世界で初めて臓器を自己再生させることに成功
分裂・分化することでさまざまな細胞に成長する可能性を秘めた幹細胞から人工的に臓器を作り出す研究が進む中で、正常に機能するよう臓器を自己再生させることに世界で初めてイギリスの研究チームが成功しました。
An organized and functional thymus generated from FOXN1-reprogrammed fibroblasts : Nature Cell Biology : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/ncb/journal/vaop/ncurrent/full/ncb3023.html
BBC News - Whole organ 'grown' in world first
http://www.bbc.com/news/health-28887087
世界初の臓器再生に成功したのはイギリス・エジンバラ大学の研究チームで、この成果はNature Cell Biologyで発表されています。
エジンバラ大学Medical Research Council centreのクレア・ブラックバーン博士の研究チームは、マウス胚性線維芽細胞(MEF細胞)を遺伝的に改変してFOXN1タンパク質を発現させ免疫作用を持つ胸腺というリンパ器官の幹細胞様組織に導入することで、衰えた胸腺を再生させることに成功しました。この再生した胸腺はT細胞を作り出し正常な臓器として完全に機能したとのこと。
これまでもオーストリアの研究チームがES細胞や皮膚細胞を使って人間の脳細胞を増殖させ成長させることに成功するなど、幹細胞から人工的に臓器の細胞を作ることには成功していましたが、臓器を正常に機能させることはできていませんでした。そのため、今回、エジンバラ大学の研究チームが作り出した胸腺は世界で初めて「正常に機能する」人工の臓器ということになります。
世界で初めて臓器を自己再生させることに成功したブラックバーン博士は「とてつもなくエキサイティングなことです」と感想を述べました。
胸腺は臓器の中では比較的単純な構造を持つものだと言えますが、この再生技術を他の臓器や人体で用いるためには、細胞の増殖プロセスを制御して癌細胞化することを防ぐ仕組みの開発などが必要であることから時間がかかるとのこと。しかし、機能の衰えた胸腺を人工的に再生できれば、老齢に伴い胸腺が縮小し免疫機能が低下する症状を克服できたり、生まれながら胸腺が機能しない子どもが骨髄移植をせずに済んだりするため非常に大きな期待が寄せられています。
ブラックバーン博士は今回の成果について、「非常にエキサイティングな進歩であり、再生医療の広い分野に応用できる可能性がある」と述べており、再生医学のさらなる進歩が期待できそうです。
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