レビュー

本当にAmazonスマホ「Fire Phone」は失敗作なのか1週間ほど試してみて分かったこと


Amazonのジェフ・ベゾスCEOが自信を持って世に送り出したAmazon製スマートフォン「Fire Phone」は、ベゾスCEOの期待とは裏腹に、市場ではさんざんな評価を下され世間では「失敗作」と認識されています。Fire Phoneの何がいけなかったのかについてはすでに「Amazonのジェフ・ベゾスCEO入魂の「Fire Phone」はなぜ失敗したのか?」ということで記事にしていますが、実際に1週間ほど現物に触れて使ってみて「Fire Phoneは本当に失敗だったのか?」について考えてみました。

◆外観チェック
Fire Phoneはコンパクトな黒色のパッケージで表面のエンボス加工がグラデーションになっており、表面上部はつるつるなのに、下部に行くにつれてだんだんとエンボス加工が激しくなるというこだわりっぷり。パッケージにこだわるAppleと同等かそれ以上の気合いが入っていることがこの段階でわかります。


箱を開けると鮮やかなオレンジ色の内装とともにFire Phoneが登場しました。


中身は全部でこれだけ。Fire Phone本体・簡単な説明カード・SIMカード取り出し用ピン・USBケーブル・ACアダプタ・イヤホンが入っています。


Fire Phoneは4.7インチ(1280×720)液晶ディスプレイを採用。サイズは縦13.92センチ×横6.65センチ×厚さ0.89センチで重さは160グラム。SoCはSnapdragon 800、2GBのメモリ、32GBストレージと、スペックは最新のハイエンドモデルと比べてもほとんど見劣りしません。


ぱっと見て他のスマートフォンと違うところは前面に5つも搭載されたカメラの数々。四隅に設置されたカメラはフェイスモーショントラッキング用で、4つのカメラで顔の動きを逐一追跡し、裸眼3Dを実現する「ダイナミックパースペクティブ」機能を搭載します。もちろんモーショントラッキングカメラの他に、ビデオチャット用のフロントカメラもあります。


ホームボタンはアルミ製で質感は良好。


左側面にはボリュームボタン、カメラ/Fireflyボタン、SIMカードスロット。ボタンはすべてアルミ製。


底面にはスピーカーとMicro-USB端子。


右側面にはボタン類はなし。サイド部分はラバーコーティングされており、グリップ性・質感ともに良好です。


天面にはイヤホンジャック、スピーカー、電源ボタン。


裏面には銀色でAmazonのロゴ。全面ガラスで高級感があります。なお、ガラスは表面・裏面ともにゴリラガラス3です。


ガラスは天井が簡単に映り込むくらいピカピカ。


ベゾスCEOがこだわったと言われるF値2.0のレンズ・1300万画素・光学手ぶれ補正付きのリアカメラ。LEDフラッシュも搭載しています。


SIMスロットに付属のピンを差し込めばカードスロットを取り出せます。


Fire PhoneはiPhone 6やNexus 6と同じくナノSIM対応となっています。


Fire PhoneはDolby Digital Plusに対応。付属のイヤホンは音質はかなりいいものの、フィット感はイマイチかも……。


マグネットでピタっとくっつくのでコードがほとんど絡まらないところは秀逸です。


◆Fire OSを使ってみた
電源を入れると「fire」のロゴ。


OSはAndroidをベースにAmazonが独自のカスタマイズを施したFire OS 3.5を採用しており、記事作成時点ではFire OS 3.6.8が最新バージョンとなっています。


・ダイナミックパースペクティブ
Fire Phoneが持つ裸眼3D機能「ダイナミックパースペクティブ」が使われたロック画面はこんな感じです。

Amazonスマホ「Fire Phone」の裸眼3D「ダイナミックパースペクティブ」 - YouTube


最初は「おお!」となりますが、もちろん実用性はなし。裸眼3Dギミックに飽きた場合はダイナミックパースペクティブ機能はOFFにもできます。

・Fire OSの主なUI
Fire Phoneのメイン画面「Home carousel」はこんな感じ。画面は大きく3段に分かれており、上段にアプリのサムネイル、中段にアプリの関連情報、下段に電話、メールなどの各種アイコンが配置されています。


画面左端からスワイプすると……


こんな感じでアプリや設定画面に応じて追加ページが現れます。


画面右端からスワイプしても……


追加の情報にアクセス可能。Fire Phoneが採用するFire OSには基本的に「戻る」や「設定」用のアイコンがなく、その代わりに左右からスワイプすることで追加のページを表示できるようになっています。


画面上端から下方向にスワイプすると……


画面上部に機内モード・Wi-Fi・Bluetoothなどのクイックランチャーアイコンが、画面下部に通知が一覧で表示されます。


また、画面を上方向にスワイプすると……


iPhoneやAndroidと同じくアプリのアイコンが多数表示される画面(ホーム画面)に切り替え可能。画面を上下にスワイプすることで、3分割画面とホーム画面を行ったり来たりできます。なお、この上下スワイプ操作はホームボタンを1回押すことでも代用できます。


さらに、ホームボタンを2回連続で押すと実行中のアプリを選択して切り替えられる「Quick Switch」画面が登場。このアイコンを上下にスワイプして消すことでアプリを終了させられます。ホームボタン1回でホーム画面、2連続で実行中のアプリ選択画面を表示、アイコンを上下スワイプしてアプリを終了させられるなど、Fire OS自体はAndroidベースとは言え、そのUI設計は極めてiOSに近いものになっています。


・Fire OSのデザイン
これはFire Phoneで採用されているブラウザアプリ「Silk Browser」。3分割画面では中段に閲覧履歴を表示することができます。


Silk BrowserでGIGAZINEのトップページを表示させるとこんな感じ。なお、Fire Phoneは傾きセンサーを搭載しており、Fire Phoneを奥や手前に傾けるとページスクロールすることができます。


Silk BrowserでGIGAZINEを閲覧する様子は以下のムービーで確認できます。

Fire Phoneでさくさくネットブラウジングするとこんな感じ - YouTube


画面を横にすると3カラム分を表示できます。ただし、ディスプレイ幅(この場合は縦方向)が720ピクセルなのでそれほど情報量はかせげません。


ブラウジング中は、画面上部にURL入力ウィンドウ、画面下に戻る・進むアイコン、ページ選択アイコンを表示できます。


ページ選択アイコンをタップするとこんな風に開いているページを表示でき、さらに画面下でプライベートモードのON/OFFや新しいタブの追加も可能です。


Home carouselでメールを表示すれば新着メールが中段に表示され、この中段画面を上下にスワイプしてメールを次々と閲覧できるので非常に便利です。


・各種設定
Fire Phoneは使い方に応じて各種設定を変更できます。「Settings」をタップ。


設定項目はこんな感じ。かなり広い範囲で設定変更が可能です。


例えばキーボードを「日本語入力」に切り替えるには、「Keyboad」→「Chanege the keyboard language」の順にタップ。


一覧に日本語はないので「Download New Language」をタップ。


「Japanese」をタップ。


「Accept」をタップしてダウンロード。


一覧に「Japanese」が追加されるのでチェックを入れればOK。


また、テザリング機能を使う場合には「Wi-Fi & Networks」→「Set up a Wi-Fi hotspot」の順にタップ。


「Wi-Fi Hotspot」を「ON」にして、「Configure Hotspot」をタップ。


「Network SSID」「Password(パスワード)」を好きなものに設定すればOK。Fire Phoneをアクセスポイントとして利用できます。


スマートフォンではついついデータを使いすぎることがあるのでデータ使用量の管理は大切です。データ使用量を管理するには「Wi-Fi & Networks」→「See your cellular data usage」の順にタップ。


するとデータ使用量と各種アプリのデータ消費量を確認できます。さらに「Manage Data Limit」をタップすることで……


データ使用量に制限をかけたり、設定した容量に到達したらアラートを表示させたりできます。


・Fire OSで使えるアプリ
Fire OSはAndroidベースのフォークOSですが、Google Playサービスを使えないため、Google PlayストアからAndroidアプリをダウンロードすることはできません。そのため、Amazon独自の「Amazon Appstore」から専用アプリをダウンロードすることになりますが、iOS・Androidアプリに比べると、数の点で圧倒的に不利なのが現状です。記事作成時点で使える有名アプリはこんな感じです。

Facebook


Twitter


日本語入力アプリにはATOKがあるのが心強いところ。


Yahoo!JAPANアプリ


Pocket


Feedlyなどなど、有名どころのアプリはしっかりAmazon Appstoreでも用意されています。しかし、記事作成時点では、Chrome・Firefoxなどの主要ブラウザやGoogle Map・Google Now・HangoutsなどのGoogle関連アプリやLineはありません。


SmartNewsはないものの、Gunosyは用意されていたのでインストールしてみました。


表示されるのは当然のことながらアメリカのニュース。そこで、画面右上の設定アイコンをタップして……


「Country(国)」を「Japan」に変更……


したものの、やはりアメリカのニュースのみ。日本のニュースには未対応でした。


・Firefly機能
ダイナミックパースペクティブに並ぶFire Phoneの目玉である「Firefly」機能は、商品パッケージを撮影すれば商品情報を提示してくれる機能です。


Fireflyを起動させると自動的にカメラが立ち上がります。調べたい商品のパッケージを向けると光の「蛍(firefly)」が現れ商品を識別してくれます。ただし、識別できないこともまだまだ多く、その場合は「We're unsure what this is(何か分かりません)」と表示されます。


なお、バーコード付きのものはほとんど識別可能。画面下に表示されたバーコードをタップして……


「Search in browser」をタップすると……


この商品が何か検索してくれます。


また、Home carousel画面には商品サムネイルが表示されていました。サムネイルをタップ。


ストレージ容量は間違っていますが商品の種類はあっています。「Shop Amazon」をタップすると……


Amazon.comの商品ページにジャンプして即、ポチれるというわけです。


◆総括
Fire Phoneを1週間使ってみて、性能面ではほとんど不満は出ませんでした。Nexus 5に近いサクサク具合で、液晶の画素数こそ1280×720と少ないものの発色や明るさやタッチ感度は間違いなくFire PhoneがNexus 5より上と言えそう。

そして、Fire OSのデキの良さは素直に感心するレベル。Amazon製タブレット端末のKindle FireシリーズでもおなじみのHome carouselは、タブレット端末では大きすぎるアイコン(サムネイル)に操作性の悪さを感じたのに対してスマートフォンではほどよい大きさと2ペイン体制による操作性の高さを実感。ベースとなったAndroid OSよりも優れたUIで使いやすいと感じました。


とはいえ、Fire Phone最大の欠点はGoogle Play非対応であるというところ。数多くのAndroid用アプリはAPKとしてダウンロード・インストールすれば使えるものも多くOSレベルでは使用可能であることからGoogle Playを使えないという点は非常に「痛い」と言わざるを得ません。しかし、主要SNSやRSSリーダーやYouTubeアプリはAmazon Appstoreにも用意されていることから、中には実用上問題にならないという人も多いと思われます。

Fire Phoneオリジナルの機能であるダイナミックパースペクティブやFireflyは正直なところ「ウリ」になるレベルではなく、あくまでおまけと考えるべき。しかし、おまけなしで一般的なスマートフォンとして見たときでも、質感の高さや文句なしの性能から、十分「アリ」というのが率直な感想です。


当初、モバイル回線契約なしの条件で649ドル(約7万7000円)という値付けをしたため、「同じ値段ならiPhoneを買う」という消費者が多く、「(Amazonのスマートフォンとしては)高すぎる」という理由で、Amazonのカスタマーレビューで☆1つを連発したFire Phoneですが、その後、通常価格を449ドル(約5万4000円)に値下げしたこともあり、カスタマーレビューの評価は次第に回復。特に、2014年末のホリデーシーズンに199ドル(約2万4000円)という大幅値下げに踏み切ると、ほとんどのカスタマーレビューが☆5つで埋まるほど人気になったことを考えてみても、Fire Phone不調の原因は「価格」にあると言えそうです。

アメリカではモバイル通信キャリアとしてはAT&Tが独占で販売しているFire Phoneですが、対応するLTEバンドは1、 2、 3、 4、 5、 7、 8、 17、 20と幅広く、AT&Tが対応していないバンドが含まれていることから、他のキャリアや他国での販売があっても不思議ではなく、AmazonがFire Phoneを今後、アメリカ・イギリス・ドイツに続いて日本で販売する可能性はゼロではなさそう。Fire Phone自体は良好なハードウェア・ソフトウェアを持つ優れたスマートフォンなので、値付け次第では現在甘んじて受けている「失敗作」という評価を一変する可能性は十分ありそうです。

なお、SIMロックフリーのFire Phone(32GBモデル)は、現在、Amazon.comで449ドル(約5万4000円)で販売中。しかし、年末から記事作成時現在までの1カ月足らずの間に、199ドル(約2万4000円)、229ドル(約2万6000円)、189ドル(約2万2000円)と大幅な値引きセールを断行した実績があるので、タイミング次第では非常に安くなるチャンスが今後もあるかもしれません。

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http://www.amazon.com/dp/B00OC0USA6

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