見ながら操縦するFPV(一人称ビュー)でレースを行いました。その時の様子を収めたムービーが公開されています。

Media Race - YouTube


模擬レースは、廃工場の建物内に設けられたコースを周回する形式で行われました。


鋭く機体をバンクさせながらコーナーをクリアするドローン。映像はフルHD画質、しかも60fpsで撮影されているので、YouTubeの再生設定で最高画質にするとものすごい臨場感を得ることができます。


レース後には機体を調整したり、デコレーションなどのモディファイを施すパイロットたち。自分だけの機体を作り上げるのもドローンレースの魅力の1つのようです。


日本でも市販されているようなドローンに比べ、レースで用いられているのはパフォーマンスを重視した小型・軽量タイプの機体。これにLEDやステッカーなどでデコレーションを施してギラギラとド派手な機体が作られています。飛ぶ速さには直結しないデコレーションですが、ひょっとするとこれはフライト中に相手からの視認性を高めるための工夫の意味も含まれているのかも。


オーストラリアでは、このようなドローンのレースイベントが郊外のゴーカート場や農場、廃工場などで行われているとのこと。典型的なタイムスケジュールでは、午前10時から5時間の練習セッションが設けられ、その後1時間が種々のレースに充てられるようになっているそうです。

このドローンレースに人々の関心が引きつけられるようになったことから、ドローンレースを専門にオーガナイズする企業QAROPはオーストラリア国内で初となる法規制にのっとったリーグレースを主催し、オーストラリアじゅうの愛好家のためにイベントを開催するようになりました。


新たにこのイベントに参加するようになった愛好家のピーター・リッチーさんは、これまでにもラジコン飛行機を趣味で飛ばしているほか、さらには実際の飛行機のライセンスを取得して飛行経験をも持つ人物。リッチーさんはMashableの取材に対し、「FPVのコンセプトが大好きです。操縦席に座った気分にさせてくれ、しかも墜落によるケガのリスクなしに楽しさを与えてくれるのです」とその魅力を語っています。

ドローンレーサーのマーク・コッキオ選手は、「小さなサイズのクアッドコプターが開発されたことで、レースがより簡単に、そして安く楽しめるようになった」と語ります。また、ドローンの魅力については「飛んでいるときは完全に自由で、自分の好きな方向に向かって飛ぶことができます。レースはさらにエキサイティングで、速く飛ぶためには正しいラインを取る必要があり、何かミスをしたときには数分の一秒という短い時間で反応しなければなりません。ほんの小さなミスが命取りになるのです」と語ります。


QAROPの代表であるクリス・バラード氏は、「ドローンを飛ばせる場所や愛好家の増加を妨げているのは、時代遅れの航空法です」と問題を指摘します。バラード氏によれば、オーストラリアの空の安全に関する法的機関のAustralian Civil Aviation Safety Authority(CASA)が定めた規制は20年も前に、しかもラジコン飛行機を念頭に置いて制定されたものだとのことです。

この規制では、模型飛行機を飛ばす際には機体を「視線の届く範囲」に留めることが定められていますが、ヘッドセットに搭載された画面を見ながら操縦するFPVはこの規制に抵触するというのです。さらに、屋外での飛行は「模型飛行機クラブ」に所属することが必要で、使用できる電波の周波数もごく限られたものになっているとのこと。バラード氏はMashableに対し、「ドローンの世界を後退させているのは技術そのものと法律の壁です。例えば、技術的には1度に8名のパイロットがドローンを飛ばしてレースすることが可能になってきていますが、実際の法規制ではわずか4台のドローンを飛ばすだけの電波しか使えないように定められています」と置かれた現状を語ります。


これに比べ、オーストラリアのお隣の国でQAROPもリーグ戦を開催しているニュージーランドでは法の規制がゆるく、ドローンを飛ばすことはまだ容易であるとのこと。バラード氏は「ニュージーランドでは法律が比較的オープンで、先進的なものになっています。それに比べてオーストラリアの法律は厳しいものです。規則が定められた1997年はもう20年も前で、現在われわれが飛ばしているものはほんの数年前に登場したものです。日々進歩するテクノロジーに対し、古い法律をあてはめることは非常に困難です」と問題を語っています。

オーストラリア国内で増え続けるドローンの現状を受け、CASAは近い将来に商用ドローンの規制法を調査すると表明しています。さらにそこでは個人用途やレース用などのレクリエーション用のドローンについての見直しが行われることにもなっているそうです。

現在の規定では、模型飛行機の飛行が認められているのは高度400フィート(約122メートル)までで、人で混雑した場所や、人から30メートル以内、そして夜間の飛行は認められていません。CASAのスポークスマンは屋内でのドローン飛行について「確かに屋内での飛行には法は適用されないと言う事実はありますが、『安全』に関する規定が優先されます。そのような場合にでも、人や財産に危害を与えるリスクがないことを保証しなければなりません」としています。


さらにスポークスマンは「ドローンレースを開催したい者には、そのようなリスクを起こさせない義務が課せられます。定められた法に従う必要があります」と語ります。CASAはドローンレースを企画する者に対し、「まずは私たちに相談して、どのようなアプローチを取ればいいか尋ねて下さい。私たちは常に『まずはCASAに相談を』というメッセージを発信しています」と呼びかけているとのこと。

このような規制が存在している中で、バラード氏率いるQAROPはリーグ戦を開催にこぎ着けました。バラード氏は「意志あるところには道がある、ですね」と語ります。「もちろん、やりたいことをやるのが一番ですが、そこには安全に関する問題、特にドローンの置かれた状況を理解していない人たちによる問題が存在していることも理解しています。メンバーに対しては、そのことを念頭に置いたうえで、自分たちの方法で進めるように言っています」と問題に対処する考え方を述べています。


レースに使われるような高性能ドローンは、ほとんど全てがパイロットたちの手作りによるもので、市販されているものが使われることはほとんどありません。そのため、レースに参加するためには比較的多くの予算が必要なことも事実です。ドローンそのものは既に数百ドル(数万円)レベルで手に入れることは可能ですが、競技レベルの性能を手に入れようと思うと、数千ドル(数十万円)レベルの費用がかかるのは避けられません。

その状況をバラード氏は「使える予算によって、いろいろなドローンを手に入れることは可能です。300ドル(約2万9000円)で手に入れられる機体もあります。しかし一方で、本気でドローンレースに取り組んでいる人のレベルになると、1機あたり2000ドル(約19万円)をかけることはめずらしいことではありません。さらに、レースの際には機体のトラブルを考慮して予備機を2~3機持ち込む人もいるほどです」と語ります。


前出のコッキオ選手も「最近ではレースデビューするためには1000ドルから2000ドル(約9万円~19万円)の予算が必要ですが、これには送受信機やヘッドセット、充電器などの機材が含まれています。危ないのは、レース機を1台手に入れてしまったが最後、感覚がおかしくなってしまって次から次へとアイテムを買うようになってしまうのです!そしてある日、自分のまわりには多くの機体やパーツがあふれ、何千ドル(何十万円)というお金を使っていたことに気がつくのです」と、ある意味で恐るべき状況を語っています。

今では多くの人々がドローンレースの魅力に引き寄せられています。バラード氏が率いるQAROPには農家や正規の免許を持つドローン操縦士、学生、12歳の少年やIT人間など多くの種類の人が集まっています。ここでは、「いかに早く上達するか」ということが何よりも重要なポイントになります。


バラード氏は「これには多くの忍耐が必要で、長い学習曲線をたどって上達することが必要です。ハンダづけの方法やコンピュータープログラミングの基礎、エアロダイナミクスの知識、操縦方法、映像の送信方法など、自分のドローンを自分の手で作り上げて飛ばせるために学ぶべきことはたくさんあります」と語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
上空からダイナミックなムービーを誰でも手軽に撮影できる「ドローン」の置かれた危機的状況とは? - GIGAZINE

一人称視点で空を飛ぶ圧倒的速度とド迫力が体感できるFPVドローンレース高画質映像集がすごい - GIGAZINE

超高速で重力を無視して飛ぶドローンは自作可能で作り方やパーツはネットから入手可能 - GIGAZINE

空飛ぶドローンの視線そのままのパイロットビューで行うリーグ戦「Ultimate FPV Racing League」が圧倒的ド迫力 - GIGAZINE

スター・ウォーズのようなエアレースをドローンが繰り広げる - GIGAZINE

in メモ,   ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.