ガン細胞を元の良性細胞に戻すことが可能である研究結果が明らかに

By crafty_dame

ガンは一般的に完治することが難しい疾患として知られていて、手術治療や抗がん剤治療など患者に大きな負担がかかる治療法が適用されるのですが、アメリカにあるMayo Clinic病院の研究グループがガン細胞を元の良性細胞に戻す実験に成功しており、新たなガン治療の方法として大きな注目を集めています。

Distinct E-cadherin-based complexes regulate cell behaviour through miRNA processing or Src and p120 catenin activity : Nature Cell Biology : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/ncb/journal/vaop/ncurrent/full/ncb3227.html

Mayo Clinic researchers find new code that makes reprogrammi [...] | Mayo Clinic News Network
http://newsnetwork.mayoclinic.org/discussion/mayo-clinic-researchers-find-new-code-that-makes-reprogramming-of-cancer-cells-possible/

Cancer cells programmed back to normal by US scientists - Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/news/science/science-news/11821334/Cancer-cells-programmed-back-to-normal-by-US-scientists.html

通常の細胞は接着タンパク質という物質のおかげで細胞同士がひっつくことができており、この接着タンパク質は上皮組織を形成するのに必要不可欠なガン抑制因子でもあると長い間考えられてきました。しかしながら、Mayo Clinicの研究者たちはこの理論に異論を唱え、接着タンパク質がガン細胞にも存在し、ガン細胞の成長に必要な要素であるという理論を主張していました。接着タンパク質には「ガン抑制因子」と「ガン細胞の成長に必要」という相反する2つの側面をもっている可能性があるというわけです。

By University of Michigan School of Natural Resources & Environment

そこで研究グループが実験をしたところ、ガン細胞内に接着タンパク質が存在することがわかり、また、接着タンパク質に異常が発生したときにガン細胞が常軌を逸したスピードで成長することが判明しました。研究グループが主張した理論が正しかったと証明されたというわけです。

この実験ではもう1つ重要なことが判明しています。それは「接着タンパク質」と「microRNA」という分子に相互作用があることです。通常の細胞同士が接触する場合、microRNAは細胞の成長を促す遺伝子の動きをストップさせる作用があるのですが、ガン細胞内の接着タンパク質に異常が発生すると、microRNAにも異常がでていることがわかりました。

さらに研究者グループは実験を続け、通常の細胞内にあるmicroRNAを破壊すると、細胞の結合を切断するPLEKHA7というタンパク質の生成が防がれ、細胞が増殖を繰り返しガン細胞に切り替わることが判明しました。また、そのプロセスを反転させる、つまりガン細胞中のmicroRNAを通常レベルにまで修復すると、ガン細胞の成長が止まるどころか、成長が退化し元の細胞に戻ったことが確認されました。簡単に言えば、細胞の過度な増殖と危機的な成長を防ぐ機能(microRNA)を修復することで、ガン細胞の成長をストップさせ元の細胞に戻すことができた、というわけです。

実験を率いたAntonis Kourtidis博士は「一連の実験により接着タンパク質とmicroRNAというかけ離れた存在同士に相互作用があることがわかったことは、今後のガン治療に光をさすかもしれません」と話しています。ただし、ガン細胞が元の良性な細胞に戻ったのは、急性の乳ガン、肺ガン、膀胱ガンでの場合のみです。研究グループは「厳しい化学療法や手術を必要とせずにガン治療ができる未来がくるかもしれない」と希望を抱いています。


なお、日本では鳥取大学医学部の研究グループが、2014年にmicroRNAを悪性度の高い未分化ガンに注入すると、正常な細胞に戻すことが可能なことを世界で初めて発見しました。ただし、日本の鳥取大学医学部が行った実験はマウスを使ったものなので、今後の実験により人間への効力が証明されることが期待されるところです。

・関連記事
「カメラで撮影した目に白い光が写っている」ことでガンを発見して早期治療できた事例 - GIGAZINE

特定の食材によるガン発生リスク軽減説の根拠が弱まっていることが判明 - GIGAZINE

音波でガン細胞を血中から安全に分離する新技術が登場 - GIGAZINE

ガンを早期発見できる「ナノダイヤモンド」でガン治療が飛躍的に進む可能性 - GIGAZINE

アスピリンのガン予防薬としての効果と副作用 - GIGAZINE

アスピリンの長期服用がガンによる死亡率を低下させるという研究結果が明らかに - GIGAZINE

366

in サイエンス, Posted by darkhorse_log