外国人が職人気質の寿司屋で学んだ「寿司の十戒」


日本の文化に関する情報を発信するアメリカ人ブロガーのトム・ダウニーさんは東京で初のランチとして渋谷にある老舗寿司料理店「やじま」を訪れました。そこで独特のこだわりを持つ職人気質の店主から「寿司は手で食べる」「寿司を口に含んだまま酒を飲む」など、さまざまな寿司の食べ方を教わったダウニーさんは、「寿司の十戒」というタイトルで衝撃的だった寿司の体験を綴っています。

The Ten ‘Commandments’ of Sushi — Gone — Medium
https://medium.com/gone/the-ten-commandments-of-sushi-4eac45192c7d

東京で初めて寿司屋に入ったダウニーさんは、空いていたカウンターの席に座ろうとしたところ、店主の矢島進さんからテーブル席で少し待つように言われました。その後ダウニーさんはちょうど矢島さんが目の前に立つカウンター席に呼ばれ、そこから矢島さんの"攻撃"が始まったとのこと。外国人であるダウニーさんはさまざまな「寿司のうんちく」を教わることになります。


カウンターに座ったダウニーさんへ最初に提供されたのはブリの握り。さっそく箸に手を伸ばしたところ、「Use your hand!(手で食べてください!)」と言われます。その後も「寿司を口に入れたら少し噛んで、飲み込む前に酒を飲む」といった、いろいろな寿司の食べ方や寿司の起源などを教わるうちに、ダウニーさんは「食事のストックホルム症候群に陥った」と表現しており、興味深い体験ができたことで非常に「やじま」を気に入ったそうです。全ての寿司店に共通するルールではありませんが、ダウニーさんは「やじま」で寿司を食べるときに守るべきルールを「寿司の十戒」として以下のようにまとめました。

◆その1:寿司は10分~15分で食べ終えるべし


寿司を飲み込んだタイミングで新しいネタが出てくるのを見たダウニーさんは、寿司の提供ペースを遅らせるよう頼みました。すると矢島さんは「もともと寿司は江戸時代の『寿司屋台』として始まったファストフードであり、座って食べる必要すらないんです」という寿司の起源について説明を始めました。ダウニーさんは寿司の歴史を理解したものの、「屋台じゃなくなった今でも素早く寿司を提供するのはなぜですか?」と尋ねました。店主はイカを刺身にして見せて3秒数え、「1秒ごとにネタの鮮度は低下していきます。だからこそ寿司をすぐに食べて、最高の鮮度で味わってほしいのです」と答えました。

◆その2:寿司はディナーではなくランチに食べる


ある朝、ダウニーさんは矢島さんと築地市場へやってきました。矢島さんは毎日早朝に1日分の寿司ネタを仕入れているため、「寿司はランチで出すものが一番鮮度が良いのです」とダウニーさんに教えました。もちろん「やじま」は夜もオープンしていますが、矢島さんは夜に出すネタの鮮度に合わせて、シャリの分量をランチの半分にして作るようにしているそうです。

◆その3:寿司は味わいだけでなくお店独特の香りも楽しむ


ダウニーさんは東京でいくつものスタイリッシュな高級寿司店を巡り、芸術的に盛りつけられた寿司を体験しました。店内はこぎれいで、店内に食材のにおいがすることもなかったとのこと。これに対して「やじま」の店内ではハマグリのスープの香り、酢飯の香り、網で魚を焼くにおいなどが感じられます。店内で感じられる食材の「香り」は寿司を楽しむ上で矢島さんのこだわりの1つでもあり、ダウニーさんもやじまのスタイルの方が肌に合っていたようです。

◆その4:寿司は天井の低い小さな店で食べるべし


「大きな寿司屋では天井が高過ぎるために魚の香りが逃げてしまいます」と語る矢島さん。小さなお店でほどよく魚の香りが感じられる寿司屋では、最高の寿司が味わえるとのこと。

◆その5:寿司は箸を使わず手で食べる


寿司が繊細な食べ物であるため、箸を使うと寿司が崩れることがあり、手で食べる方が良いとのこと。これはネタの鮮度が落ちる前に素早く口に運べる、という理由も兼ねています。

◆その6:提供された寿司はシャリが温かい内にすぐ食べる


寿司屋によっては数種類の寿司が一度に提供されることがありますが、多くの優れた寿司屋と同様に「やじま」では寿司を一貫ずつ、シャリがほんのり温かい状態で提供されます。そして寿司が提供されたら、最高の鮮度で味わうためすぐさま食べる必要があります。

◆その7:やじまの寿司は醤油とわさび入り。醤油とわさびは後から足すべからず


やじまの寿司は醤油70%にみりん20%と酒10%を加えて火にかけ、アルコール分を飛ばした「煮切り」をあらかじめネタの上に塗っておく江戸前寿司。わさびも入った状態で寿司を握るため、出された寿司を醤油につける必要はないとのこと。「寿司に生醤油は強すぎる」という矢島さんのこだわりによるものです。

◆その8:寿司を口に入れたら飲み込む前に日本酒を飲むべし


ダウニーさんはホタテの握りを食べた後に、その日初めて日本酒を口にしました。それを見た矢島さんは「寿司を食べたら、少し噛んで飲み込む前に酒を飲んでみてください」と言いました。ダウニーさんはアドバイスに従ったところ、塩気のあるホタテとキリッとした日本酒が口の中で交わる感覚は「パーフェクト」だったとのこと。

◆その9:寿司を味わっている間の雑談は厳禁


ラーメン屋の一蘭は各席に仕切りが設けられてラーメンだけに集中して食べられる「味集中カウンター」を採用しています。「やじま」のカウンターに仕切りはありませんが、寿司を食べている間は雑談せずに寿司だけに集中して食べてほしい、と矢島さんは言います。

◆その10:やじまの寿司を食べるには「寿司の十戒」に従うべし


10歳から寿司の修行を始めて、2015年で63歳になる矢島さんには、長年培ってきた並々ならぬ数々のこだわりがあります。そのため、やじまで寿司を食べるには店主のルールに従う必要があり、もしルールを守らないお客さんに対しては、次回から予約を申し込まれても「満席」と言って断るようにしているほど。

なお、いくつかの日本の高級料理店は「一見さんお断り」のお店があり、紹介がないと入れない場合がありますが、「やじま」では矢島さんのルールに従って寿司を食べる限り誰でも入店可能。また、矢島進さんと、共に店を切り盛りしている妻のヨシコさんは、1年以上前から英語の勉強を始めており、外国人客も歓迎しています。

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in , Posted by darkhorse_log

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